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原因不明の不妊、どのように妊娠できるようにするの?

 更新日:2023/03/27

西洋医学の一般的な考え方は、原因へのアプローチです。では、さしたる異常もないのに不妊を繰り返している場合、どう解決していくのでしょう。原因検索をしても何も異常がない方も結構な割合でいる中、どのような対策をしていくのか。最前線の実態を、杉山産婦人科新宿の院長、中川先生に伺いました。

中川浩次

監修医師
中川 浩次(杉山産婦人科新宿 院長)

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自治医科大学医学部卒業。徳島大学医学部産婦人科、国立成育医療研究センター不妊診療科を経た2008年、杉山産婦人科生殖医療科へ。現職は2018年から。主に体外受精治療を専門としている。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医。

じつは、原因不明にも原因がある

子育て

編集部編集部

妊娠したくても、原因不明でできないケースってあるのでしょうか?

中川浩次中川先生

ありえます。一般的に、約1割強が原因不明とされています。ただし、不妊治療でいうところの「原因不明」は、「一般検査で異常が見つけられなかった」ことを指します。ですから、さらに専門的な検査で不妊の原因を明らかにすることが可能です。もちろん費用がかかりますので、検査を受けるかどうかはみなさん次第ですね。

編集部編集部

まず、一般検査で判明するのは、どのような原因でしょうか?

中川浩次中川先生

自然妊娠を前提にすると、①「精子と卵子の出会うタイミングがずれている」、②「卵管の癒着などで卵子を捕まえることができない」、③「精子の量が十分にない」の3点です。不妊で悩まれている方の9割弱が、これらのいずれかに該当するということですね。なお、②の検査は、造影剤を用いたX線撮影で調べていきます。

編集部編集部

一方、「原因不明」の場合は、どのような原因なのでしょう?

中川浩次中川先生

①「精子と卵子が出会えない」、②「いい受精卵に育っていかない」の2点だと思われます。①で自然妊娠が望めないとなると、いよいよ治療による受精を検討します。②の大きなファクターは、加齢に加え、肥満と喫煙習慣ですね。なお、肥満と喫煙習慣は、男女を問わず、不妊の原因になりえます。

編集部編集部

残る「加齢」は、女性に顕著な要因なのですか?

中川浩次中川先生

卵子の元となる細胞は、女性が生まれたときから、すでにもっているものです。やがて生理が始まると、大量の原細胞のストックから、状態のよい順に使われていきます。この仕組みを「ミカン箱」に例えることが多いのですが、箱の隅のほうのミカンは傷付きやすいですよね。若いときの卵子には、傷が付きにくい真ん中に位置するミカンが使われます。

原因不明の場合の治療方法

赤ちゃん

編集部編集部

精子と卵子が出会えない場合、人工授精や体外受精をおこなうのですよね?

中川浩次中川先生

そうなりますが、自然妊娠を前提とするなら、タイミング法が有効な選択肢になります。また、卵管癒着などの症例でも、器質的な手術をあえてせず、そのまま体外受精へ進む場合があります。時間だけで考えたら、むしろ、その方が早い印象です。身体への侵襲度も低いですしね。

編集部編集部

今回は原因不明の治療法に絞りましょう。喫煙が関係しているとのことでした。

中川浩次中川先生

タバコは大きな影響をもたらします。「本数を減らしました」ではなく、完全に禁煙していただく必要がありますね。なお、過去の喫煙歴は、男性なら問いません。精子は約120日間で常に新しくつくられるため、禁煙期間を120日以上設ければ、ニコチンに影響されない精子が生まれます。他方女性の場合は、みかん箱の中にある卵子の原細胞は、過去の喫煙歴の影響がそのまま残ってしまいます。

編集部編集部

続けて肥満です。体形が妊娠に関係しているのですか?

中川浩次中川先生

「BMIと妊娠の関連性」については、エビデンスが示されています。しかし当院の場合、BMIによる指標よりも、体脂肪率で診ていきます。BMIで異常値が出る方って、もはや妊娠を問うレベルではないんですよね。ですから、体脂肪率をチェックして入ったほうが現実的でしょう。個人的な意見ですが、体脂肪率が30%を超えたら、いずれ、なにかしらの病気になるのではないでしょうか。

編集部編集部

最後は、加齢要因です。避けられない運命ですよね?

中川浩次中川先生

そうなのですが、若いうちに、①「未受精の卵子を凍結して保存しておく方法」と、②「体外受精した受精卵を凍結して保存しておく方法」があります。この差は、その時点で子どもを授かりたいパートナーがいるかどうかによりますね。他方で、精子の経年劣化は「起こりにくい」とされています。前述の卵子と異なり、常に新しい精子がつくられ続けられているからです。加えて、医療介入できるケースなら、「1個だけ元気な精子」がいれば事足ります。

医療による出会いの成功率

子供の手

編集部編集部

不妊治療により、どのくらいの相談者が妊娠へ至っているのでしょう?

中川浩次中川先生

まず、いままで医療機関に全くかかっていない方の多くは、タイミング法により、数カ月以内の妊娠が認められるようです。問題はそこから先の原因不明で、「いろいろやってみたものの、結果に結びついていない」という方も少なくありません。

編集部編集部

タイミング法以外で、医療介入をした場合の治療成績は?

中川浩次中川先生

体外受精の妊娠率は新鮮胚移植をおこなった場合、約3割です。です。この割合は、よい状態の受精卵から選んで移植するためであり、繰り返すほど「落ちて」いきます。他方、先ほどの凍結した卵子を用いた場合なら、①の未受精の卵子を使用した場合、解凍後の生存率が50%、そこから顕微授精して受精卵を作成し、胚移植に用いるため妊娠率は10〜20%と、かなり低くなります。②の受精卵は解凍後の生存率はほぼ99%ですので、これらの受精卵を胚移植に用いた場合、妊娠率は30〜50%となります。

編集部編集部

気になるのは、原因不明と言われた先の検査や治療の費用です。

中川浩次中川先生

精密検査の中身にもよりますが、20万円前後といったところでしょうか。身体的な異常の手術は、中身や程度によってまちまちなので、一概に言えません。また、人工授精は3万円、体外受精なら40万円前後です。なお、タイミング法や生活指導では費用をいただいていません。ただし、当院は「いろいろやってみたものの、結果に結びついていない」方へ向けて医療提供をしているため、他院と費用体系が異なっているかもしれません。

編集部編集部

今、国会で、不妊治療の保険適用が議論されていますね?

中川浩次中川先生

私なりに、「混合診療の線引き」が要だと考えています。混合診療とは、保険診療と自費診療を並行しておこなった場合、保険診療も「自費扱い」となってしまう“決まり”です。この大前提を見直し、「検査だけでも保険にする」とか、「保険診療を別くくりとして認める」などの各論に期待しています。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

中川浩次中川先生

現代社会は刺激が多く、男女の接触を“それほど”求めなくなってきたのかもしれません。すでに結婚している方にしてもそうです。もしかしたら、その辺の事情が妊娠率や出生率とも関係しているのではないでしょうか。ぜひ、妊娠について、いろいろな角度から話しあってみてください。

編集部まとめ

一般検査による原因不明には、その先があるのでした。もし自然妊娠を希望するなら、生活習慣による悪影響の排除が欠かせません。また、自然妊娠では精子と卵子が出会えない場合、体外受精や人工授精を試みます。その際、治療時の卵子を用いた体外受精より、若いときに凍結した卵子による人工授精のほうが、より妊娠に期待できるようです。ただし、凍結の費用をかけなくても、できてしまうときにはできてしまうのが、妊娠の不思議で難しいポイントです。

男性不妊についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。

医院情報

杉山産婦人科

杉山産婦人科新宿
所在地 〒160-0023 東京都新宿区西新宿1-19-6 山手新宿ビル
アクセス 各線 新宿駅 地上出口7よりすぐ
診療科目 生殖医療科

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