「橋本病」を発症すると現れる「症状」はご存知ですか?初期症状についても解説!

橋本病は(慢性甲状腺炎)、甲状腺にまつわる自己抗体の病気(自己免疫疾患)です。
甲状腺とは、喉にある蝶ネクタイ型の臓器で、主に身体の代謝を司るホルモンの分泌と調整に関わっています。
「病院で橋本病と言われたが、病名からはさっぱりどんな病気かわらかない」
「橋本病で薬をもらったけれど、これはどうして飲むの?」
「橋本病で薬が出た場合、一生飲み続けなくてはいけないの?」
このように思い悩む方もいると思います。
そもそも、橋本病を含め甲状腺という言葉、また、甲状腺疾患自体が、耳慣れない方も多いかもしれません。
この記事では、橋本病の症状や、なぜ治療が必要かを解説します。

監修医師:
上田 莉子(医師)
目次 -INDEX-
橋本病でみられる代表的な症状

橋本病とはどのような病気ですか?
ホルモンとは、臓器でつくられ、血流にのって運ばれて目的の臓器に作用し、身体の恒常性を保つために役立つ伝達物質です。甲状腺は、たくさんの種類があるホルモンのなかで、主に代謝に関わるホルモンの分泌と調整を司っています。
橋本病で甲状腺機能低下症になると、甲状腺から出るホルモン、具体的にはfT3(フリーティースリー)とfT4(フリーティーフォー)という甲状腺ホルモンが低下します。
これによって、疲れやすさや寒冷状況への耐性の低下など、全身にさまざまな症状が出現します。
橋本病では、自己抗体というものが絡んで甲状腺機能低下症をきたすことがあります。
抗体とは、身体が細菌やがん細胞などの敵を攻撃する際に作った免疫系の武器です。自己抗体とは、誤って自分の正常な臓器を標的に作ってしまった抗体であり、橋本病は抗TPO抗体や抗Tg抗体(抗サイログロブリン抗体)の関与で甲状腺機能低下症をきたすことが知られています。
参照:『橋本病(慢性甲状腺炎)』(日本内分泌学会)
橋本病でみられる主な症状を教えてください
甲状腺機能低下症をきたすと、全身に多様な症状が現れます。
- 疲れやすい
- むくみ
- 寒がり
- 体重増加
- 便秘
- 眠気
代表的なものは以上ですが、ほかにも眉毛が外側から抜けたり、足がむくんだりするといった症状がみられる場合もあります。さらに、精神の落ち込みの原因が甲状腺機能低下症であることもあります。
- やる気が出ない
- 抑うつ気分
- 思考が遅い
- 集中できない
- 物忘れが増えた感じ
このような抑うつ気分がみられたとき、うつ病などの精神的な疾患のほかに、橋本病によるものをはじめとした甲状腺機能低下症が隠れている可能性があります。
橋本病の初期症状にはどのようなものがありますか?
- なんとなく疲れやすい
- だるい
- 集中力が落ちた気がする
- 体重が少し増えた気がする
- むくむ
これらの症状は軽微なこともあり、気が付かなかったり「気のせいだ」と考えてしまったりして見逃してしまうこともあります。
橋本病で症状がほとんど出ないことはありますか?
橋本病によって甲状腺機能低下症を呈しても、症状がほとんど出ないことはあります。
橋本病による甲状腺機能低下症は、その症状の曖昧さから、「症状がほとんど出なかった」と感じる方もいるかもしれません。
また、甲状腺機能低下症では、症状が出ていても気付きにくく、また、一般的な採血では甲状腺機能まで測定することが少ないので、病院に行っても症状が出そろうまで甲状腺疾患だということに結びつきにくいこともあります。
橋本病|症状の進み方

橋本病はどのように進行しますか?
甲状腺ホルモンのやっかいなところは、標的臓器という甲状腺ホルモンが効く先の臓器に心臓が含まれることです。甲状腺ホルモンが低下すると、心臓の拍動がゆるやかになるため、運動時に酸素を全身の組織に運搬する作用が不十分になります。このため、橋本病があると、その程度によって、すこし動くだけでも疲労がたまりやすくなります。
橋本病を治療しないとどうなりますか?
粘液水腫性昏睡とは、橋本病による甲状腺機能低下症が進行するなどして、重症の甲状腺機能低下症が極限まで進行した危ない状態で、放置すると高い確率で死亡に至る、大変危険な状態です。
このため、橋本病で甲状腺機能低下症を発症していると診断されたら、症状が軽微でも内服治療を継続してホルモンの補充を受けることをおすすめします。
参照:『Myxedema coma: challenges and future directions, a systematic survey and review』(Thyroid Res.)
橋本病が疑われる場合の受診の目安

どのような症状がみられたら受診した方がよいですか?
なんとなく続く倦怠感や疲れやすさがある場合や、周囲は平気なのに自分だけ寒い場合、
食事量は変わらないのに体重が増える場合、むくみやすいときなど、橋本病で甲状腺機能が低下していることで代謝が落ちている可能性があります。
また、坂を上ったり、階段を上がったりしているときなど、運動時の疲労感が普段より強くなった場合、橋本病が鑑別のひとつにあがります。さらに、脈が遅いこと(徐脈)も、橋本病によるものを含めた甲状腺機能低下症の特徴です。
さらに、甲状腺機能低下症ではうつ病や認知症と間違われるような症状が出ることがあります。
- 疲れやすい
- むくみ
- 寒がり
- 体重増加
- 便秘
- 眠気
- やる気が出ない
- 抑うつ気分
- 思考が遅い
- 集中できない
- 物忘れが増えた感じ
このような症状があらわれた場合、内分泌内科か、内科に受診してください。精神的な症状が目立つ場合は、精神科で採血を受けることも可能な場合があります。
橋本病が疑われるときの検査方法と診断基準を教えてください
典型的な橋本病では、診察上甲状腺は腫大し、甲状腺ホルモンは低下して、エコー画像では甲状腺の組織が粗くなります。
甲状腺機能低下を確認したら、それが橋本病によるものかを確認するため採血で自己抗体を測定します。特有の自己抗体が陽性であれば、橋本病と確定診断されます。
橋本病はどのように治療しますか?
これは、自己免疫の発生自体を止める治療がないためであり、橋本病から甲状腺機能低下症に進むのを完全に予防することはできません。
橋本病により甲状腺機能低下症を発症した場合は、内服でのホルモン補充により治療します。
この薬は、ほとんどの場合で、生涯継続して内服が必要です。
ただし、橋本病によるものを含む甲状腺機能低下症の治療薬は、バセドウ病などの逆に甲状腺ホルモンが多量に出る甲状腺機能亢進症と比べて副作用が少なく、甲状腺機能亢進症と比べると安全性の高い治療を継続することができます。
編集部まとめ

周囲の方より寒がりだったり、労作時の疲れやすさが著しい場合は、一度内科で甲状腺機能を検査してみてもよいかもしれません。
橋本病は自己免疫によって甲状腺の働きが低下することがある病気ですが、適切に診断され、必要に応じて治療を行えば、過度に恐れる必要のない疾患であることが多いです。
特に、甲状腺ホルモンの不足が明らかになった場合には、内服薬によって不足分を補うことで、症状の改善や日常生活の質の維持が期待できます。
薬が必要になった場合は、自己判断で中断することなく、しっかり内服して不足している甲状腺ホルモンを補充しましょう。
参考文献




