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長引く咳の原因・対処法を解説「様々な理由が考えられるため放置は危険」

 更新日:2023/03/27

「風邪を引いてから咳だけが治らない……」、こんな経験をしたことがありませんか。咳が長引いていると、何らかの病気が原因であることもあるそうです。そこで、どのくらいの間、咳が続いていたら病院へ行けばいいのか、咳の対処法などが気になるところです。今回は、長引く咳の原因や対処法について「日吉の森内科クリニック」の森田先生に聞いてみました。

森田 あかね医師

監修医師
森田 あかね(日吉の森内科クリニック 院長)

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聖マリアンナ医科大学卒業。聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院呼吸器内科勤務。その後、国立病院機構災害医療センター、国立国際医療研究センター病院呼吸器科で後期研修、東京明日佳病院内科、はなまるクリニックに勤務し、内科・呼吸器疾患治療を中心におこなう。2020年、神奈川県横浜市に「日吉の森内科クリニック」を開院。日本呼吸器学会専門医、日本呼吸器内視鏡学会専門医、日本アレルギー学会専門医、日本内科学会認定医。難病指定医。

長引く咳の原因

長引く咳の原因

編集部編集部

咳が出るメカニズムについて教えてください。

森田 あかね医師森田先生

簡単に言えば、咳はウイルスなどの外敵から体を守るための防御反応です。鼻や喉からウイルスやアレルギー物質、細菌などの外敵が侵入すると、感染しないように咳という反射を通して体外に排出しようとします。

編集部編集部

そこで本題です。咳が長く続く場合、どんなことが考えられるのでしょうか?

森田 あかね医師森田先生

一般的に、咳が3週間以上続く場合には風邪以外の病気の可能性が考えられます。日本呼吸器学会の「咳嗽(がいそう)に関するガイドライン(※)」では、3週間以内の咳を「急性咳嗽」、3週間以上8週間以内の咳を「遷延性咳嗽」、8週間以上続く咳を「慢性咳嗽」としています。

※日本呼吸器学会「咳嗽に関するガイドライン」
https://minds.jcqhc.or.jp/docs/minds/Cough/CPGs2012_Cough.pdf

編集部編集部

咳が続く期間が3週間以内の急性咳嗽では、どのようなケースが考えられるのですか?

森田 あかね医師森田先生

急性咳嗽では、風邪やインフルエンザ、急性気管支炎などが考えられます。急性気管支炎は、気管から枝分かれする気管支に炎症が生じる疾患です。風邪やインフルエンザは罹患(りかん)後、気管支に炎症が残って咳が出続けることがあります。また、咳のほかに痰を伴うこともあるでしょう。

編集部編集部

3週間以上の遷延性咳嗽や慢性咳嗽についてはいかがでしょうか?

森田 あかね医師森田先生

遷延性咳嗽や慢性咳嗽では、咳喘息やアトピー喘息、副鼻腔炎、慢性気管支炎、胃食道逆流症、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺炎、結核、肺がん、薬剤による副作用などが考えられます。副鼻腔炎は「蓄膿症」とも呼ばれ、鼻の周囲にある副鼻腔という空洞に炎症が生じる疾患ですが、鼻水が喉の奥の方に流れる「後鼻漏」を生じることがあり、これが咳の原因になっていることがあります。また、胃食道逆流炎によって胃酸が逆流したり、精神的なストレスによって咳が止まらなくなったりと、様々な原因が考えられます。さらに、長期間持続する咳で受診した場合、単なる喘息と思っていても、肺がんやCOPDを併発しているケースもあります。そのため、併発している疾患の有無を調べるために、肺のX線検査などをおこなって鑑別する必要があります。

それぞれの原因について解説

それぞれの原因について解説

編集部編集部

風邪を引いた後に咳だけが長引いている場合、どんなことが考えられますか?

森田 あかね医師森田先生

感染後咳嗽や咳喘息、副鼻腔炎の後鼻漏などが原因である可能性があります。感染後咳嗽とは、風邪やインフルエンザなどに感染した後、熱やほかの症状が消失しても咳だけが長引くものです。ただし、咳は自然に治まっていきます。咳喘息はアレルギーによって生じる疾患です。気管支喘息のような呼吸困難を伴わず、咳を主症状とする喘息の一種です。

編集部編集部

何の予兆もなく、咳だけが出始めたケースはどうでしょうか?

森田 あかね医師森田先生

咳だけが急に出始めた場合には、気管支喘息を疑います。気管支が炎症を起こして空気の通り道が狭くなり「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という呼吸が生じるほか、呼吸困難を伴うこともあります。

編集部編集部

喫煙していて咳が続いている場合にはどうでしょうか?

森田 あかね医師森田先生

COPDが疑われます。COPDは、主にタバコが原因で気管支が慢性的に炎症を起こす疾患です。タバコによって肺が破壊され、肺組織が失われてしまいます。症状としては、咳や痰、動いたときの息苦しさなどが顕著です。実際、階段の上り下りをしたときに息切れを感じ、年齢によるものだと思っていたらCOPDだったというケースは少なくありません。

長引く咳の対処法

長引く咳の対処法

編集部編集部

咳が長引いている場合の対処法があれば教えてください。

森田 あかね医師森田先生

喉の乾燥や一時的な咳の場合には、のど飴やマスクの着用、十分な水分摂取などが有効です。マスクは着用しているだけで喉が加湿されるため、手軽におこなえる対策だと思います。また、乾燥対策に関連して「加湿器を使用した方がいいのか?」と聞かれることがありますが、加湿器内はカビが繁殖しやすく、肺炎(加湿器肺炎)などの原因になりかねないので、一概におすすめできません。ただし、しっかりと加湿器の使用前後のお手入れを怠らず、清潔を保って使用できれば、ある程度の効果は期待できるでしょう。

編集部編集部

対策をしても改善しない場合、受診の目安はありますか?

森田 あかね医師森田先生

咳が続いてつらいと感じたり、夜に眠れなかったりするといった日常生活に支障をきたすような場合、期間にかかわらず受診した方がいいでしょう。また、昨今流行している新型コロナウイルスの感染が心配な人は、発熱外来を受診した方がいいのか、一般診療時間内でいいのかを事前に問合わせてください。ほかにも、血痰や呼吸困難を伴うような場合には、早めに受診してください。

編集部編集部

どのような検査がおこなわれるのでしょうか?

森田 あかね医師森田先生

症状に応じて呼吸機能検査や胸部X線検査、CT検査、呼吸器抵抗検査、呼気NO(一酸化窒素)濃度測定検査、喀痰(かくたん)培養検査などをおこないます。

編集部編集部

検査の結果、何らかの疾患が見つかったら治療に進むのでしょうか?

森田 あかね医師森田先生

はい。ただし、治療内容は病気によっても異なります。例えば、感染が原因のものや副鼻腔炎の場合には抗菌薬を処方することがあります。また、喘息やCOPDの場合には吸入薬を処方します。いずれの場合も、喫煙している場合には禁煙が必要です。肺がんであった場合には、重症度によって治療法が異なります。場合によっては大きな病院を受診していただく必要があるため、紹介状を作成します。ほかにも精神的なストレスが原因の場合には、ストレスの原因を避けていただくほか、向精神薬や漢方薬を処方することもあります。新型コロナウイルス感染症後の咳が残るような感染後咳嗽には、咳止め薬や吸入薬を処方したり、漢方薬を併用したりすることがあります。このように、原因によって治療方法は異なるので、まずは長引く咳の原因を明らかにすることが大切です。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

森田 あかね医師森田先生

咳が長引いている場合には、その期間にかかわらず医療機関を受診してください。咳が3週間以上続く場合以外にも、夜眠れないほどつらいといった日常生活に支障が出ているという場合には、すぐに医療機関を受診しましょう。何かしらの疾患が原因である可能性が考えられます。

編集部まとめ

咳が長引いている場合には、風邪のほか喘息やCOPD、肺がんなどの恐れもあるとのことでした。いずれの場合も早期発見が早期治療につながります。様々な疾患が隠れている場合があるので、咳が続いていたら放置せずに医療機関で検査を受けるようにしましょう。

医院情報

日吉の森内科クリニック

日吉の森内科クリニック
所在地 〒223-0051 神奈川県横浜市港北区箕輪町1丁目24−9 2階
アクセス 東急東横線「日吉駅」 徒歩6分
診療科目 内科、呼吸器内科、アレルギー科

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