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左右同時に親知らずは抜歯できる?抜歯の流れや注意点などを解説

 公開日:2025/08/23
左右同時に親知らずは抜歯できる?抜歯の流れや注意点などを解説

親知らずの抜歯は、片側ずつだけでなく、状況によっては左右同時に行うこともあります。親知らずを左右同時に抜歯することで得られるメリットもあるため、患者さんから希望を出すケースも少なくありません。しかし、親知らずの左右同時抜歯には腫れや痛み、日常生活への影響など知っておくべきポイントがあります。ここでは、左右同時抜歯の可否、流れ、費用やセルフケアの注意点まで、歯科医師の立場からわかりやすく解説します。

松浦 京之介

監修歯科医師
松浦 京之介(歯科医師)

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歯科医師。2019年福岡歯科大学卒業。2020年広島大学病院研修修了。その後、静岡県や神奈川県、佐賀県の歯科医院で勤務。2023年医療法人高輪会にて勤務。2024年合同会社House Call Agencyを起業。日本歯科保存学会、日本口腔外科学会、日本口腔インプラント学会の各会員。

左右同時に親知らずを抜歯できるか

左右同時に親知らずを抜歯できるか

はじめに、親知らずを左右同時に抜歯することの可否やメリット、デメリットについて解説します。

左右同時に親知らずを抜歯することは可能ですか?

親知らずの左右同時抜歯は、患者さんの全身状態やお口の状況によっては可能です。上下左右4本すべてを一度に抜く場合もありますが、左右片側ずつの同時抜歯が選ばれることもあります。ただし、腫れや痛みが一時的に強く出る可能性があり、生活への影響も考慮して計画します。持病がある方や全身麻酔が必要な場合は、事前に担当医と十分に相談してください。また、親知らずの左右同時抜歯は特別なケースに適用されるものであり、原則としては1本ずつや片側ずつ抜歯することになる点を正しく理解しておきましょう。

左右同時抜歯を勧められるのはどのようなケースですか?

左右同時抜歯が行われるのは、両側の親知らずが正常にまっすぐ生えていて、抜歯操作が複雑でない場合です。お口のなかの炎症が少なく、全身の健康状態が安定していることも条件のひとつです。また、仕事や学校の都合で治療期間を短縮したい方、遠方からの通院で回数を減らす必要がある方、全身麻酔や静脈内鎮静下で一度に処置を済ませられる設備や状態が整っている場合なども、左右同時抜歯が選択されることがあります。ただし、歯科医師側から親知らずの左右同時抜歯を積極的に勧めることは稀といえます。あくまで患者さんから強い希望があったり、やむを得ない理由がある場合のみ、左右同時抜歯を行います。

同日に左右同時抜歯を行うメリットとデメリットを教えてください

親知らずを左右同時に抜歯をするメリットは、治療回数を減らせる点が挙げられます。スケジュールの調整がしやすくなるのも利点です。デメリットとしては、腫れや痛みが両側に出るため、食事や会話に一時的に不便を感じる可能性があります。また、噛むこと自体が難しくなるため、術後の食事内容には特に配慮が必要です。こうしたことから親知らずの左右同時抜歯は、多くの患者さんにとってデメリットがメリットを上回ります。そのため特別な理由がない限り、親知らずは片側ずつ抜いた方がよいといえるでしょう。

親知らずを左右同時に抜歯する際の流れ

次に、親知らずを左右同時に抜く場合の治療の流れを解説します。

抜歯当日はどのような手順で処置が進みますか?

左右同時に親知らずを抜歯する場合、局所麻酔だけでなく、状態によっては全身麻酔や静脈内鎮静を併用することもあります。麻酔科医の管理のもとで麻酔を導入し、眠っている間に口腔内を確認してから、歯茎を切開し親知らずを抜去します。骨の切削や縫合も慎重に進め、止血後は麻酔から覚めるまで回復室で経過をみます。局所麻酔のみの場合も、同様に片側ずつ丁寧に進め、止血と縫合後に帰宅となります。入院の必要性については個別に判断されます。

左右同時抜歯の所要時間はどれくらいですか?

親知らずの左右同時抜歯では、局所麻酔のみの場合おおむね1〜2時間ほどで処置が完了します。静脈内鎮静や全身麻酔を併用する場合は、麻酔の導入と覚醒に時間がかかるため、前後の準備を含めると数時間を要することがあります。埋伏歯や顎の骨の状態によっても時間は前後するため、当日は半日から1日程度を空けておくと安心です。帰宅後はしっかり休養を取りましょう。

同時抜歯の際に患者さんが準備すべきことがあれば教えてください

全身麻酔下で左右同時抜歯を受ける場合は、前日夜から絶食が必要になることが多いため、担当医の指示にしたがってください。当日は動きやすい服装で来院し、術後は自分で運転できないことから、必ず付き添いの方に送迎をお願いしましょう。局所麻酔の場合も、術後はお口が腫れる可能性を考えて、やわらかい食事や保冷剤を用意しておくと安心です。不安や持病がある方は、事前に担当医と十分に相談してください。

親知らずの抜歯後の注意点とセルフケア

親知らずの抜歯後の注意点とセルフケア

親知らずを左右同時に抜歯した後はいくつかの注意点があります。正しいセルフケアの方法も含めて解説します。

両側を同時に抜歯した後の痛みや腫れはどの程度ですか?

左右を同時に親知らずを抜いた場合、片側のみよりも痛みや腫れが強くなる傾向があります。腫れは通常3〜4日後にピークを迎え、1週間ほどで落ち着いていきますが、個人差があります。痛み止めや抗生物質を処方されることが多いので、指示どおりに服用しましょう。氷や保冷剤での冷却も腫れを抑える助けになります。無理をせず、安静に過ごすことが大切です。

食事や歯磨きはいつから再開できますか?

抜歯当日は麻酔が切れてから、やわらかく冷たいものから食事を始めるのが安心です。食べ物を噛める状態ではない場合は、スープやお粥などで済ませましょう。熱いものや刺激物は出血の原因になるため避けてください。歯磨きは当日から可能ですが、傷口付近は無理に触れず、優しくお口をゆすぐ程度にとどめましょう。翌日以降、医師の指示にしたがって少しずつ通常のケアに戻してください。

抜歯後の生活で避けるべきことがあれば教えてください

抜歯後は、強いうがいや喫煙、飲酒、激しい運動は控えましょう。強いうがいは血のかたまり(血餅)が取れて治りが遅れる原因になります。また、喫煙や飲酒は血流に影響し、炎症を悪化させるおそれがあります。長時間の入浴やサウナも同様です。片側でしか噛めないために噛み合わせが偏らないよう、無理せずやわらかい食事を選ぶことが大切です。

左右同時抜歯を受ける前に確認したいこと

親知らずを左右同時に抜歯する場合は、以下の点を事前に確認しておく必要があります。

左右別々に抜く場合と費用は変わりますか?

親知らずの抜歯は、健康保険が適用される場合、1本ごとの抜歯処置料と診察料が計算されます。左右同時に抜いても、抜歯の技術料自体は1本単位で算定されるため大きな差はありません。別日に左右を分けると、通院回数分の自己負担が増える可能性があります。抜歯の難易度や麻酔方法でも変わることがあるので、事前に医院で明細を確認し、納得して進めましょう。

持病や服薬中の薬がある場合、同時抜歯は避けた方がよいですか?

高血圧や糖尿病、心臓疾患などの全身疾患がある患者さんは、抜歯による出血や感染のリスクが通常より高まることがあります。特に抗凝固薬(血液を固まりにくくする薬)を服用している場合、同時抜歯で止血が難航するリスクも考慮が必要です。こうした場合は左右同時ではなく、身体への負担を分散するために片側ずつ抜歯する方が望ましいことがあります。必ずかかりつけ医と連携を取り、服薬管理を歯科医に正確に伝えた上で安全な方法を選びましょう。

その他、注意すべきことがあれば教えてください

左右同時抜歯を予定している場合、術後は一時的に噛み合わせが不便になるため、前もって数日間のスケジュールを調整し、できるだけ安静にできる体制を整えることが大切です。また、栄養不足を避けるため、やわらかく栄養価の高い食事を用意しておくと回復がスムーズです。感染予防のため、むし歯や歯茎の炎症が残っていないか事前に治療を済ませ、十分な口腔内管理を行った上で計画を立てることをおすすめします。

編集部まとめ

親知らずを左右同時に抜歯するかどうかは、患者さんのお口の状態や全身の健康状態によって判断されます。むし歯や歯茎の炎症を放置せず、安心して治療を進めるためには、事前の相談と十分な準備が大切です。親知らずの同時抜歯には、治療回数が減るメリットもあれば、腫れや痛みが両側に及ぶリスクもあります。後悔しないためにも、担当の歯科医師とよく相談し、無理のない計画でお口の健康を守りましょう。

この記事の監修歯科医師