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「糖尿病網膜症」は治療で完治することはできる?治療期間・治療法も解説【医師監修】

 公開日:2026/01/05
「糖尿病網膜症」は治療で完治することはできる?治療期間・治療法も解説【医師監修】

糖尿病網膜症は、糖尿病の三大合併症のひとつです。
「糖尿病と言われたけれど、目の病気についてはよく知らない」「自分も将来、視力に影響が出るのだろうか」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、そんな方のために、糖尿病網膜症の主な治療方法、治療後の経過、そして日常生活で気を付けるべきポイントをわかりやすく解説します。

栗原 大智

監修医師
栗原 大智(医師)

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2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。

糖尿病網膜症の概要

糖尿病網膜症の概要

糖尿病網膜症とはどのような病気ですか?

糖尿病網膜症は、糖尿病を持つ方に起こる目の病気で、網膜(目の奥で光を感じ取る膜)の細い血管が障害されることで発症します。
代表的な症状には、次のようなものがあります。

  • 視力の低下
  • 物がかすんで見える(かすみ目)
  • 視野の一部が暗くなる・欠ける
  • 黒い点や虫のような影が見える(飛蚊症)
  • 突然視界が見えにくくなる、または見えなくなる

初期の段階ではほとんど自覚症状がありませんが、進行すると視力が徐々に低下し、放置すると失明に至ることもある重大な疾患です。

糖尿病網膜症の原因を教えてください

主な原因は、糖尿病による高血糖状態の持続です。血糖値が高い状態が続くと、血管の壁をつくる細胞が傷つき、全身の細い血管がもろくなります。その変化が網膜の血管でも起こると、出血やむくみ(浮腫)を引き起こし、視力が低下していきます。

糖尿病網膜症は、糖尿病の三大合併症(網膜症・腎症・神経障害)のひとつです。

糖尿病網膜症はどのように進行しますか?

糖尿病網膜症は、大きく3つの段階に分けられます。

最初は単純糖尿病網膜症という初期の段階です。
網膜の細い血管がふくらんだり(毛細血管瘤)、小さな出血や滲出(しみ)が見られる状態です。多くの場合、自覚症状はほとんどありません。血糖コントロールを改善することで、これらの変化が軽快することもあります。眼底検査や蛍光眼底造影検査によって、病変の広がりを詳しく調べます。

次は増殖前糖尿病網膜症という中くらいの段階です。
血管の詰まりが広がり、網膜に酸素が届きにくくなります。身体はそれを補うために新しい血管を作ろうとしますが、この段階で視界のかすみや見えにくさが現れることがあります。まったく症状が出ない場合もあります。

さらに進行すると、失明リスクの高い増殖糖尿病網膜症という状態になります。酸素不足を補うために作られた新しい血管(新生血管)が、網膜から硝子体内にまで伸びてきます。これらの血管は大変もろく、破れて眼内出血を起こしたり、網膜がはがれたり(網膜剥離)ことがあります。ここまで進むと手術が必要になることが多く、手術がうまくいっても生活に十分な視力が戻らないことがあります。

糖尿病網膜症の治療

糖尿病網膜症の治療

糖尿病網膜症は眼科での治療で完治しますか?

残念ながら、一度進行した糖尿病網膜症を完全にもとの状態まで治すことは難しいのが現状です。眼科での治療はこれ以上悪化させない、視力低下を最小限に抑えるといったことが目的です。

糖尿病網膜症の進行を防ぐためには、目の治療だけでなく血糖・血圧・脂質の管理といった内科的治療が不可欠です。特に血糖値のコントロールは、網膜症の発症や進行に大きな影響を与えます。また、禁煙は目の血管を守るためにかなり重要です。喫煙は血管を傷つけ、網膜症の悪化を早めるリスクがあります。

つまり、糖尿病網膜症の治療は、眼科と内科の連携、そして患者さん本人の生活管理が大切です

糖尿病網膜症はどのように治療しますか?

初期の段階の糖尿病網膜症では、内科的治療が中心です。それ以上の段階では、眼科的な治療が必要になります。

中期の段階である増殖前糖尿病網膜症では、進行を抑えるためにレーザー治療(網膜光凝固術)が行われます。レーザーで障害された部分を焼いて進行を抑えたり、網膜全体にレーザーを照射して網膜の酸素需要を下げたりすることで、新しい異常血管(新生血管)ができるのを防ぐ治療です。

注意すべき点は、レーザー治療は今以上悪化させないための治療であり、もとの健康な状態に戻す治療ではないということです。

レーザーの照射数や範囲は、網膜症の進行具合や病変の広がりによって異なります。網膜光凝固術は、早期に行うほど効果が高く、将来的な失明を防ぐための大変重要な治療です。

さらに進行した増殖網膜症では、手術が必要になることが多いです。レーザー治療で網膜症の進行を抑えきれなかった場合や、すでに硝子体出血や牽引性網膜剥離が起きてしまった場合には、硝子体手術が必要になることがあります。

この手術では、眼球に3か所の小さな穴を開け、細い手術器具を挿入して、目の中にたまった出血を取り除く、網膜を引っぱっている膜(増殖膜)を除去する、はがれてしまった網膜をもとの位置に戻すといった処置を行います。

顕微鏡下で極めて繊細な操作を行うため、眼科のなかでも高度な技術を要する手術の一つです。

糖尿病網膜症の治療法別に治療後の経過を教えてください

レーザー治療を受けた後は、しばらくの間、まぶしく感じたり、目がかすんだり、黒い影が見えたりと、一時的に見えにくくなることがあります。多くの場合、こうした症状は時間経過とともに少しずつよくなっていきます。

レーザーの効果がはっきり出るまでには時間が必要で、新しくできた弱い血管が小さくなる、出血しにくくなるまでには数週間〜数ヶ月ほどかかります。また、1回の治療だけでもう大丈夫というわけではないので、治療後のチェックはとても大切です。

眼の手術(硝子体手術)を受けた後は、しばらくの間、目がかすんだり、ものがゆがんで見えたりすることがあります。手術で目の中の出血やにごりを取っても、もともとの網膜の傷みが強いと、視力の回復があまり期待できないこともあります。

視力が落ち着くまでの期間は人それぞれですが、だいたい6ヶ月から1年ほどかかります。特に網膜がはがれた部分を治したり、増殖膜という膜を取ったりした場合は、回復がゆっくりになることが多いです。

また、手術後には眼圧が上がったり、白内障が進んだり、再び出血したり、新しい増殖が出てきたりする可能性があります。手術がうまくいっても、油断せずにしっかりと経過を見る必要があります。

参照:
『Retinopathy risk factor regression after laser panretinal photocoagulation for proliferative diabetic retinopathy』(Ophthalmology)
『Visual outcome after vitrectomy for diabetic retinopathy. A five-year follow-up』(Acta Ophthalmol (Copenh))

糖尿病網膜症の治療期間を教えてください

糖尿病網膜症は、一度かかるともとに戻るという病気ではありません。そのため、治療はいつまでというはっきりした期間を決めることはできません。

糖尿病網膜症の経過観察と再発予防

糖尿病網膜症の経過観察と再発予防

糖尿病網膜症の治療後の通院間隔を教えてください

治療後の通院ペースは、どのような治療をしたか、網膜症がどれくらい進んでいるか、血糖や血圧、脂質がきちんと管理されているかで大きく変わります。

一般的には、レーザー治療を受けた場合、経過がよければ1ヶ月以上の間隔で通院を続けます。

手術(硝子体手術)を受けた場合は、まず手術後数日に診察があり、その後はだんだんと診察間隔が延びていきます。経過によっては、レーザーの追加が必要となることもあります。

どちらの治療でも、状態が安定してくれば、最終的には1〜3ヶ月ごとの通院に切り替わることがあります。

糖尿病網膜症の再発を防ぐために気を付けることはありますか?

治療をしても、血糖値のコントロールが悪いと、また出血したり、新しい悪い血管ができたりを繰り返します。そのため、どの治療を受けた場合でも、血糖・血圧・コレステロールの管理、そして禁煙がとても大事です。

また、レーザー治療後でも手術後でも、目の奥の状態は少しずつ変わっていきます。自分の判断で通院をやめてしまうと、視力が一気に落ちることもあります。定期的なフォローを続けることで、視力を守り、合併症を防ぐことにつながります。定期的に通院して診てもらうことが本当に大切です。

編集部まとめ

編集部まとめ
糖尿病網膜症は、一度進行してしまうと眼科治療を行ってももとの状態に戻すのは難しい病気です。だからこそ、進ませないことが何よりも大切です。
まずは禁煙を徹底し、さらに定期的な通院による血糖・血圧・脂質の管理を続けることで、網膜症の発症や進行を大きく遅らせることができます。

日々の体調管理と眼科での定期検査が、あなたの視力を守る方法です。見え方に少しでも不安があれば、早めに受診するよう心がけましょう。

この記事の監修医師