酒は「百薬の長」か「万病の元」か 肝臓専門医に聞く“お酒との上手な付き合い方”



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適量飲酒の目安は、男性で1週間に約1升、女性はその3分の2

編集部
「休肝日」という言葉は市田先生のお父さまが作ったとうかがいました。1週間に1度の休肝日を作れば、普段いくら飲んでも大丈夫ということなのでしょうか?
市田先生
いいえ。毎日5合以上飲んでいる人が1週間に1日だけ休肝日を作っても、大丈夫とはいえません。「とにかく1週間のうち1日(24時間)休肝日を作ればいい」というのは誤解です。現在、医学的にみて、健康的に長生きできるアルコールの安全圏は、すべて1週間単位の積算飲酒量で考えられています。
編集部
そもそも、適量の飲酒は健康に寄与するという「百薬の長」説は、本当なのでしょうか?
市田先生

編集部
「適量」とはどのくらいなのでしょう?
市田先生
酒類別のアルコール約20gを含む量 日本酒 1合(180ml) ワイン 1杯(約120ml) ビール 中瓶1本(500ml) 焼酎 0.6合(約110ml) ウイスキー ダブル1杯(60ml) 参照:厚生労働省 健康日本21(アルコール)「節度ある適度な飲酒」より
https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b5.html
お酒が強いか弱いかは、アルコール分解酵素の遺伝子検査で明確に

編集部
「1週間の積算飲酒適量が約1升は長生き」というのは、誰にでも当てはまるのでしょうか?
東海林先生
いいえ。Jカーブや1週間の積算飲酒量約1升が当てはまるのは、お酒が強い人に限ります。強いか弱いかは、アルコールを肝臓で代謝するときに必要となる「アルコール分解酵素(ADH1B)」と「アルデヒド分解酵素(ALDH2)」の働きが強いか弱いかで決まります。
編集部
詳しく教えてください。
東海林先生

編集部
自分がお酒に強いか弱いかがわかる方法はありますか?
東海林先生

編集部
遺伝子的にお酒が弱い人は、飲まないほうがいいのでしょうか?
東海林先生
お酒が弱い人が飲み続けると、食道がんをはじめ、心不全や慢性膵炎などさまざまな病気になる確率が高くなってしまうので、できれば飲まないほうがいいですね。さらにタバコを吸う人の場合は、食道がんのリスクが189倍になるというデータもあります。
二日酔い予防には、アラニンとグルタミンを含むサプリメントを

編集部
二日酔いにならない方法はありますか?
市田先生
たくさん飲まないことですね(笑)。肝臓が処理できるアルコール量は、普通の人で1時間あたり7g、3時間だと21g(日本酒約1合)くらいですから、分解能力を超えて飲み過ぎると、体内にアセトアルデヒドが増えていきます。アセトアルデヒドこそが、頭痛や吐き気などの二日酔いの原因になる毒性物質です。そのため、歓送迎会や忘年会などでつい飲み過ぎてしまいそうな時は、アセトアルデヒドを分解する酵素の働きを高めるサプリメントなどを利用することをおすすめします。成分をみて、アラニンとグルタミンというアミノ酸が入っているものなら、効果が期待できます。
東海林先生
肝機能障害が起こらない程度の、自分に合った適量を見極めながら、うまくお酒と付き合っていくのが理想ですね。
編集部
もし、アルコール性の肝障害になったらどうすればよいでしょう?
市田先生
まずは、お酒をやめることです。肝障害になると、γ-GTP(ガンマジーティーピー)という値が高くなりますから、その数値を抑えるようにします。男性は50以下、女性は32以下が正常値で、それを超えると肝障害の疑いがあり、100を超えると節酒や禁酒が必要となります。これが300~400ぐらいになると、問題です。通常は、お酒を飲まなければ数値が下がりますから、下がらないということは、相変わらず飲み過ぎている証拠です。「飲んでいません」と嘘を言っても、医者にはすぐわかります。ただ、アルコール性肝障害の治療は、基本はお酒をやめるのが一番なのですが、飲まないほうがストレスになる方もいらっしゃいます。そういう場合は、γ-GTPの数値をみながら、患者さんと一緒に飲み方を考えるようにしています。
編集部まとめ
お酒と上手に付き合うには、1週間の積算飲酒量を約1升に収めるのが理想的です。1日換算だと約1.5合で、女性の場合は3分の2の量を目安とします。この適量を守れば、糖尿病や脳血管障害、がんなどの病気のリスクが減少し、死亡率も低くなるということが、疫学調査でも明らかになっています。 ただし、それが当てはまるのはお酒が強い人だけ。弱い人は、無理して飲み続けると、かえって食道がんをはじめとした病気になるリスクが高まるので注意が必要です。自分はお酒が強いかどうかを知るためには、アルコールを分解する2種類の酵素があるかどうか、「アルコール分解酵素遺伝子検査」を受ければわかります。お酒と上手に付き合うには、己を知ることから始めるのがよいようです。 それでも、つい飲み過ぎてしまったときは、二日酔いの原因物質となるアセトアルデヒドの分解を助けるサプリメントなどを上手に利用しましょう。成分表の中に、アラニンとグルタミンが入っていれば、アセトアルデヒド分解酵素の働きを早めて二日酔い予防になります。※編集部注 本記事は、お酒を飲まない方に飲酒を積極的に勧めるものではないことをご承知おきください。
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