排泄の介護負担を減らす鍵は「おむつ選び」と「付け方」


排泄に介護が必要になる状態とは

編集部
自分でできた排泄に手助け・介護が必要になることを受け入れるのは、大変ではないですか?
大関さん
とても複雑な心境だと思います。「便失禁や尿失禁の状態は死んだ方がマシだ」と思う人もいるほどです。排泄物を他者に処理してもらうことによる精神的負担は、長く続くと問題にもつながっていきます。
編集部
介護する側の負担も大きそうですが。
大関さん
排泄は、回数も入浴や食事よりも多く、24時間いつでも起こる可能性があります。また、介護される側の尊厳の保持に大きく関わるケアになるため、負担は大きいです。さらに、「排泄行為が1人で出来なくなるのはみっともない」という社会的通年や、排泄物自体が汚い・臭いというものであることが、より介護する側の負担感を増強しています。ですが、「歳のせい」とされて諦められがちだった排泄の不都合は、原因をしっかりみていけば改善できる可能性もあることが分かってきています。
編集部
具体的に、排泄に介護が必要になる状況について教えてもらえますか?
大関さん
細かな排泄の障害については割愛しますが、介護負担が大きい主な症状として「尿失禁」と「便失禁」があります。尿失禁の定義は「不随意(ふずいい)な尿の漏れ」、便失禁は「便の漏れが問題になること」となりますが、「漏れ」は症状です。その症状をどのようにとらえて、生活の中でどんな問題があるか考えていくことが、ケアのポイントになります。
排泄の介護で負担感が高いのは「外漏れ」

編集部
「漏れ」つまり「失禁」の介護は、一番負担が大きいのではないしょうか?
大関さん
介護職や看護師へのアンケートの中では「おむつからの外漏れ」が、一番の課題だと答える人が多かったようです。寝たきり状態であったり、独居であったりと何らかの原因で、トイレに行けない、間に合わない、使えないといった状態の対応の一つとして挙げられるのが、「介護用おむつ」の使用です。
編集部
外に漏れてしまうと、介護用おむつの交換でもさらに時間を取られますよね?
大関さん
そうですね。この「おむつからの外漏れ」が最も現場やご家族からは負担感が高いものになっています。もちろんトイレで排泄することを目指すのが大切ですが、まずここを改善していくことに注力すると、もっと排泄ケアを気軽に考えていける心身の余裕が作れると思います。
編集部
「おむつからの外漏れ」を改善していくために必要なポイントは何でしょうか?
大関さん
大きく分けて、三つのポイントがあります。「アウターのサイジングが体に対してちょうどいい大きさであること」、「尿量に合ったインナー(対象の尿量に応じたもの)を1枚で使用すること」、「密着したつけ方・履き方で、動きによるズレや擦れを起こさせない」の三つをまずは確認してみてください。
介護用おむつは適切なサイジングが重要

編集部
アウターとは、何でしょうか?
大関さん
介護用おむつは、尿を直接受け止める尿とりパッドと呼ばれる「インナー」と、単体で使えてインナーを併用して使うこともできる「アウター」の組み合わせで考えることができます。テープ止めや履くタイプのおむつと言われる製品、パッド併用型アウターなどがそれに当たります。普段、私たちが履いている下着もアウターの一種です。
編集部
尿とりパッドを使っていたら、必ず紙製品のアウターを使わなければいけないと思っていました。
大関さん
介護現場でもそう認識している人がいまだに多い印象です。大切なことは「インナーとアウターとの間に隙間がないか」なので、密着できる製品であれば綿のアウターでも問題ありません。要するに、その人のサイズに合っているかどうかですね。
編集部
漏れを防ぐために吸収帯の大きいサイズを選ぶのは間違いですか?
大関さん
その通りです。アウターのサイズが大きくなると、股下の吸収帯が長くなります。すると、鼠径部(そけいぶ)の部分が余り、漏れの原因となる隙間ができます。紙製品が重なることで、おむつかぶれや褥瘡(じょくそう)のリスクを高める「剪断応力」(せんだんおうりょく)が高まるのです。おむつは大きいサイズを使用するケースが多く、それが外漏れを起こしている原因の多数を占めています。必ずしも「大は小を兼ねる」というわけではありません。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
大関さん
テープ止めタイプはヒップサイズ、履くタイプのおむつはウエストサイズの表記がパッケージに表記されています。対象者のウエストやヒップサイズを洋服のサイズではなく、きちんと測定してサイジングをしてみてください。また、漏れるからといって「インナーを何枚も重ねないこと」と「相手の尿道口に密着するようにインナーを当てること」を意識してください。インナーを重ねると漏れの隙間が多くなり、優しく当てすぎると吸収できずに外に流れてしまいます。三つのポイントを確認し、外漏れが減ると介護の負担感は減ると思います。



