「胃潰瘍の初期症状」はご存知ですか?原因についても解説!【医師監修】

胃の痛みや不快感が続くと、「胃が荒れているだけ」と思ってしまう方も多いかもしれません。しかし、その症状の裏に胃潰瘍が隠れていることがあります。胃潰瘍は、胃の粘膜が胃酸や消化酵素によって深く傷つき、潰れたような状態になる病気です。放置すると出血や穿孔(胃に穴があくこと)など、命に関わる合併症を引き起こすおそれもあります。
ピロリ菌感染や鎮痛薬(NSAIDs)の長期使用が主な原因として知られており、生活習慣の乱れやストレスが発症や悪化の引き金になることもあります。初期の段階では症状が軽く、胃もたれや胸やけなどと区別しにくいため、早期発見が難しいのが特徴です。
この記事では、胃潰瘍の仕組みや原因、初期症状と進行時のサイン、さらに診断に至るまでの検査の流れについて解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)
目次 -INDEX-
胃潰瘍の概要

胃潰瘍とはどのような病気ですか?
胃潰瘍は、浅い傷にとどまるびらん性胃炎よりも一段階重い病態です。症状の程度や範囲によっては、食事のたびに強い痛みを感じるほか、出血を伴って貧血や吐血を起こすこともあります。さらに進行すると、胃の壁が貫通し、腹膜炎を引き起こす穿孔へ進展する危険性もあります。
胃潰瘍の原因を教えてください
ピロリ菌は胃の粘液層にすみつき、炎症を起こして粘膜の防御機能を低下させます。特に長期間感染が続くと、潰瘍を繰り返したり、胃がんのリスクが高まったりすることもあります。
また、関節痛や頭痛などでよく使われるNSAIDs(ロキソプロフェンやイブプロフェンなど)は、痛みを和らげる一方で、胃粘膜を保護する物質の産生を抑えるため、胃酸によるダメージを受けやすくなります。そのほか、喫煙、過度な飲酒、強い精神的ストレス、睡眠不足、不規則な食生活も悪化要因です。
つまり、胃潰瘍は攻撃因子(胃酸・ピロリ菌)と防御因子(粘液・血流・再生能力)のバランスが崩れたときにおこる病気といえます。
胃潰瘍の症状

胃潰瘍の初期症状を教えてください
胃潰瘍の初期症状と似た症状が現れる病気はありますか?
また、心臓の狭心症や胆のうの病気もみぞおちの痛みを感じることがあるため、痛みの部位やタイミングだけでは区別が難しいこともあります。
進行した胃潰瘍の症状を教えてください
さらに、慢性的な潰瘍が瘢痕化すると、胃の出口(幽門部)が狭くなり、食べ物が通過しづらくなる幽門狭窄を引き起こすことがあります。食後の吐き気や大量の嘔吐、体重減少などが続く場合は、重症化している可能性があります。
胃潰瘍が命に関わることはありますか?
胃潰瘍の受診の目安と検査、診断の流れ

どのような症状が現れたら受診すべきですか?
胃潰瘍が疑われるときに行われる検査方法を教えてください
検査は同時に胃粘膜の一部を採取して病理検査を行い、がんとの区別を明確にします。さらに、ピロリ菌の有無を調べるために、尿素呼気試験、抗体検査、便中抗原検査などを行うことがあります。
胃潰瘍と診断されたらどのような治療が行われますか?
ピロリ菌が検出された場合は、除菌療法を行います。抗菌薬と酸分泌抑制薬を組み合わせ、1週間程度で治療します。除菌に成功すれば再発のリスクが減ります。NSAIDsが原因の場合は、薬の中止や変更を検討し、必要に応じて胃粘膜保護薬を併用します。
編集部まとめ

胃潰瘍は、胃酸やピロリ菌、薬の影響などによって胃粘膜が深く傷つく病気です。初期には軽い胃痛や胃もたれなどの症状しかないこともあり、放置すると出血や穿孔など重篤な合併症を引き起こすおそれがあります。診断には内視鏡検査が欠かせず、治療では胃酸の分泌を抑える薬やピロリ菌の除菌が中心です。薬の自己中断や再感染を防ぐためにも、症状が改善しても定期的なフォローが大切です。
再発を防ぐには、禁煙、節酒、食事のとり方や睡眠リズムの見直しが有効です。特に、痛みが繰り返す、黒い便が出る、食後に吐き気がある場合は早めに受診してください。早期に対応すれば、胃潰瘍は回復をめざせる病気です。




