目次 -INDEX-

  1. Medical DOC TOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「大人の女性」が「おたふく風邪」になるとどんな合併症や後遺症が残る可能性がある?

「大人の女性」が「おたふく風邪」になるとどんな合併症や後遺症が残る可能性がある?

 公開日:2026/04/21
「大人の女性」が「おたふく風邪」になるとどんな合併症や後遺症が残る可能性がある?

おたふく風邪(流行性耳下腺炎)は子どもの病気と思われがちですが、大人の女性が感染すると高い発熱や強い倦怠感など、症状が重くなる傾向があります。まれに髄膜炎や難聴、卵巣炎などの合併症を引き起こすこともあります。本記事は、大人の女性がおたふく風邪にかかった場合のリスクや後遺症、発症時の適切な対処法を解説します。

伊藤 規絵

監修医師
伊藤 規絵(医師)

プロフィールをもっと見る
旭川医科大学医学部卒業。その後、札幌医科大学附属病院、市立室蘭総合病院、市立釧路総合病院、市立芦別病院などで研鑽を積む。2007年札幌医科大学大学院医学研究科卒業。現在は札幌西円山病院神経内科総合医療センターに勤務。2023年Medica出版社から「ねころんで読める歩行障害」を上梓。2024年4月から、FMラジオ番組で「ドクター伊藤の健康百彩」のパーソナリティーを務める。またYou tube番組でも脳神経内科や医療・介護に関してわかりやすい発信を行っている。診療科目は神経内科(脳神経内科)、老年内科、皮膚科、一般内科。医学博士。日本神経学会認定専門医・指導医、日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医、日本老年医学会専門医・指導医・評議員、国際頭痛学会(Headache master)、A型ボツリヌス毒素製剤ユーザ、北海道難病指定医、身体障害者福祉法指定医。

大人のおたふく風邪|感染者数と感染経路

大人のおたふく風邪|感染者数と感染経路

大人もおたふく風邪になることはありますか?

大人でもおたふく風邪にかかることがあります。予防接種の普及により子どもの発症は減っていますが、ワクチンを受けていない方や免疫が十分でない大人は感染のリスクがあります。特に保育園や学校などで子どもと接する機会が少なくない職業の方、家庭内で子どもが感染した場合には、大人にも感染があります。ある公的機関の感染症発生動向調査によると、成人の患者さん報告も一定数みられ、決して珍しくありません。
参照:
『流行性耳下腺炎』(厚生労働省)
『感染症対策のページ 』(空知総合振興局保健環境部滝川地域保健室)

男女別、年齢別におたふく風邪の感染者数を教えてください

報告数は、年齢別では幼児〜学童期に集中しており、特に3〜7歳で全体の70%程度を占めるとされています。性別では男女ともにかかりますが、小児ではやや男児に少なくないとされる報告があり、思春期以降では男性で睾丸炎(こうがんえん)、女性で卵巣炎(らんそうえん)など性別特有の合併症が問題です。国立感染症研究所の感染症発生動向調査では、3〜6歳で60%程度を占める一方、10代の割合が近年相対的に増加しており、年長児や成人の患者さんも一定数報告されています。
参照:『感染症発生動向調査からみる1983年~2024年の我が国の流行性耳下腺炎の状況』(国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト)

大人のおたふく風邪はどのような経路で感染するのですか?

大人のおたふく風邪も、基本的な感染経路は子どもと同じで、主に飛沫感染接触感染の2つがあります。感染している方の咳やくしゃみ、会話などによってムンプスウイルスを含む飛沫が周囲に飛び散り、それを近くにいる方が吸い込むことで感染するのが飛沫感染です。また、ウイルスが付着した手でお口や鼻、目の周りを触ったり、タオル・食器・コップなどの共用でうつるのが接触感染です。職場や通勤電車、家庭内など、ヒトとの距離が近くなりやすい環境では、大人同士、あるいは子どもから大人へ感染するリスクが高まります。
参照:『流行性耳下腺炎』(神奈川県衛生研究所)

大人のおたふく風邪の症状と合併症・後遺症のリスク

大人のおたふく風邪の症状と合併症・後遺症のリスク

大人のおたふく風邪はどのような症状がみられますか?

大人のおたふく風邪も、基本的な症状は子どもの場合と同じですが、より強く出る傾向があります。まず、38〜39度前後の発熱、寒気、頭痛、全身のだるさ、食欲不振など、かぜに似た全身症状がみられます。その後、1〜2日ほどしてから、耳の前から顎のラインにかけてある耳下腺が腫れ、押すと強い痛みを感じるのが特徴です。腫れは片側だけのこともあれば、両側に広がることもあります。
参照:『感染症発生動向調査からみる1983年~2024年の我が国の流行性耳下腺炎の状況』(国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト)

大人のおたふく風邪は子どもよりも重症化しやすいですか?

重症化しやすいと考えられています。なぜならば、同じムンプスウイルスでも全身のいろいろな臓器に合併症を起こしやすくなる時期にあたるためと考えられています。ムンプスウイルスは、耳下腺だけでなく、髄膜(ずいまく)・脳、内耳(ないじ)、精巣、卵巣、膵臓(すいぞう)などにも感染しやすい性質があります。思春期以降では、こうした臓器が成熟している分、炎症が強く出やすく、精巣炎・卵巣炎、無菌性髄膜炎、膵炎、難聴などの合併症の頻度が高いです。
参照:
『流行性耳下腺炎(おたふくかぜ、ムンプス)(詳細版)』(国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト)
『流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)』(さいたま市)

大人のおたふく風邪でみられる合併症や後遺症を教えてください

主な合併症は、脳や髄膜に炎症が起こる無菌性髄膜炎(むきんせいずいまくえん)脳炎(のうえん)、膵臓に炎症が起こる膵炎(すいえん)などが知られています。また、思春期以降では、男性で20〜30%程度に睾丸の痛みや腫れ(睾丸炎)、女性では7%程度に下腹部痛や発熱を伴う卵巣炎などが合併する場合もあります。さらに大人では、まれに難聴などの後遺症が残ることもあり、日常生活に長期的な影響が出るケースがあります。
参照:『流行性耳下腺炎(おたふくかぜ、ムンプス)(詳細版)』(国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト)

大人の女性が注意すべきおたふく風邪の合併症や後遺症はありますか?

大人の女性では、男性とは異なる合併症・後遺症に注意が必要です。おたふく風邪では卵巣に炎症が起こる卵巣炎が知られており、思春期以降の女性の7%程度でみられるとされています。下腹部の強い痛みや発熱、嘔吐などが出ることがあり、症状が強い場合は婦人科での評価がすすめられます。一部では卵巣炎が将来の不妊や早期閉経のリスクと関連すると指摘されていますが、多くは片側のみの炎症で、実際に不妊につながるケースはまれとされています。また、男女共通の重要な合併症として、回復しても聞こえが戻らないムンプス難聴があり、頻度は高くないものの、一度起こると永続的な後遺症になりえる点に留意してください。
参照:『流行性耳下腺炎(おたふくかぜ、ムンプス)(詳細版)』(国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト)

大人の女性がおたふく風邪になったときの対処法

大人の女性がおたふく風邪になったときの対処法

おたふく風邪は病院での治療が必要な病気ですか?

多くの場合、自然に治るウイルス感染症ですが、病院に行かなくてよい病気ではありません。発熱や耳下腺の腫れに対して有効な特効薬はなく、基本は安静・水分・痛み止めなどの対症療法ですが、合併症が起きていないかを確認するために医師の診察を受けることが重要です。特に大人は、無菌性髄膜炎や卵巣炎、膵炎、難聴などの合併症リスクが子どもより高いとされており、強い頭痛や繰り返す嘔吐、意識がぼんやりする、激しい腹痛や下腹部痛、耳が聞こえにくいなどの症状があれば、すぐに受診が必要です。また、妊娠の可能性がある場合や基礎疾患がある場合も、早めに医療機関で相談したほうが安心感が高まります。

どのような症状が現れたら受診を検討すべきですか?

38〜40度前後の高熱が続き、解熱剤を使ってもつらい状態が数日以上続くときや耳の下〜頬の腫れや痛みが強く、お口が開けづらい食事や水分がほとんどとれないとき、強い頭痛首のこわばり光がまぶしい繰り返す吐き気・嘔吐など、髄膜炎を疑う症状があるとき、片側の下腹部がズキズキと強く痛む、歩くと響くなど、卵巣炎が心配されるとき、片耳または両耳の聞こえが急に悪くなった、耳鳴りが続くなど、聴こえの異常に気付いたときです。これらは合併症や後遺症につながるサインの可能性があるため、様子を見るよりも速やかな受診が必要です。

おたふく風邪を発症したときの自宅での過ごし方を教えてください

基本は自宅で安静にして、症状を和らげながら回復を待ちます。まずは無理をせず、できるだけ横になって安静に過ごします。仕事や家事は可能な範囲で休み、睡眠時間も多めにとります。耳の下や頬の腫れ・痛みがつらいときは、濡れタオルや保冷剤をタオルで包んで軽く冷やすと、痛みが和らぎやすいです。食事は、噛むと痛みが出やすいため、おかゆ・うどん・スープ・ヨーグルト・プリン・ゼリーなど、やわらかくて飲み込みやすいものを少量ずつ取ります。水分はこまめに補給し、スポーツドリンクや経口補水液、薄めのジュース、スープなど飲みやすいものを選びます。発熱や痛みが強い場合は、医師から指示された解熱鎮痛薬を正しく使用し、自己判断で市販薬を飲み続けないようにします。

編集部まとめ

編集部まとめ

おたふく風邪は、大人の女性がかかると高熱や強い痛みが出やすく、卵巣炎や髄膜炎、難聴などの合併症・後遺症のリスクが高まります。早めの受診と自宅での安静、痛みや発熱への対症療法、脱水を防ぐための水分補給が重要です。妊娠の可能性がある場合や、強い頭痛・下腹部痛・聞こえの異常が出たときは、速やかに医療機関に相談してください。

この記事の監修医師