突然、周囲がぐるぐる回るような激しいめまいに襲われたり、片耳の聞こえが急に悪くなったりしたことはありませんか?それはメニエール病のサインかもしれません。メニエール病は、耳の奥(内耳)のリンパ液が増えてむくむことで起こる病気で、繰り返し現れる激しい回転性めまいと耳の難聴、耳鳴り、耳の詰まり感が特徴です。疲労やストレスと見過ごされがちですが、放置すると聴力が徐々に低下して日常生活に支障をきたすこともあります。本記事では、メニエール病の具体的な症状や発作時の特徴、早めに受診すべきポイントについて解説します。
監修医師:
小島 敬史(国立病院機構 栃木医療センター)
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【経歴】
経歴
2006年3月 慶應義塾大学医学部医学科卒
2008年3月 佐野厚生総合病院 初期臨床研修修了
2008年4月 慶應義塾大学耳鼻咽喉科学教室所属
2013年9月 慶應義塾大学病院 助教として勤務
2018年8月 米国 ノースウェスタン大学耳鼻咽喉科で遺伝性難聴の基礎研究に従事
2021年5月〜 国立病院機構 栃木医療センター 耳鼻咽喉科医長 (現職)
【資格等】
日本耳鼻咽喉科学会専門医・指導医、日本耳科学会認定医、補聴器相談医、補聴器適合判定医
所属学会:日本耳鼻咽喉科学会、日本耳科学会、日本聴覚医学会、耳鼻咽喉科臨床学会
メニエール病の主な症状

メニエール病ではどのような症状が現れますか?
メニエール病の代表的な症状は、
ぐるぐると回る激しいめまい(回転性めまい)と、
片耳の難聴や耳鳴り、耳が詰まった感じ(耳閉感)を伴う発作を繰り返すことです。
発作の際には耳が聞こえにくくなり、耳鳴りが生じることが多く、周囲の音がこもって聞こえるようになります。通常、症状は片方の耳に現れますが、病状が進むと両耳に及ぶこともあります。発作の前兆として耳閉感がしたり、普段と違う耳鳴りが起こったりすることもあります。また、強いめまいにより吐き気があることもあり、ひどい場合は嘔吐に至ることもあります。これらの症状が繰り返し起こるのがメニエール病の特徴です。
回転性のめまいはどのような状態ですか?
回転性めまいとは、自分や周囲の景色がぐるぐると
回転して見えるように感じる強いめまいのことです。例えば、天井が自分の周りを回っているように見えたり、身体がくるくる回転してしまったりする感覚に襲われます。症状が強いと立っていられなくなり、座り込んだり横になったりせざるをえなくなるほどです。
頭を動かすとさらにめまいが悪化するため、発作中はできるだけ動かずに目を閉じ、楽な姿勢でじっとする必要があります。このような回転性めまいは突然起こり、患者さんに強い不安と恐怖を与えます。日常的に経験するふらつきとは異なり、周囲が激しく回転する感覚が特徴です。
耳鳴りや難聴の進行について教えてください
メニエール病による難聴や耳鳴りは
段階的に進行することがあります。初期の頃は主に
低い音が聞こえにくくなる難聴がみられますが、発作を繰り返すうちに中音域や高音域の聞こえも悪くなる傾向があります。発作のたびに一時的に聴力が落ち、発作がおさまるとある程度回復するという
聴力の変動がみられます。
しかし、再発を重ねるごとに、徐々に全体の聴力低下が進んでしまうこともあります。耳鳴りについても、初期には発作時に一時的に起こる程度ですが、病状が進むにつれて耳鳴りが常時鳴り続けるようになることもあります。つまり、最初は発作のときだけ感じていた耳鳴りや難聴が、治療せずに放置すると慢性的な症状として残ってしまう可能性があるのです。
めまいが起きていないときにも症状が続くことはありますか?
初期のメニエール病では、激しいめまい発作が治まれば症状が落ち着くことが多いです。発作と発作の間の期間には、ほぼ普段どおり過ごせる場合もあります。ただし、耳鳴りや軽い耳の詰まり感が発作後もしばらく残ることは珍しくありません。また、病状が進行すると、めまい発作がないときでも難聴や耳鳴りが持続するようになります。さらに、平衡感覚を司る内耳への影響から、発作がないときでも軽いふらつきやバランスのとりにくさを感じることもあります。ただし、意識が朦朧としたり手足の麻痺が出たりといった、脳などの中枢神経が原因の症状はメニエール病では起こりません。こうした症状が出た場合はメニエール病以外の可能性を考える必要があります。
メニエール病発作時の症状の特徴

発作はどのくらいの時間続きますか?
メニエール病のめまい発作の持続時間は方によって差がありますが、一般的には数十分から数時間程度続くことが多いです。なかには半日、一日中めまいが続くこともあります。数秒〜数分で治まる良性発作性頭位めまい症とは異なり、メニエール病では発作が長めなのが特徴です。発作の頻度にもよりますが、長時間のめまい発作が繰り返し起こるとその間の生活に大きな支障をきたすため、適切な治療で発作時間を短く抑えることが重要です。
発作中に吐き気や嘔吐が起きることはありますか?
はい、強い吐き気や嘔吐を伴うことがしばしばあります。激しい回転性めまいが起こると、吐き気の症状が現れ、実際に嘔吐してしまう場合もあります。発作中は冷や汗が出たり、動悸、顔面の青白さなど症状が現れることもあります。嘔吐が続くと水分が失われ脱水症状になる危険があるため、できる範囲で水分補給を行い、吐き気止めの薬があれば内服してください。それでも水も飲めないほど吐いてしまう場合には、点滴などによる治療が必要です。
発作の頻度には個人差がありますか?
はい、発作の頻度は人によって大きく異なります。毎週のようにめまい発作を起こす方もいれば、数ヶ月、あるいは数年に1回程度しか発作が起こらない方もいます。ストレスや過労が引き金となって頻繁に発作が起こることがある一方で、一度発症してもしばらく発作が再発しないこともあります。発作の間隔が不規則なのもメニエール病の特徴で、天候や気圧の変化、睡眠不足などで突然発作が誘発されることがあります。つまり、何かをすれば必ず発作が起こるといった決まったパターンはないため、メニエール病の発作の頻度は人によって大きく異なります。
症状が疑われるときの対処と受診の目安

どのような症状が出たら医療機関を受診したほうがよいですか?
繰り返す回転性めまいに加えて耳の聞こえづらさや耳鳴りなどの症状が見られたら、できるだけ早めに耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。特に、めまいと同時に難聴が起きたり、耳鳴りや耳の詰まりを感じたりする場合はメニエール病が疑われます。目安として、1晩寝て、起きても治らないような場合、「そのうち治るだろう」と様子を見ずに医師に相談してください。耳の病気によるめまいは、早期に診断・治療することで聴力の温存や発作予防につながる場合があります。また、突然の片耳の難聴、継続する耳鳴り、耳が詰まった感じが続くといった症状だけでも現れた場合も要注意です。メニエール病だけでなく突発性難聴としても起こるような症状であり、発症早期に受診しないと治療機会を逃す可能性があります。
症状が軽いときでも受診すべき理由を教えてください
症状が軽いうちに受診することには大きなメリットがあります。メニエール病は初期には症状が軽く「疲れてふらついただけかな」などと思いがちですが、この段階で適切な治療や生活改善を始めればその後の悪化を防ぎやすいからです。具体的には、内服薬で発作を抑えたり、食事の減塩指導やストレス管理など生活習慣の改善によって発作の頻度を減らしたりすることが期待できます。逆に、「たいしたことない」と放置して発作を繰り返すうちに、聴力の低下がもとに戻せない状態まで進行してしまう可能性があります。メニエール病は根本的な完治が難しい病気ですが、初期からきちんと管理することで、発作と上手に付き合うことが可能です。また、軽い症状でも実は別の病気の可能性もあります。医師の診断を仰ぐことで正しい対処法がわかり、安心にもつながります。以上の理由から、症状が軽いうちでも早めに医療機関を受診しておくことが大切です。
救急受診が必要になるケースはありますか?
メニエール病そのものは命に関わる疾患ではなく、多くの場合は外来での対応が可能です。しかし、次のような例では
緊急対応が必要です。まず、めまいに加えて
手足のしびれや脱力、ろれつが回らない、激しい頭痛、意識がもうろうとするといった症状がある場合です。このような症状はメニエール病では起こらず、脳梗塞や脳出血など中枢神経の異常が疑われます。
すぐに救急車を呼んで脳神経外科などで診察を受けてください。次に、メニエール病の発作自体がとても激しく嘔吐が止まらない場合です。水分すら摂れず脱水になるおそれがあるため、救急外来で点滴によるめまい止めや吐き気止めの投与を受けることが望ましいです。特に、初めて経験する激しいめまい発作では、自分ではメニエール病と断定できないため、症状が重いと感じたら無理をせず救急受診してください。また、発作中に転倒などの二次被害を防ぐためにも、必要に応じて周囲の方に助けを求め迅速に受診することが大切です。
編集部まとめ

メニエール病は、激しいめまい発作と耳の症状を繰り返す病気です。メニエール病自体が命に関わるものではありませんが、放置すると聴力の低下が進み、耳鳴りや平衡感覚の乱れが慢性化してしまう可能性があります。早期に耳鼻咽喉科を受診することで、薬物療法や生活習慣の見直しによって発作の頻度を抑えたり、聴力へのダメージを最小限にできたりする場合があります。メニエール病そのものは完治が難しくても、多くの患者さんは治療と工夫で発作と上手に付き合いながら生活されています。「最近めまいと耳の違和感を繰り返している」という方は、ぜひ早めに医療機関で相談し、適切な治療を受けてください。