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【下肢静脈瘤の治療法】治療法別のメリット・デメリットについても解説

 公開日:2024/12/22

本記事では下肢静脈瘤の治療について以下の点を中心にご紹介します。

  • 下肢静脈瘤について
  • 下肢静脈瘤の治療法
  • 下肢静脈瘤治療法別のメリット・デメリット

下肢静脈瘤の治療について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

下肢静脈瘤とは?

下肢静脈瘤とは?

下肢静脈瘤とは、足の静脈が太くなり、瘤(こぶ)状に浮き出て見える状態ですの病気です。静脈の中にある弁が壊れて血液が逆流し、静脈の壁にかかる圧力が高くなることが原因とされています。
足の静脈の中の血液が心臓に戻るには、重力に逆らって上昇する必要があります。歩くことで「ふくらはぎの筋肉」が収縮し、静脈の中の血液を押し上げ、途中にある「静脈弁」が下に逆流しないように支えています。しかし、筋肉のポンプ機能が弱まったり、弁の機能が悪くなったりすると、静脈内に血液が溜まり、静脈の壁にかかる圧力が高くなります。静脈の壁はそんなに強くありませんので、伸びたり、曲がったり、膨れたりして静脈瘤となります。

下肢静脈瘤は、見た目だけでなく、足のだるさや痛み、むくみなどの症状を引き起こします。放置すると、皮膚の障害や出血などの合併症を起こす可能性もあります。

下肢静脈瘤には、太い血管にできる「伏在型静脈瘤」と、細い表在静脈にできる「小静脈瘤」の2種類があります。
伏在型静脈瘤は太腿やふくらはぎ、足先にかけて現れます。血液のうっ滞が強く、足のだるさや痛みなどの症状も出やすいといわれています。放置していると、症状が徐々に悪化して皮膚の障害を起こすこともあり、進行しやすい為注意が必要です。
小静脈瘤は膝の裏側に現れやすく、「側枝型静脈瘤」「網目状静脈瘤」「クモの巣状静脈瘤」の3種類があります。小静脈瘤は症状が軽めで進行しにくい為、すぐに治療せず、様子を見ることもあります。
ただし、伏在型静脈瘤と小静脈瘤は同時に起こることもあります。
下肢静脈瘤の症状は日常生活に支障をきたすこともありますので、足の血管が目立つ他に足がだるい等つらい症状がある方は、医療機関で詳しく調べてもらうことをおすすめします。

下肢静脈瘤の治療法

下肢静脈瘤の治療法

下肢静脈瘤の治療法は、大きく分けて、手術を行わない保存的治療(圧迫療法)と、手術による治療の2種類があります。
保存的治療は、静脈瘤の進行を遅らせるのに役立ちますが、根本的な治療ではありません。手術による治療は、静脈瘤を切除したり、閉塞したりすることで、血流を改善します。手術の方法には、血管内焼灼術、静脈瘤切除、抜去切除術、硬化療法、高位結紮術、グルー治療等があります。

圧迫療法

圧迫療法とは、弾性ストッキングや弾性包帯を使って、足に適度な圧力をかけ、静脈の血流を促進する方法です。足を圧迫するために、朝起きてすぐに弾性ストッキングや弾性包帯を装着し、夜寝る時には外します。寝る時は足の下にクッション等を敷き、膝から下の足を身体より10cmほど高くして寝ます。
圧迫療法は静脈瘤の進行を遅らせる目的で行われますが、静脈瘤を治すことはできません。圧迫療法は、手術を受けられない方や、手術の前後の補助的な治療として行われます。

血管内焼灼術(血管内レーザー・高周波治療)

血管内焼灼術とは、静脈瘤のある血管に細いカテーテルを挿入し、レーザーや高周波の熱で血管を焼灼して閉塞させる方法です。 血管内焼灼術は、伏在型静脈瘤に対して行われます。伏在型静脈瘤とは、足の深部にある静脈の弁が機能しなくなり、血液が逆流して静脈が拡張する病気です。伏在型静脈瘤は、足の重だるさやむくみ、痛み、皮膚の色素沈着や潰瘍などの症状を引き起こします。 血管内焼灼術を受けられるかどうかは、静脈瘤の程度や位置、血管の太さや形状、患者さんの体質や希望等によって異なります。

抜去切除術(ストリッピング手術)

静脈瘤切除とは、静脈瘤のある血管を皮膚から切り取る方法です。静脈瘤切除は、側枝型静脈瘤や網目状静脈瘤に対して行われます。また、血管内焼灼術や抜去切除術で残った瘤を小さくする為に行われることもあります。目立つ静脈瘤は3mm位切開して、切除します。
静脈瘤切除は、局所麻酔で行われ、手術時間は約15分です。

静脈瘤切除

抜去切除術(ストリッピング手術)とは、静脈瘤のある血管を皮膚から切り取ると共に、大伏在静脈・小伏在静脈の一部を抜去する方法です。足の付けや膝付近で、約1cmの切開を2か所で行い、ワイヤーを通して静脈を切除・抜去します。抜去切除術は、伏在型静脈瘤に対して行われます。また、血管内レーザー治療ができない方に対して行われる場合があります。
抜去切除術で抜き取るのは表在静脈のうちの一部なので、深部静脈で十分機能を補えます。また、抜き取るのは既に機能していない血管なので、抜き取ることで新たな問題が生じることは殆ど無いとされています。
抜去切除術は、全身麻酔や下半身麻酔、局所麻酔(TLA麻酔)で行われ、手術時間は約1〜2時間です。数日~1週間程度の入院が必要な場合もあります。
抜去切除術は、静脈瘤の根本的な除去を目的としていますが、術後5年程経過すると再発する場合もあります。

硬化療法

硬化療法とは、静脈瘤のある血管に硬化剤という薬剤を注入し、血管を炎症させて閉塞させる方法です。硬化療法は、伏在型静脈瘤以外の小静脈瘤に対して行われます。硬化療法は、静脈瘤の原因を取り除くために行う治療ではなく、膨らんでいる瘤をなくすための治療です。
硬化療法は局所麻酔で行われ、治療時間は約15〜30分です。
非常に太い静脈瘤がある方や、皮膚に潰瘍ができるほど静脈瘤が進行している方には、硬化療法と他の手術を併せて行われたり、別の手術方法が選ばれたりします。

高位結紮術

高位結紮術とは、大伏在静脈・小伏在静脈の付け根にある静脈弁が壊れている場合に、静脈の根元を結紮して(糸で縛って)血液の逆流を防ぐ方法です。高位結紮術は、伏在型静脈瘤に対して行われます。伏在静脈の静脈瘤の場合は、膝の裏側の皮膚を小さく切開し、小伏在静脈の根元を糸で縛ります。
高位結紮術は、主に局所麻酔で行われ、手術時間は約1時間です。術後は、数週間の圧迫療法が必要ですが、日常生活には1週間程度で戻れます。
高位結紮術は皮膚を切る範囲が狭くて済みますが、静脈瘤のある血管そのものは残っているため、再発も少なくありません。少しでも再発を減らす為に、硬化療法と高位結紮術を併せて行う医療機関もあるようです。
再発率の高さから高位結紮術が行われる機会は少なくなったようですが、ストリッピング術後の血管新生による再発や側枝型静脈瘤等のケースにおいては、高位結紮術が検討される場合があります。

グルー治療

グルー治療は、日本では2019年12月に保険診療として承認された、新しい治療法です。静脈瘤のある血管に生体適合性のある接着剤を注入し、血管を接着して閉塞させます。主に伏在型静脈瘤に対して行われます。
治療は局所麻酔で行われ、治療時間は約30分〜1時間です。
グルー治療は、切開や麻酔、術後の弾性ストッキングが不要であり、日常生活に支障をきたし難いことが特徴です。

下肢静脈瘤の治療別のメリットとデメリット

下肢静脈瘤の治療別のメリットとデメリット

下肢静脈瘤の治療法にはそれぞれメリットとデメリットがあります。医師と相談して自身に合った方法を選ぶことが大切です。
以下、各治療法のメリットとデメリットを解説します。

圧迫療法

圧迫療法のメリットは、手術が必要無いことや、費用の負担が少ないこと、日常生活に支障をきたし難い点が挙げられます。

一方、圧迫療法のデメリットは、圧迫感や暑さ等の不快感や、ストッキングのサイズが合っていなかったり、包帯が上手く巻けなかったりした場合は治療成果が乏しいこと、継続的に行わなければならないことが挙げられます。弾性ストッキングや包帯の使い方や使用状態が悪いと、さまざまな合併症が起こりやすくなるため、注意が必要です。動脈血行障害や糖尿病を有する患者さんによる使用は、特に慎重になる必要があります。
また、圧迫療法を行っていても、静脈瘤が悪化することもあります。

血管内焼灼術(血管内レーザー・高周波治療)

血管内焼灼術のメリットとして、まず、手術が局所麻酔で行われる点が挙げられます。手術は日帰りでできる場合が多いといわれています。また、神経障害などの後遺症は少ないとされています。

血管内焼灼術のデメリットは、術後に血の塊や火傷ができる場合があること、血管の炎症や感染、神経障害などの合併症が起こる可能性があることや、受けられる施設が限られることが挙げられます。血管内焼灼術は、資格や経験等、さまざまな条件を満たした医師にのみ施術が認められています。

抜去切除術(ストリッピング手術)

抜去切除術(ストリッピング手術)抜去切除術のメリットは、静脈瘤を根本的な除去を目的とするため、再発率が低いことが挙げられます。

一方抜去切除術のデメリットは、切開が大きく、出血や痛みが多い傾向にあるため、入院が必要とされることや、傷跡が残る可能性、神経障害などの後遺症を伴うことがあること、下半身麻酔が必要である点が挙げられます。

硬化療法

硬化療法のメリットは、切開や麻酔が不要であり、穿刺で行うため傷跡がほとんど残らないとされる点が挙げられます。硬化療法は、静脈瘤のある血管に硬化剤という薬剤を注入し、血管を炎症させて閉塞させる方法です。

硬化療法のデメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • 硬化剤注入部で色素沈着する可能性
  • 時間の経過と共に消失するとはいえ、しこりや痛みが残る可能性がある
  • 皮下出血、皮膚潰瘍の可能性
  • 硬化療法単独では、血液の逆流を改善できないため、すぐに再発する可能性がある
  • 硬化剤によるアレルギーや副作用にも注意が必要

また、頻度は高くないとされていますが、深部静脈血栓症や肺塞栓(いわゆるエコノミ―症候群)が起こる可能性もあります。

高位結紮術

高位結紮術のメリットとしては、局所麻酔で行え、手術が簡便とされる点や、皮膚を切る範囲が狭くて済むため、術後の痛みや出血が少ない傾向にあること、体への負担が少ないとされる点が挙げられます。

一方高位結紮術のデメリットは、術後一定期間経つと再発が多く見られる点です。再発の可能性を少しでも減らすため、硬化療法と併用されることもあります。

グルー治療

グルー治療のメリットとして、以下の点が挙げられます。

  • 治療後の弾性ストッキングが不要
  • 治療後すぐに仕事や運動ができ、飛行機にも乗れる等日常生活への制限が少ない
  • 神経障害や深部静脈血栓症等の、治療後の合併症が少ない
  • 広い範囲の局所麻酔が不要で痛みが少ない

グルー治療のデメリットとしては、以下の点が挙げられます。

  • 接着剤によるアレルギー反応や血管炎などの合併症が起こる可能性がある
  • 接着剤が体内に残ることがある
  • 術後、治療部位に異物感を感じる場合がある
  • 血管の曲がり具合が強い方や、複雑なタイプの下肢静脈瘤には不向き

まとめ

まとめ

ここまで下肢静脈瘤の治療についてお伝えしてきました。
下肢静脈瘤の治療について、要点をまとめると以下の通りです。

  • 下肢静脈瘤とは、足の静脈の弁が機能しなくなり、血液が逆流して静脈が拡張する病気のこと。下肢静脈瘤は、足の重だるさやむくみ、痛み、皮膚の色素沈着や潰瘍などの症状を引き起こす
  • 下肢静脈瘤の治療法には大きく分けて2つあり、手術を行わない保存的治療(圧迫療法)と、手術による複数の治療法がある
  • 保存的治療のメリットは、手術のリスクがなく、日常生活への支障が少ないとされる点にある。デメリットは、根本的な治療ではないことや、継続的に行わなければならないことが挙げられる。手術によるメリットは、静脈瘤を根本的に除去する目的であることや、見た目の改善が期待できる点にある。デメリットは、切開が必要な場合があることや、出血や痛みがあること、合併症が起こる可能性が挙げられる

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
眞鍋 憲正医師(UT Austin)

眞鍋 憲正医師(UT Austin)

信州大学医学部卒業 / 信州大学大学院疾患予防医科学専攻スポーツ医科学講座 博士課程修了 / UT Southwestern Medical Center, Internal Medicine, Visiting Senior Scholar / Institute for Exercise and Environmental Medicine, Visiting Senior Scholar / UT Austin, Faculty of Education and Kinesiology, Cardiovascular aging research lab, Visiting Scholar

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