AGA（男性型脱毛症）に悩む人は少なくありません。日本人男性の約30%はAGAというデータもあります。AGAの進行を防ぐためには、正しい知識と適切な治療が必要です。この記事では、AGAの原因や症状、進行段階を詳しく解説するとともに、投薬治療や再生医療技術の進歩についても紹介します。治療における注意点や予防方法にも触れるため、AGAの再生医療が気になっている方はぜひ参考にしてくださいね。
目次 -INDEX-
AGAについて
AGAは、男性に多く見られる進行性の薄毛の一種で、早期発見と適切な治療が重要です。ここでは、AGAの原因や症状、進行段階、AGAは完治する病気なのかについて詳しく解説します。
AGAの原因
AGAは、ホルモンバランスの乱れが主な原因となり引き起こされます。男性ホルモンの一種であるテストステロンが、体内の酵素5αリダクターゼによってDHT（ジヒドロテストステロン）に変わります。このDHTが前頭部や頭頂部の毛根にある男性ホルモン受容体と結びつくと、毛の成長サイクル（ヘアサイクル）に悪影響を与えます。DHTは毛包を縮小させてヘアサイクルを短くするため、髪が徐々に細く短くなり、抜け落ちてしまうのです。 また、遺伝的要因もAGAの大きな原因です。家族にAGAの人がいる場合、その傾向が遺伝します。データによると、母方の祖父がAGAの場合、約75%の確率で遺伝し、母方の祖父と曽祖父が両方ともAGAの場合は約90%の確率で遺伝するとされています。
AGAの症状
AGAの初期症状は、髪の毛が徐々に細くやわらかくなり、抜け毛が増えていくことです。健康な人でも1日に50〜100本程度の髪の毛が自然に抜けますが、AGAによってヘアサイクルが乱れると、抜け毛の量が増加します。特に前頭部や頭頂部の髪が薄くなる傾向があり、M字型やU字型に進行することが一般的です。症状が進行すると頭皮が透けて見えるようになり、毛髪が完全に失われてしまいます。 また、頭皮にかゆみを感じることも初期症状のひとつです。これは、AGAの原因となるDHTが、皮脂腺を活性化させ、皮脂の分泌を増加させるためといわれています。
AGAの進行段階
AGAの進行パターンは、世界的に広く用いられているハミルトン・ノーウッド分類で12パターンにわかれます。日本では、日本人特有の頭頂部のみ薄毛が進行するパターンが多く見られることから、ハミルトン・ノーウッド分類に2vertexというパターンを加えた高島分類が利用されています。この分類は、日本人の脱毛パターンにより適した形で、より正確な診断と治療が可能です。 そのなかでも、AGAの進行パターンは、大きく3つのタイプに分類できます。まず、生え際の両サイドから進行するM字型（ハミルトン・ノーウッド分類1型〜5型）は、生え際の両サイドが後退し、M字のように薄毛が進行します。前頭部の髪が後退していくのが特徴です。次に、つむじ周辺の頭頂部を中心に薄毛が進行するO字型（2型 vertex〜4型）があります。このタイプは目視するのが難しいため、他人に指摘されて気付く人もいます。そして、生え際全体が後退していくU字型（4a型〜7型）は、O字型を併発すること特徴です。
AGAは完治する病気なのか
現時点では、AGAを完全に治す治療法はまだ確立されていません。しかし、適切な治療を行うことで進行を遅らせる、あるいは発毛を促進することは可能です。投薬治療や外用薬、再生医療など、さまざまな治療法が存在するため、個々の症状や進行状況に合わせて適切な治療を選ぶことが大切です。
AGAの治療法
AGAの治療は多岐にわたります。ここでは、基本的な投薬治療から外用薬、注入治療、さらには植毛や再生医療技術の応用まで、さまざまな治療法を解説します。
投薬治療
投薬治療は、AGA治療の基本的な治療方法です。代表的な薬剤は、フィナステリドとミノキシジルです。フィナステリドはAGAの原因であるDHTの生成を抑制する効果があり、ミノキシジルは血行を促進し、毛母細胞を活性化させる効果があります。 投薬治療は高い効果が期待できる一方で、副作用のリスクも伴います。フィナステリドでは性機能障害や肝機能障害などの副作用が報告されており、ミノキシジルでは頭皮のかゆみや赤みが生じることがあります。そのため、治療を進める際には医師と相談しながら、副作用に注意を払うことが重要です。
外用薬による発毛促進
外用薬は、頭皮に直接塗布して発毛を促進する治療法です。代表的な外用薬には、ミノキシジルが含まれます。ミノキシジルは、毛包の血流を改善し、毛髪の成長を促します。外用薬は手軽に使用できるため、初期段階のAGA治療に適しています。ただし、効果を持続させるためには、継続的な使用が必要です。
注入治療による育毛効果促進
注入治療は、成長因子や栄養素を頭皮に直接注入して、毛髪の成長を促進する方法です。代表的な治療には、メソセラピーやPRP療法（多血小板血漿）があります。 メソセラピー治療は、毛髪成長因子を含む薬剤を使用します。飲み薬と組み合わせることで、さらに効果が高まるのが特徴です。施術時間は短く、数分程度で終わります。極めて細い針のついたローラーを使用するため、痛みはほとんどありません。施術後のダウンタイムもほぼなく、日常生活に支障をきたさないのも大きなメリットです。 PRP（多血小板血漿）療法は、自分の血液から取り出した血小板を用いて毛髪の成長を促進する再生医療です。血小板には毛母細胞を活性化させる成長因子が豊富に含まれており、これが毛髪の再生を助けます。治療ではまず患者さんの血液を採取し、遠心分離機で血小板を濃縮します。その後、濃縮された血小板を、頭皮に注入することで毛髪の成長を促します。PRP療法は、高い安全性と少ない副作用が特徴で、多くの患者さんにとって効果的な治療となっています。
植毛
植毛は、患者さん自身の健康な毛根を薄毛部分に移植する治療法です。進行した薄毛に対して有効な治療法として広く用いられています。自分の髪を使用するため、自然な見た目と長期的な効果が期待できます。代表的な手法はFUE（Follicular Unit Extraction）とFUT（Follicular Unit Transplantation）です。 FUEは、毛包をひとつずつ個別に採取し、薄毛の部位に移植します。メリットは、ドナー部位に線状の傷跡が残らないことです。FUEは精密な技術が要求されるため、手術には時間がかかることがありますが、回復が早く、自然な仕上がりを望む方に適しています。 FUTは、頭皮の帯状の部分を切り取ってから、その中の毛包を分割し、薄毛の部位に移植します。一度に多くの毛包を移植できるため、広範囲の薄毛に対して有効です。しかし、ドナー部位に線状の傷跡が残るため、短髪にした際に目立つことがデメリットです。FUTは短時間で大量の毛包を移植できるため、広い範囲の薄毛に悩む方に適しています。
再生医療技術の応用
再生医療技術の進歩により、AGA治療に新たな選択肢が加わりました。特に、幹細胞治療やPRP療法といった新しい再生医療技術が注目されています。これらの治療は、髪の再生を促進し、発毛の効果をサポートすることが可能です。 幹細胞治療は、自分の皮下脂肪から取り出した幹細胞を使用して、髪の再生を促す治療です。幹細胞に特別な処理をしてから頭皮に注入することで、毛母細胞を活性化し、正常なヘアサイクルへと導きます。幹細胞は優れた再生能力で損傷した組織の修復や再生を助けるため、特に進行した薄毛やほかの治療では効果が得られなかった場合に有効です。 PRP療法も、髪の再生を助ける方法のひとつです。自分の血液から抽出した血小板を利用して、頭皮に注入することで、毛髪の成長を促進します。 これらの再生医療技術では、従来の治療では得られなかった効果が期待できます。再生医療の技術は、今後のAGA治療においてますます重要な役割を果たすでしょう。
再生医療によるAGA治療の進歩
従来は、AGAの治療は植毛や投薬がメジャーでしたが、近年は再生医療が注目されています。幹細胞や成長因子を利用した治療は、これまでの治療とは一線を画しています。ここでは、再生医療がAGA治療にどのように貢献しているかを見ていきましょう。
再生医療とは
再生医療は、細胞や組織の再生能力を利用して、傷や病気を治療する新しい技術です。幹細胞や成長因子を利用して、失われた組織の再生を促進することが可能です。再生医療はさまざまな疾患に応用されており、AGA治療にも大きな可能性を秘めています。
再生医療がAGA治療に与える影響
AGA治療の歴史は、かつては植毛やカツラといった対策が主流でした。しかし、近年では投薬や超音波、レーザー治療などの新しい治療が登場し、治療効果は飛躍的に向上しています。 そして、再生医療技術をAGA治療に応用することで、これまでの治療では達成できなかったさらなる効果が期待できます。幹細胞治療や成長因子注入療法は、毛母細胞を活性化させ、正常なヘアサイクルを取り戻す効果があります。この技術により、薄毛の進行を遅らせ、発毛を促進することが可能です。再生医療は、特に進行したAGAやほかの治療で効果が見られなかった場合にも有効です。
AGA治療において気を付けるべき点
AGA治療を効果的に進めるためには、いくつかのポイントを抑える必要があります。ここでは、治療の目標を明確にすることから、早期治療の重要性、信頼できるクリニックの選定まで、AGA治療を成功させるためのヒントを紹介します。
AGA治療の目標を明確にする
AGA治療を始める際には、治療の目標を明確にすることが重要です。発毛を目指すのか、現状維持を目指すのかを明確にすることで、適切な治療を選ぶことができます。AGAは完治することのない病気といわれています。そのため、どのくらいまで髪が生え揃ったら治療をやめるのかなど、現実的な目標を持つことが大切です。
早期治療の開始
AGAは進行性の疾患のため、早期に治療を開始することが重要です。初期段階での治療は、毛髪の維持や発毛に対してより効果的です。薄毛が気になり始めたら、できるだけ早く専門医の診断を受けましょう。
続けることを前提にしたクリニックの選定
AGA治療は長期にわたるため、信頼できるクリニックを選びましょう。治療の継続が効果に直結するため、通いやすい場所にあるのかどうかも重要です。また、クリニックの症例や雰囲気なども事前に確認しておくとよいでしょう。
自己判断には頼らない
AGAの治療は専門知識を必要とするため、自己判断での治療は避けましょう。医師の指導のもと適切な治療を進めることで効果を発揮できます。また、副作用やリスクについても医師に相談することが重要です。
未承認の薬等の注意点
AGA治療には多くの薬剤や治療が存在しますが、未承認の薬や治療には注意が必要です。効果が証明されていない薬剤や治療を使用すると、健康被害を受ける可能性があります。治療を行う際には、信頼できる医療機関を選びましょう。 AGA治療に関して、たくさんの情報が出回る近年ですが、これらのポイントに注意してよりよい効果が得られるよう治療に臨みましょう。
AGAの予防方法
AGA治療には多くの薬剤や治療が存在しますが、未承認の薬や治療には注意が必要です。効果が証明されていない薬剤や治療を使用すると、健康被害を受ける可能性があります。治療を行う際には、信頼できる医療機関を選びましょう。
生活習慣の見直し
AGAの予防には、生活習慣の見直しが重要です。バランスの悪い食事は、髪の健康に必要な栄養素が不足する原因になります。タバコやアルコールの過剰摂取も、髪に悪影響を与えます。また、頭皮のケアも重要です。肌に合わないシャンプーやワックスなどのヘアケア剤、紫外線などの外的要因などによって、薄毛が進行することがあります。
ストレスの軽減
ストレスは、AGAの進行を促進する要因のひとつです。過度のストレスは血行不良につながり、頭皮への血流が減少することで髪の成長が妨げられます。ストレスを軽減するためには、リラクゼーション法や趣味を見つけることが効果的です。また、適度な休息を取り、過度なストレスを避ける生活を心がけることが重要です。心の健康を保つことで、薄毛の進行を抑えることができます。
まとめ
AGAは進行性の疾患で、現時点では完全に治す治療法は確立されていません。しかし、適切な治療を受けることで、進行を遅らせたり、発毛を促進したりすることは十分に可能です。AGA治療には多くの選択肢があるため、個々の状況に応じて適切な方法を選ぶことが重要です。特に再生医療技術の進展により、従来の治療では得られなかった効果が期待されています。AGAに悩んでいる方は、専門医と相談して自分に合った治療法を見つけましょう。
参考文献
