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在宅介護における夏バテ回避のためにできることは? 介護福祉士が解説

 更新日:2023/03/27

在宅介護で、一番気をつけなければならない季節は「夏」です。日本では梅雨からの流れで夏がやってくるため、ほかの国にはあまりない環境の変化が起こります。そのため、脱水症状や気分の落ち込みなど、高齢者には辛い時期となります。また、熱中症に気をつけていても夏バテを起こしてしまうこともあるので、注意が必要です。今回は自宅介護での夏バテ予防のポイントについて、「介護福祉士」の渡口さんに話を伺いました。

渡口 将生さん

監修
渡口 将生(介護福祉士)

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介護歴17年。介護老人保健施設7年、訪問介護2年、サービス付き高齢者向け住宅と小規模多機能型居宅介護の管理者として2年間勤務。その後、介護保険施設の相談員兼ケアマネジャーとして従事する。現在はWEBライターとしても活動。介護ブログを通じ、2019年3月にNHKの介護士の番組にメインで出演する。

夏バテの原因と症状

夏バテの原因と症状

編集部編集部

夏バテになるとどんな症状が起こりますか?

渡口 将生さん渡口さん

症状は軽いものでは、めまい、たちくらみ、足がつる、肩こりなどがあります。また、倦怠感、食欲不振、イライラするといった「なんとなく調子が悪い」といったことで片付けられてしまうような症状も夏バテの可能性があります。

編集部編集部

夏バテが重症化することはあるのでしょうか?

渡口 将生さん渡口さん

夏バテの症状が進むと、頭痛、嘔吐、下痢、意識消失、全身痙攣、高体温といった治療が必要な状態になり、医師の判断で入院になる可能性もあります。そうならないためにも、予防対策と早期発見が大切です。

編集部編集部

高齢者はどうして夏バテしやすい傾向にあるのでしょうか?

渡口 将生さん渡口さん

原因としては、基礎体力や免疫力の低下があげられます。さらに筋肉量の減少も大きな要因の一つです。筋肉は身体の中で最も水分を多く含む部位なので、筋肉量が低下するということは水分量が下がることに直結します。また、高齢者は暑さに対する鈍麻、発汗能力の低下により、体温調節が難しい状態にあるといえます。さらにトイレが近くなる、心臓に負担がかかるといった理由で水分を摂るのを嫌がる方が多いのも原因としてあげられます。

夏バテの予防方法

夏バテの予防方法

編集部編集部

夏バテの予防方法はありますか?

渡口 将生さん渡口さん

まず、夏バテの原因を知っておく必要があります。「体温調節が上手くいかない状態で、自律神経の働きが低下する」「水分やミネラルの減少で脱水を起こし、電解質のバランスを崩す」「食欲不振による栄養素不足」などが主な原因としてあげられます。体温調節機能は加齢とともに低下してしまうので、気温差の少ない環境で過ごすことが大切です。水分補給は一度にたくさん飲むのではなく、少量をこまめに摂取すると良いでしょう。また、食事も栄養バランスを考慮し、低栄養状態を起こさないようにしましょう。

編集部編集部

予防法についてもう少し詳しく教えてください。

渡口 将生さん渡口さん

暑いと身体を冷やすことを優先してしまいがちですが、室内と外気温の差があると、夏バテを起こすことがあります。冷房の設定温度をあげ、外気温との差を5℃以内にして、自律神経を整えることが重要です。また、夏でも冷たい飲み物はなるべく避けて、温かいもので身体を温めることも効果的です。さらに、適度な運動で代謝を上げ、発汗作用を促すことで、疲れを軽減させ食欲を増幅することで夏バテ予防効果が期待できます。

編集部編集部

食事では、どういった点に気をつければいいのでしょうか?

渡口 将生さん渡口さん

夏に不足しがちな栄養素である、ビタミン・ミネラル・クエン酸・タンパク質を多く含む食材を積極的に摂るのが大切です。おすすめの食べ物はビタミンAやB1、B2、B6が豊富な「うなぎ」です。ほかにも、クエン酸が多く含まれる、レモンや梅干し、タンパク質が豊富な大豆製品も積極的に摂りたい食材です。あとは、体内の毒素を出す作用のある、きゅうりやスイカなどのウリ科なども挙げられます。ただ、水分補給でミネラルを補っていくことも必要ですが、冷たいものばかりだと消化を妨げてしまい逆効果になってしまうので注意が必要です。コーヒーや緑茶のような利尿作用のあるものは、水分を必要以上に排出させてしまうので控えましょう。

高齢者の夏バテで注意すべきポイント

高齢者の夏バテで注意すべきポイント

編集部編集部

高齢者特有の症状はありますか?

渡口 将生さん渡口さん

夏バテは自律神経が乱れ、倦怠感を感じるため、家から出たくなくなったり、行動することが億劫になったりする傾向があります。さらには、食生活の乱れや睡眠の質の低下が、虚無感に繋がる危険があります。高齢者は特に「廃用性症候群」や「うつ症状」を引き起こすリスクが高いため、早めに対処していくことが望ましいでしょう。

編集部編集部

高齢者の体調管理に大切なポイントはありますか?

渡口 将生さん渡口さん

夏バテは徐々に症状が進行することから、本人は自覚しにくい傾向にあります。もともと倦怠感のある高齢者は特に自覚しにくいようです。そのため、定期的に健康チェックを受けたり、介護サービスを利用したりといった、外部との接触が大切になります。

編集部編集部

ほかに注意することはありますか?

渡口 将生さん渡口さん

秋バテ」というのをご存知でしょうか? 夏の暑い時期に乱れた食生活や生活習慣を引きずることで、朝昼晩の気温の差が大きくなる秋に、さらに自律神経が乱れてしまった状態です。秋になると長雨などの低気圧も加わるため、だらだらと長引いてしまう可能性もあるため注意が必要です。

編集部まとめ

高齢者の特徴として身体的な異常に気づきにくいということがあり、夏バテを起こしやすいということが分かりました。しかし、しっかりと予防することで、暑い夏を乗りきることができます。介護サービスなどを利用することで定期的な健康チェックを受け、しっかりと予防していきたいですね。

この記事の監修介護福祉士