戸締まりが気になって外出できない…強迫性障害の不安を悪化させる「NG行動」とは?
公開日:2026/05/04

強迫性障害は、強い不安やこだわりによって儀式的な行為を繰り返す病気です。不安のコントロールに関わる脳の働きが影響していると考えられています。
本記事では、強迫性障害の主な症状と気にしすぎてしまう理由、気にしないための考え方や対処法、医療機関で行われている治療法を解説します。

監修医師:
前田 佳宏(医師)
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・和クリニック 院長
・精神科/心療内科医
・精神保健指定医
「泣きたくなったら壁を押せ」著者
大人と子どもの双方で、トラウマや愛着障害に心理療法的アプローチを用いる医師。これまでのべ3,000人以上の臨床に携わる。
島根大学医学部卒業。その後、東京大学医学部附属病院精神神経科に入局、東京警察病院や国立精神神経医療研究センター等を経て、児童精神科外来を3年間、トラウマ専門外来を2年間担当。著書『泣きたくなったら壁を押せ』(サンマーク出版、2026年)では、心理療法のプロセスを物語として描き、私たちの感情の奥にある“適応の物語”をたどった。その視点をともに探る場として、オンラインコミュニティ「しなここメイト」を主宰。cotree顧問医。産業医。日本小児精神神経学会所属。
・精神科/心療内科医
・精神保健指定医
「泣きたくなったら壁を押せ」著者
大人と子どもの双方で、トラウマや愛着障害に心理療法的アプローチを用いる医師。これまでのべ3,000人以上の臨床に携わる。
島根大学医学部卒業。その後、東京大学医学部附属病院精神神経科に入局、東京警察病院や国立精神神経医療研究センター等を経て、児童精神科外来を3年間、トラウマ専門外来を2年間担当。著書『泣きたくなったら壁を押せ』(サンマーク出版、2026年)では、心理療法のプロセスを物語として描き、私たちの感情の奥にある“適応の物語”をたどった。その視点をともに探る場として、オンラインコミュニティ「しなここメイト」を主宰。cotree顧問医。産業医。日本小児精神神経学会所属。
強迫性障害の主な症状と人が気にしすぎてしまう理由

強迫性障害の主な症状を教えてください
強迫性障害の主な症状は、強迫観念と強迫行為です。
「ドアに鍵をかけたかな?」「ガスの火を消したかな?」と不安になって確認する経験は多くの人にあります。しかし、何度確認しても安心できず、外出先から何度も家に戻る、特定の数字を極端に避ける、左右対称でないと強い不快感を覚えるなど、こだわりが生活に支障をきたすほど強くなる場合、強迫性障害の可能性があります。
強迫観念とは、「手が危険なウイルスで汚染されているのではないか」「運転中に誰かを傷つけたかもしれない」などの考えやイメージが繰り返し浮かび、頭から離れない状態のことです。多くの場合、自分でも「やりすぎだ」「現実的ではない」とわかっていながら、不安が消えないのが特徴です。
強迫行為は、不安を打ち消すために繰り返すことです。長時間の手洗いや入浴、戸締まりや火の元の確認、物を何度も数える、決めた手順をやり直す、心の中で特定の言葉を唱えるなど多岐にわたります。症状は人によって異なり、複数の症状が同時にみられたり、経過の中で内容が変わったりする場合もあります。
「ドアに鍵をかけたかな?」「ガスの火を消したかな?」と不安になって確認する経験は多くの人にあります。しかし、何度確認しても安心できず、外出先から何度も家に戻る、特定の数字を極端に避ける、左右対称でないと強い不快感を覚えるなど、こだわりが生活に支障をきたすほど強くなる場合、強迫性障害の可能性があります。
強迫観念とは、「手が危険なウイルスで汚染されているのではないか」「運転中に誰かを傷つけたかもしれない」などの考えやイメージが繰り返し浮かび、頭から離れない状態のことです。多くの場合、自分でも「やりすぎだ」「現実的ではない」とわかっていながら、不安が消えないのが特徴です。
強迫行為は、不安を打ち消すために繰り返すことです。長時間の手洗いや入浴、戸締まりや火の元の確認、物を何度も数える、決めた手順をやり直す、心の中で特定の言葉を唱えるなど多岐にわたります。症状は人によって異なり、複数の症状が同時にみられたり、経過の中で内容が変わったりする場合もあります。
なぜ強迫性障害になるとさまざまなことが気になってしまうのですか?
強迫性障害では、不安や違和感に対する脳の反応が過敏になっていると考えられています。本来であれば少し気になるで終わる出来事を、強い危険や重大な問題として受け取ります。
例えば、通常であれば一度確認すれば十分な戸締まりも、「仮に閉まっていなかったら大変なことになる」との思考が繰り返されることで、不安が増幅します。また、「机の上の物の位置が左右対称になっていないと不吉なことが起こるのでは」と思い、整えずにはいられなくなることもあります。
例えば、通常であれば一度確認すれば十分な戸締まりも、「仮に閉まっていなかったら大変なことになる」との思考が繰り返されることで、不安が増幅します。また、「机の上の物の位置が左右対称になっていないと不吉なことが起こるのでは」と思い、整えずにはいられなくなることもあります。
気にしないようにしても気になってしまう理由を教えてください
気にしないようにしようと思っても、頭から離れないのが強迫性障害の特徴です。不安を無理に抑え込もうとすると、逆に思考から抜け出せなくなります。
さらに、強迫行為を行うと一時的に不安が和らぐため、確認すれば安心できることを認識し、やめにくくなります。
本人は無意味で過剰だと理解していても、不安の強さが勝つため、繰り返さずにはいられません。日常生活に支障が出ている場合には、医療機関での治療が必要です。
参照:『松永寿人先生に「強迫性障害」を訊く』(日本精神神経学会)
さらに、強迫行為を行うと一時的に不安が和らぐため、確認すれば安心できることを認識し、やめにくくなります。
本人は無意味で過剰だと理解していても、不安の強さが勝つため、繰り返さずにはいられません。日常生活に支障が出ている場合には、医療機関での治療が必要です。
参照:『松永寿人先生に「強迫性障害」を訊く』(日本精神神経学会)
強迫性障害|気にしない方法

戸締まりや電源オフなどを気にしないようにするにはどうすればよいですか?
大切なのは、不安をゼロにしようとしないことです。戸締まりや電源の確認は、本来は安全のための行動です。しかし、何度確認しても安心できず、外出できないほど繰り返してしまう場合は、不安そのものに振り回されている状態です。
気にしないようにするために、確認しないことよりも確認を増やさないことを意識しましょう。例えば、確認は1回までと決める、声に出して「鍵を閉めた」と確認し、それ以上は戻らない、写真を撮っておき、見返すのは1回だけにするなどの方法があります。
気にしないようにするために、確認しないことよりも確認を増やさないことを意識しましょう。例えば、確認は1回までと決める、声に出して「鍵を閉めた」と確認し、それ以上は戻らない、写真を撮っておき、見返すのは1回だけにするなどの方法があります。
念入りすぎる手洗いや洗髪などの洗浄行為を止める方法を教えてください
過剰な手洗いや洗浄行為も、確認行為と同様に不安を一時的に和らげる効果があります。そのため、繰り返すほど習慣化し、やめにくくなります。
治療では、いきなり完全にやめるのではなく、回数や時間を少しずつ減らすなど、段階的な目標を立てて取り組みます。例えば、今日に限り洗浄行為を1回だけ少なくします。
治療では、いきなり完全にやめるのではなく、回数や時間を少しずつ減らすなど、段階的な目標を立てて取り組みます。例えば、今日に限り洗浄行為を1回だけ少なくします。
誰かを傷つけたかもしれないといった不安を感じないようにすることはできますか?
「運転中に誰かをひいてしまったのではないか」「誰かに危害を加えたのではないか」などの不安は、強迫性障害でよくみられる症状です。
不安を完全に消そうとすると、かえって思考が強まりやすくなります。治療では、不安があっても確認しない、保証を求めないなどの練習を重ね、不安と距離を取る方法を身につけます。
不安を完全に消そうとすると、かえって思考が強まりやすくなります。治療では、不安があっても確認しない、保証を求めないなどの練習を重ね、不安と距離を取る方法を身につけます。
ルーティン行動を止める方法を教えてください
決まった手順でないと不安になる、同じ順番でないとやり直してしまうなどのルーティン行動も、強迫症状の1つです。
治療では、逃げない・繰り返さない姿勢を身につけることが目標です。いきなり完全にやめるのではなく、順番を少し変えてみる、やり直しを1回減らすなど、小さな挑戦から始めます。
参照:『松永寿人先生に「強迫性障害」を訊く』(日本精神神経学会)
治療では、逃げない・繰り返さない姿勢を身につけることが目標です。いきなり完全にやめるのではなく、順番を少し変えてみる、やり直しを1回減らすなど、小さな挑戦から始めます。
参照:『松永寿人先生に「強迫性障害」を訊く』(日本精神神経学会)
強迫性障害の強迫観念と強迫行為に対する治療法

強迫観念や強迫行為は病院での治療で和らぎますか?
強迫観念や強迫行為は、病院での治療によって軽減が期待できるとされています。強迫症は、本人の意志の弱さではなく、脳の働きや不安の制御機能が関係している病気と考えられています。そのため、専門的な治療を受けることが重要です。
主な治療は、薬物療法と認知行動療法(CBT)の併用です。多くの場合、薬物療法で強い不安や抑うつ症状を和らげ、心身の疲労を軽減したうえで、認知行動療法に取り組みやすい状態を整えます。治療の継続によって、不安の強さや強迫行為の頻度が徐々に減っていくことが期待されます。
また、病気や治療内容の理解を深める心理教育も重要です。本人や家族の病気の仕組みへの理解によって、過度な自責や誤解を減らし、治療効果が現れやすい状態を整えることができます。
主な治療は、薬物療法と認知行動療法(CBT)の併用です。多くの場合、薬物療法で強い不安や抑うつ症状を和らげ、心身の疲労を軽減したうえで、認知行動療法に取り組みやすい状態を整えます。治療の継続によって、不安の強さや強迫行為の頻度が徐々に減っていくことが期待されます。
また、病気や治療内容の理解を深める心理教育も重要です。本人や家族の病気の仕組みへの理解によって、過度な自責や誤解を減らし、治療効果が現れやすい状態を整えることができます。
病院では具体的にどのような治療を行うのか教えてください
病院で行われる主な治療は、薬物療法と認知行動療法(CBT)です。
薬物療法では、主にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が用いられます。代表的なものはフルボキサミンやパロキセチンなどで、いずれもセロトニンの働きを調整し、不安や強迫症状の軽減を目指す薬です。
通常は少量から開始し、副作用や効果を見ながら数ヶ月かけて調整します。吐き気や一時的な不安の増強などがみられることもありますが、多くは経過とともに落ち着きます。
効果が十分でない場合には、別のSSRIへの変更や、少量の抗精神病薬を追加する方法が検討されることもあります。治療方針は、症状の特徴や併存症、身体状態などを踏まえて医師が総合的に判断します。
認知行動療法では、曝露反応妨害法を中心に行います。不安を引き起こす対象や状況を強さの順に並べた不安階層表を作成し、不安の弱いものから段階的に取り組みます。
不安を引き起こす状況にあえて直面し(曝露)、これまで行っていた強迫行為を行わずに不安が下がるのを待つ(反応妨害)練習を繰り返します。
参照:『松永寿人先生に「強迫性障害」を訊く』(日本精神神経学会)
薬物療法では、主にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が用いられます。代表的なものはフルボキサミンやパロキセチンなどで、いずれもセロトニンの働きを調整し、不安や強迫症状の軽減を目指す薬です。
通常は少量から開始し、副作用や効果を見ながら数ヶ月かけて調整します。吐き気や一時的な不安の増強などがみられることもありますが、多くは経過とともに落ち着きます。
効果が十分でない場合には、別のSSRIへの変更や、少量の抗精神病薬を追加する方法が検討されることもあります。治療方針は、症状の特徴や併存症、身体状態などを踏まえて医師が総合的に判断します。
認知行動療法では、曝露反応妨害法を中心に行います。不安を引き起こす対象や状況を強さの順に並べた不安階層表を作成し、不安の弱いものから段階的に取り組みます。
不安を引き起こす状況にあえて直面し(曝露)、これまで行っていた強迫行為を行わずに不安が下がるのを待つ(反応妨害)練習を繰り返します。
参照:『松永寿人先生に「強迫性障害」を訊く』(日本精神神経学会)
編集部まとめ

強迫性障害の症状は、「気にしないようにする」と意識するだけで消えるものではありません。不安を抑え込もうとするほど、かえって思考や行動が強まることもあります。
大切なのは、不安そのものを完全に消そうとするのではなく、不安があっても行動を変えられる力を少しずつ身につけていくことです。そのために、曝露反応妨害法を中心とした認知行動療法や、必要に応じた薬物療法が行われます。
また、症状を性格の問題ととらえて自分を責める必要はありません。適切な治療と継続的な取り組みによって、症状の軽減や生活の安定が期待できるとされています。
1人で抱え込まず、早めに医療機関を受診しましょう。



