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「糖尿病」を発症するとどんな「目の病気」にかかりやすくなる?【医師監修】

 公開日:2026/04/09
「糖尿病」を発症するとどんな「目の病気」にかかりやすくなる?【医師監修】

最近、このようなことはありませんか。「運転中、信号や標識が少しぼやける気がする」「老眼にしては、急に見えにくくなった」「眼が疲れやすく、ピントが合いにくい」「年齢のせいかな」「仕事で眼を使いすぎているだけ」そう思って、そのままにしてはいないでしょうか。
もし、あなたが糖尿病、あるいは血糖値が高めだと言われたことがあるなら、その見えにくさは単なる眼の疲れではない可能性があります。
糖尿病は、神経や腎臓だけでなく、眼にも静かに影響を及ぼす病気です。しかも厄介なことに、糖尿病による眼の障害は、かなり進行するまで自覚症状がほとんど出ません。
そのため、見えにくいと気付いたときには、すでに網膜の血管が傷み、視力をもとに戻すことが難しい段階に入っていることも少なくありません。
実際、糖尿病網膜症は、働き盛り世代の視力低下の原因の第3位です。
この記事では、なぜ糖尿病が眼に影響するのか、そしてまだ見えている今、何をすればよいのかを、わかりやすく解説します。
参照:『Prevalence and causes of low vision and blindness in a Japanese adult population: the Tajimi Study』(Ophthalmology)

栗原 大智

監修医師
栗原 大智(医師)

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2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。

糖尿病で生じる目の合併症

糖尿病で生じる目の合併症

糖尿病とはどのような病気ですか?

糖尿病は、高血糖が持続する病気です。
血糖値が持続的に高いことで血管が徐々に痛み、身体のさまざまな場所に障害が出ます。ここで、この障害はある程度完成されて初めて眼が見えない、身体がむくむ、足の感覚がおかしいなどの症状が出ることが特徴です。
糖尿病は、罹患してから数年単位で症状が出ないため、すぐに治療に結び付かないことも多いです。糖尿病を放置すると、高血糖で身体に出る糖尿病網膜症などの障害が、普通より早く起こったり、重症化してしまったりする危険性があります。

糖尿病になるとどのような目の病気にかかりやすくなりますか?

糖尿病では、次のような眼の疾患に罹患しやすくなります。
  • 糖尿病網膜症
  • 糖尿病黄斑浮腫
  • 血管新生緑内障
  • 白内障
これらの疾患が発症し、進行しているかどうかを知るためには定期的な眼科受診が必要です。糖尿病と診断されたら、眼科には定期的に受診するようにしてください

糖尿病網膜症の症状を教えてください

糖尿病網膜症は、かなり進行しないと目立った症状がありません。
症状があったとしても、眼のかすみや、飛蚊症という黒い点々が視界に混ざって見える程度のものです。
失明の一歩手前の段階で始めて、急な視力低下をきたす場合もあります。
このため、自覚症状がない時点で、症状の出現を予防するための検査と、場合によっては治療が必要です。
定期的な眼科受診をこころがけましょう。
参照:『糖尿病網膜症』(日本眼科学会)

糖尿病による白内障の特徴を教えてください

糖尿病による白内障と加齢による白内障はときに同時に起こるために、明確な区別はしにくいとされています。しかし、糖尿病の方に起こる白内障は、糖尿病でない方のものと比べて水晶体というレンズの濁る場所が辺縁から後ろの方に起こる率が高いです。
また、血糖の推移が高いほど、つまり糖尿病が悪いほど、白内障の発症頻度が増します。

糖尿病で糖尿病網膜症や白内障が生じるメカニズム

糖尿病で糖尿病網膜症や白内障が生じるメカニズム

糖尿病網膜症になるメカニズムを教えてください

眼の奥には、見るための細胞(視細胞)が並んでいる網膜という場所があります。この細胞は、細い血管で栄養されています。
血糖値が高いことにより、この血管が傷んだり、詰まって途絶したりすると、視細胞が血液から栄養を受け取れなくなります。このために、徐々に視細胞が死んでいきます。
また、視力を出す力や、色を見分ける力を持った特別な視細胞が並ぶ位置(黄斑)に血流の途絶や減少が起こると、一気に視力が悪くなることがあります。
参照:『糖尿病網膜症,黄斑浮腫の診断』(日本糖尿病学会)

なぜ糖尿病になると白内障が進行しやすくなるのですか?

あくまで説ではありますが、糖尿病による白内障の進行には、代謝の亢進や、AGEsという最終糖化産物の増加、酸化ストレスなどが関与していると考えられています。
参照:『Correlation between adult diabetic cataracts and red blood cell aldose reductase levels』(Invest Ophthalmol Vis Sci)

糖尿病による目の病気の治療法

糖尿病による目の病気の治療法

糖尿病網膜症や白内障を放置するとどうなりますか?

糖尿病網膜症を放置すると、視細胞の死により光を感知できなくなり、失明に至ります。
白内障を放置するとどんどん眼の水晶体が硬くなり、光が眩しく見える症状や、ピントが合いにくい症状がひどくなっていきます。また、手術も初期のまだ水晶体がやわらかい間に行う方が簡単とされます。最終的に、手の動きもわからないレベルに至ります。
白内障自体は手術で改善が望める場合が多いのですが、白内障を放置することで別の眼の疾患が見つかりにくくなり、進行して失明にいたってしまう危険性があります。

糖尿病網膜症はどのように治療しますか?

主にレーザーによる治療を行います。網膜光凝固術といって、眼の正常な網膜を間引くことで、網膜の酸素不足を解消して、新生血管の発生を予防したり、すでに出現してしまった新生血管を減らしたりします。正常な網膜の一部を犠牲にするので、この治療を行っても元の状態まで網膜の状態が改善することはなく、視力は横ばいから低下に至ることが多いです。しかし、レーザーを当てないとすべての細胞を失うリスクがあるため、このように正常な細胞をレーザーで焼いて全体の酸素需要量を減らす方法をとります。網膜光凝固術は早い時期であればかなり有効で、失明予防のために大切な治療です。
レーザー治療で網膜症の進行を予防できなかった場合や、すでに網膜症が進行して網膜剥離や硝子体出血が起こった場合には、硝子体手術といって眼にいくつか穴をあけて手術を行うこともあります。
参照:『糖尿病網膜症』(日本眼科学会)

糖尿病による白内障の治療法を教えてください

血糖値を目標範囲に近づけながら、通常の白内障手術と同じ手術で治療します。
濁った水晶体を手術で取り除き、眼内レンズを挿入する方法が一般的です。
参照:『白内障』(日本眼科学会)

糖尿病を治療することで網膜症や白内障を予防できますか?

糖尿病網膜症について、糖尿病を持っている方では、HbA1cが高いほど糖尿病網膜症は進行しやすく、治療を強化するほど糖尿病網膜症の発症と進行を遅らせることができます。ただし、低血糖が糖尿病網膜症を増悪させるため、低血糖が極力でないような血糖管理が理想です。
血糖値をそれぞれの年齢での目標範囲に近づけながら、高血糖が持続する時間をなるべく短くすることで、血管の痛みを抑えることを目指しましょう。
ただし、網膜症の進行具合は、眼科での網膜の検査を行わないとわからないので、糖尿病と診断されたら必ず眼科にも通院してください
白内障について、大規模研究では、血糖をしっかり管理した患者さんは、白内障で手術が必要になる割合が約25%少ないことが確認されています。
つまり、血糖コントロールは網膜症予防だけでなく、白内障の進行を遅らせる治療でもあります。
参照:『Intensive blood-glucose control with sulphonylureas or insulin compared with conventional treatment and risk of complications in patients with type 2 diabetes(UKPDS 33). UK Prospective Diabetes Study(UKPDS) Group』(Lancet)

編集部まとめ

編集部まとめ

ときに放置してしまいがちな眼の症状ですが、「気のせいだ」と片付けず、眼に違和感を覚えたら早めに眼科を受診してください。
網膜症の進行を、糖尿病の方がご自身で確認するのはほぼ困難です。
失明の危険性もあるため、糖尿病と診断されたらなるべく早く眼科にかかり、以降も継続的な眼科受診を心がけましょう。

この記事の監修医師