インフルエンザにかかると、発熱や関節の痛みだけでなく、強い頭痛に悩まされる方も少なくありません。この頭痛は、単に熱が出ているために起こるものではなく、ウイルスに対する免疫反応が関わっています。身体のなかで炎症が生じると、サイトカインと呼ばれる物質が放出され、脳や神経に影響することで頭痛やだるさが現れます。また、熱が下がった後も頭痛が続き、不安を感じる方もいます。
この記事では、インフルエンザによる頭痛が起こる仕組み、日常生活での対処の考え方、受診を検討する目安となる症状を解説します。
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【出身大学】
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科
インフルエンザと頭痛の関係

インフルエンザで頭痛が起こる原因を教えてください
インフルエンザによる頭痛は、発熱そのものよりも、ウイルスに対する免疫反応が関係しています。感染すると、身体のなかでサイトカインと呼ばれる炎症に関わる物質が放出されます。これらの物質は脳や神経にも作用し、痛みを感じやすい状態を引き起こします。その結果、頭全体が重く感じたり、締めつけられるような頭痛が現れたりします。また、発熱に伴う血管の拡張や、脱水による血流の変化も頭痛を強める要因です。筋肉痛や全身のだるさと同時に頭痛が出る理由は、こうした免疫反応が全身に及んでいるためです。
熱が下がっても頭痛が続くのはなぜですか?
解熱後も頭痛が続く場合、
身体のなかで炎症反応が完全には落ち着いていないことが考えられます。サイトカインは発熱が治まった後もしばらく分泌が続くことがあり、その影響で頭痛や倦怠感が残ることがあります。
また、発熱中に水分摂取が不足していると、脱水の影響で頭痛が長引くこともあります。鼻づまりや副鼻腔の炎症が続いている場合には、頭の前や眼の奥に違和感や痛みを感じることもあります。
インフルエンザの頭痛と風邪の頭痛の違いはありますか?
風邪による頭痛は、鼻や喉の炎症に伴って起こることが多く、軽い痛みで経過する場合が多い傾向があります。一方、インフルエンザでは全身の免疫反応が強く現れるため、頭痛も強く、全身の痛みや発熱を伴うことがあります。動くことがつらいほどの頭痛や安静にしていても続く痛みがみられる場合には、インフルエンザによる影響を考えます。
頭痛が強いときの対処法

インフルエンザの頭痛に市販薬は使えますか?
インフルエンザによる頭痛には、
アセトアミノフェンを成分とする解熱鎮痛薬を選択します。アセトアミノフェンは、発熱や頭痛を和らげる作用があり、インフルエンザでも使用されます。一方で、
アスピリンや
メフェナム酸などの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を含む薬は、年齢や体調によって使用を控える判断が行われます。特に小児では、アスピリンの使用が
インフルエンザ脳炎・脳症と関連するため、使用しません。総合感冒薬には複数の成分が含まれていることがあるため、購入前に成分表示を確認し、判断に迷う場合は薬剤師へ相談してください。
参照:『インフルエンザ脳症はどうしたら予防できますか?』(日本小児神経学会)
頭痛の痛みを和らげるためにできることを教えてください
頭痛があるときは、静かな環境で身体を休めることが基本です。発熱や発汗によって水分が失われやすいため、少量ずつでも水分を補給することが痛みの軽減につながります。光や音の刺激で頭痛が強まる方もいるため、部屋を暗めにして眼を閉じて過ごす方法も役立ちます。首や額を冷やすことで楽になる場合もありますが、寒気があるときは無理に冷やさず、身体の状態に合わせて調整しましょう。
頭痛を悪化させてしまう行動はありますか?
頭痛がある状態で無理に仕事や家事を続けると、症状が長引く原因になります。また、水分摂取が少ないまま過ごすと、脱水の影響で頭痛が強まりやすくなります。長時間のスマートフォンやパソコンの使用は、眼や神経への刺激となり、痛みを増幅させます。喫煙や飲酒も回復を妨げるため控えます。症状がある間は刺激を減らし、休養を優先するようにしましょう。
注意が必要な頭痛とは

頭痛が強くてつらいのは重症化の可能性がありますか?
インフルエンザに伴う頭痛は、発熱や全身の炎症により強く感じることがありますが、時間の経過とともに和らぐことが多いです。一方で、これまで経験したことのない強い痛みが続く場合や、日ごとに悪化していく場合には、通常の経過とは異なる可能性を考えます。頭痛に加えて、意識がぼんやりする、受け答えがはっきりしない、繰り返し吐くといった症状がみられる場合は、重症化を想定した評価が必要です。
インフルエンザ脳症ではどのような症状が出ますか?
インフルエンザ脳症は、強い頭痛に加えて、元気がなくなる、呼びかけへの反応が鈍くなる、受け答えがかみ合わなくなるなど
意識や判断力の変化がみられます。普段はできている受け答えや行動がうまくできなくなるなど日常の様子と比べて明らかな違いがみられることが、気付きの手がかりになります。
また、けいれんや異常な興奮が起こることがあり、意識がはっきりしない状態が続く場合もあります。これらの症状は短い時間のなかで進行することがあり、症状の出方が急に変わる点も特徴です。発熱の高さとは関係なく現れるため、熱がそれほど高くない場合でも油断はできません。特に小児は、いつもと違う様子がないかを意識して観察するようにしましょう。
インフルエンザ脳症について教えてください
インフルエンザ脳症は、主に小児でみられる合併症で、ウイルスそのものよりも、免疫反応に伴う炎症物質が脳に影響することで発症します。発症は急激で、短時間のうちに状態が変化することがあります。初期には頭痛や嘔吐、活気の低下といった症状がみられ、その後に意識障害やけいれんへ進むことがあります。早い段階で医療機関につながることが、経過を左右します。
救急を受診したほうがよいタイミングを教えてください
会話がかみ合わない、呼びかけへの反応が弱い、急にぼんやりして受け答えが遅くなる、けいれんが起こるなど普段の様子と明らかに異なる変化がみられる場合は、救急受診を考えます。これらは、頭痛の強さそのものよりも、意識や行動に変化が生じている点が重要な判断材料です。また、強い頭痛に加えて繰り返す嘔吐が続く場合や、水分をほとんど取れず横になったまま起き上がれない状態が続く場合も病院を受診しましょう。時間の経過とともに症状が悪化していると感じるときや普段と違う変化が重なっている場合には、早めに医療機関へ相談することが大切です。
編集部まとめ

インフルエンザによる頭痛は、発熱そのものよりも、ウイルスに対する免疫反応によって生じる炎症が関係しています。サイトカインと呼ばれる物質が脳や神経に影響することで、頭全体が重く感じたり、強い痛みが続いたりします。そのため、頭痛が強く出ること自体は、インフルエンザの経過のなかで珍しいことではありません。
多くの場合頭痛だけであれば、時間の経過とともに和らぎ回復に向かいます。一方で、頭痛に加えて意識の変化や受け答えの異常、繰り返す嘔吐、けいれんなどがみられる場合には、通常の経過とは異なる可能性を考えます。特に小児は、インフルエンザ脳症などの合併症がまれに起こるため、普段と違う様子がないかを観察することが重要です。痛みの強さだけで判断せず、症状の組み合わせや変化を見極めながら、適切なタイミングで医療機関へ相談することが大切です。