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30〜50代女性に多い「全身性強皮症」の原因と見逃せない初期症状とは?【医師監修】

 公開日:2026/04/24
30〜50代女性に多い「全身性強皮症」の原因と見逃せない初期症状とは?【医師監修】

全身性強皮症は、皮膚だけでなく肺や心臓、消化管など全身の臓器に影響を及ぼす可能性がある疾患です。症状の現れ方や進行のスピードには個人差が大きく、いくつかのタイプに分かれます。
本記事では、全身性強皮症の基礎知識から原因、症状、検査・診断の流れ、重症度の考え方、治療法を解説します。

副島 裕太郎

監修医師
副島 裕太郎(横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科)

プロフィールをもっと見る
2011年佐賀大学医学部医学科卒業。2021年横浜市立大学大学院医学研究科修了。リウマチ・膠原病および感染症の診療・研究に従事している。

【資格】
日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医・指導医
日本リウマチ学会 リウマチ専門医・指導医・評議員
日本リウマチ学会 登録ソノグラファー
日本リウマチ財団 登録医
日本アレルギー学会 アレルギー専門医(内科)
日本臨床免疫学会 免疫療法認定医
日本化学療法学会 抗菌化学療法認定医
日本エイズ学会 認定医
日本温泉気候物理医学会 温泉療法医・温泉療法専門医
日本骨粗鬆症学会 認定医
日本母性内科学会 母性内科診療プロバイダー
身体障害者福祉法第15条指定医(肢体不自由、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害)
インフェクションコントロールドクター
博士(医学)

診療科目
一般内科、リウマチ・膠原病内科、アレルギー科、感染症科

全身性強皮症の基礎知識

全身性強皮症の基礎知識

全身性強皮症はどのような病気ですか?

全身性強皮症は、皮膚や内臓が硬くなる硬化線維化を特徴とする疾患です。皮膚だけでなく肺や心臓、消化管など全身の臓器に影響が及ぶことがある点が特徴です。

また、すべての患者さんで同じ経過をたどるわけではなく、進行の速さや内臓への影響の程度には大きな個人差があります。ほとんど進行しないケースもあることから、かつて用いられていた進行性という表現は現在では一般的に使われていません。

全身性強皮症は次の2つに分類されます。

  • びまん皮膚硬化型:皮膚硬化が体幹まで広がりやすく、発症から数年は進行しやすい
  • 限局皮膚硬化型:皮膚硬化が手指などにとどまり、進行は緩やかまたはほとんど進まない

上記の分類によって、将来的な症状の現れ方や内臓病変のリスクをある程度予測できるようになりました。

日本には何人程度の患者さんがいますか?

日本の全身性強皮症の患者数は、27,017人と報告されています。

ただし、全身性強皮症は初期にレイノー現象(寒さなどで指先の色が変わる症状)から始まることが多く、皮膚の硬化がゆっくり進行する軽症例では、病気に気付かれないまま経過するケースも少なくありません。そのため、診断に至っていない患者さんも含めると、実際の患者数は報告数の数倍にのぼる可能性があると考えられています。

また、男女比は約1:12と女性に多く、特に30〜50歳代での発症が目立ちます。一方で、ごくまれに小児期や高齢期に発症することもあります。

全身性強皮症の原因を教えてください

全身性強皮症の原因は、現時点では完全には解明されていません。ただし、近年の研究により、発症には主に自己免疫、線維化、血管障害という3つの異常が深く関わっていることがわかってきました。

免疫の異常により本来は自分の身体を守るはずの免疫が自身の組織を攻撃し、炎症や自己抗体の産生が起こります。これがきっかけとなって、皮膚や臓器が硬くなる線維化や、血管の障害へとつながると考えられています。

実際に、免疫の働きを抑える薬が一定の効果を示すことから、免疫異常が病気の出発点である可能性が高いとされています。

さらに近年では、免疫に関わるB細胞の異常な活性化や、インターロイキン6と呼ばれる炎症性物質の関与も明らかになってきました。線維芽細胞を刺激し、皮膚や臓器の硬化を進める要因の一つと考えられています。

ただし、免疫異常が起こる理由や引き金に関しては解明されておらず、現在も研究が進められています。
参照:
『全身性強皮症(指定難病51)』(難病情報センター)
『原因はわかっているのですか?』(日本皮膚科学会)

全身性強皮症の症状

全身性強皮症の症状

全身性強皮症で皮膚や関節に生じる症状を教えてください

全身性強皮症では、皮膚の硬化と関節の動きに関わる症状がみられます。

皮膚の症状は、手指のむくみやこわばりから始まり、次第に皮膚が硬く厚くなる皮膚硬化へと進行します。進行の仕方には個人差がありますが、びまん皮膚硬化型では腕や体幹へと広がることもあります。一方、限局皮膚硬化型では手指にとどまることが多いとされています。

また、皮膚の変化では、毛細血管の拡張や色素沈着・色素脱失、皮膚の石灰沈着、爪の周囲にみられる小さな出血点などが現れることがあります。指先では血流障害により潰瘍や傷跡が残る場合があります。

関節の症状は、痛みや炎症に加え、関節の動かしにくさ(可動域の制限)などです。手指では皮膚の硬化と相まって曲げ伸ばしが難しくなる屈曲拘縮が起こることもあります。

全身性強皮症の肺高血圧症とはどのような症状ですか?

肺高血圧症は、心臓から肺へ血液を送る血管(肺動脈)の圧力が高くなる状態です。

初期には自覚症状がほとんどないこともありますが、進行すると息切れや呼吸困難、疲れやすさなどが現れます。さらに重症化すると、右心不全へと進行することもあります。

肺高血圧症は発見が遅れると治療が難しくなることがあるため、定期的な検査による早期発見が重要とされています。

全身性強皮症にはほかにも症状がありますか?

全身性強皮症は、皮膚や関節だけでなく全身のさまざまな臓器に影響を及ぼす可能性があります。

代表的な症状は、寒冷刺激で指先の色が変わるレイノー現象で、多くの患者さんで初期にみられます。また、食道の動きが低下することで起こる逆流性食道炎や、腸の機能低下による便秘・下痢、吸収不良など消化管の症状も多くみられます。

さらに、肺では線維化によって咳や息切れが生じることがあり、進行すると呼吸機能に影響を及ぼします。腎臓では急激な血圧上昇を伴う腎クリーゼ、心臓では不整脈や心外膜炎などが起こることもあります。

筋肉の炎症(ミオパチー)や全身の倦怠感など、多様な症状がみられるのも特徴です。
参照:『全身性強皮症(指定難病51)』(難病情報センター)

全身性強皮症の検査と診断、治療法

全身性強皮症の検査と診断、治療法

全身性強皮症が疑われるときはどのような検査を行うのですか?

全身性強皮症の診断は、問診・診察・各種検査を組み合わせて総合的に行われます。皮膚だけでなく内臓にも影響が及ぶ可能性があるため、全身の状態を多角的に評価することが重要です。

問診では、現在の症状だけでなく、これまでの体調の変化や生活歴についても詳しく確認されます。一見関係がないように思える内容でも診断の手がかりになることがあるため、過去の手術歴や職業歴なども含めて正確に伝えることが大切です。

血液検査により自己抗体(抗核抗体、抗Scl-70抗体、抗セントロメア抗体など)の有無を確認します。さらに、肺や心臓などの内臓への影響を調べるために、胸部CTや肺機能検査、心臓超音波検査などが行われます。

全身性強皮症の診断基準を教えてください

全身性強皮症の診断では、厚生労働省の研究班による診断基準が広く用いられています。

「手指や足趾を超えて広がる皮膚硬化」が大きな判断基準(大基準)とされています。

加えて、以下のような所見が小基準として評価されます。

  • 手指や足趾に限局した皮膚硬化
  • 指先の陥凹性瘢痕や指腹の萎縮
  • 両側肺の基底部の線維化
  • 特定の自己抗体(抗Scl-70抗体、抗セントロメア抗体、抗RNAポリメラーゼⅢ抗体など)の陽性

大基準を満たす場合、または小基準の1を満たしたうえで、2~4のいずれか1つ以上を満たす場合に、全身性強皮症と診断されます。

全身性強皮症の重症度はどのように調べますか?

全身性強皮症の重症度は、皮膚や内臓など複数の項目を総合的に評価して判定されます。
主に、皮膚、肺、心臓、腎臓、消化管の5つの臓器・領域ごとに重症度が評価され、その中で最も重いものが全体の重症度として判定されます。

皮膚の評価では、mRSS(modified Rodnan skin score)と呼ばれる指標が用いられ、身体の各部位の皮膚の硬さを数値化して重症度を判断します。

肺は、間質性肺炎の有無や進行の程度、肺機能検査の結果などから評価されます。

心臓では、自覚症状の程度(息切れなど)に加え、心電図や心臓超音波検査の結果をもとに重症度が判定されます。特に心機能を示す指標である左室駆出率(EF)や、心不全の重症度分類(NYHA分類)が重要な判断材料です。

腎臓は、腎機能の低下や血圧の異常などをもとに評価され、必要に応じてシスタチンCを用いた指標で腎機能をより正確に把握します。

消化管では、食道や腸の動きの異常による症状(飲み込みづらさ、便秘や下痢など)の有無や程度をもとに評価されます。

さらに、全身状態や関節の動きの制限、肺高血圧症の有無、血管障害の程度なども重症度の判断に影響します。

全身性強皮症はどのように治療しますか?

全身性強皮症を完全に治す治療法は確立されていません。しかし、近年の医療の進歩により、症状の進行を抑えたり、合併症をコントロールしたりする治療法が増えてきています。

治療は、病気の進行を抑える治療と、症状に応じて対処する治療を組み合わせて行われます。

皮膚の硬化や肺の線維化などに対しては、免疫の働きを調整する薬を使用します。また、肺線維症に対しては、進行を抑える目的でニンテダニブなどの抗線維化薬が使用されます。

一方で、合併症に対する治療も重要です。肺高血圧症や指先の潰瘍には血管を広げる薬(ボセンタンなど)、腎クリーゼには血圧をコントロールする薬(ACE阻害薬)、逆流性食道炎には胃酸の分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬)が用いられます。
参照:
『全身性強皮症(指定難病51)』(難病情報センター)
『診断はどのように行われるのですか?』(日本皮膚科学会)
『どんな治療がありますか?』(日本皮膚科学会)

編集部まとめ

編集部まとめ

全身性強皮症は、皮膚の硬化だけでなく、肺や心臓、消化管などさまざまな臓器に影響を及ぼす可能性がある病気です。

診断は問診・診察・検査を組み合わせて総合的に行われ、診断基準はあくまで判断の目安として用いられます。

治療は、病気の進行を抑える方法と症状を和らげる方法を組み合わせて行われ、近年は新たな治療選択肢も増えてきています。

強皮症は長期的に向き合う必要がある病気ですが、適切な診断と継続的な治療によって症状のコントロールが期待できます。気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

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