「網膜剝離」の「治療」にかかる期間はどれくらい?治療後の注意点も解説!

網膜剥離は珍しくない目の病気ですが、早期発見と適切な治療が視力の予後を大きく左右します。網膜剥離を放置すると失明の危険もありますが、手術によってもとの位置に復元できる可能性があります。本記事では網膜剥離の基礎知識から治療法の種類、手術費用の目安、治療期間や術後の注意点について解説します。

監修医師:
栗原 大智(医師)
目次 -INDEX-
網膜剥離の基礎知識

網膜剥離の症状を教えてください
網膜剥離がさらに進行すると、視野の一部が見えなくなる視野欠損や、ものが見えにくくなる視力低下が起こります。なお、網膜自体には痛みを感じる神経がないため、網膜剝離だけであれば痛みは伴いません。これも自覚症状を感じづらい理由となっています。
なぜ網膜剥離になるのですか?
一方、糖尿病網膜症などで網膜表面に増殖膜ができて網膜を引っ張る牽引性網膜剥離や、ぶどう膜炎など炎症や腫瘍による滲出液で網膜が浮き上がる滲出性網膜剥離もあります。
このように、網膜剝離は網膜に裂け目ができたり、糖尿病やぶどう膜炎などの病気が原因で起こったりするのです。
網膜剥離の検査方法と診断基準を教えてください
場合によっては超音波検査(エコー)を用いて、眼底が直接見えにくいときでも網膜が剥がれていないか確認します。診断は医師が瞳孔を開いて直接網膜を見ることで行われ、網膜に裂孔の有無、剥離範囲、網膜の中心部(黄斑)が剥離しているかどうかなどを総合的に評価します。
また、視力検査や眼圧測定なども併せて行い、網膜剥離以外の眼の状態も確認します。網膜に穴のみがみつかった場合は網膜裂孔と診断され、剥離が始まっていれば網膜剥離と診断されます。
網膜剥離の治療法

網膜剥離の治療にはどのような種類がありますか?
一方、すでに網膜が剥がれて網膜剥離が起きてしまった場合は、多くの場合、手術による治療が必要です。手術には大きく分けて強膜内陥術と硝子体手術の2種類があります。どちらを選択するかは眼科医によって判断は異なりますが、一般的に年齢や網膜剝離の状態などによって判断します。
網膜剥離で手術が必要なケースを教えてください
黄斑まで剥がれていない段階であれば、黄斑に剥離が及ぶ前に治すことが望ましいとされています。したがって、網膜剥離と診断されたら基本的には手術が必要であり、軽微な網膜裂孔のみで剥離が起きていない場合に限ってレーザー治療などで経過を観察することがあります。それ以外にも、牽引性網膜剥離の場合や、広範囲に及ぶ剥離、硝子体出血を伴う場合なども手術が必要です。
網膜剥離の手術の種類と方法を教えてください
まず、強膜内陥術は、眼球の外側にシリコンスポンジやシリコンバンドといったあてもの(バックル)を縫い付けて押し込み、眼球壁を内側に陥没させることで網膜の裂孔部分を塞ぎます。
裂孔周囲にはレーザー光凝固や冷凍凝固を行い、網膜を固着させ剥がれにくくします。さらに、剥がれた網膜を内側から押し付けるために眼球内に空気やガスを注入することがあります。
一方、硝子体手術では、剥離の原因となった硝子体の濁りや牽引力を取り除くために硝子体の切除を行います。眼球内を満たす硝子体を特殊なカッターで吸引切除し、網膜を引っ張っている増殖膜や膜状組織も除去します。次に、剥離した網膜をもとの位置に戻して網膜復位を図ります。
網膜が所定の位置に復位したら、裂孔周囲をレーザーで凝固し、網膜と下の組織を接着させます。硝子体手術でも眼内ガスもしくはシリコンオイルを手術の最後に眼球内に注入して網膜を内側から押さえつける処置を行います。
網膜剥離の手術にはどの程度の費用が必要ですか?
なお、日本には高額療養費制度があり、1ヶ月の自己負担額が一定の上限額を超えた場合、超過分が後日払い戻されます。そのため、長期入院や高額の手術費用が発生した場合でも、条件を満たせば自己負担額が軽減される仕組みがあります。具体的な費用は治療内容や病院ごとに異なるため、事前に医療機関で見積もりや説明を受けておくとよいでしょう。
網膜剥離の治療期間と注意点

網膜剥離の治療にかかる期間の目安を教えてください
これに対し、手術が必要な網膜剥離では、一般的に手術時間は1~2時間程度ですが、その後の入院期間が必要です。入院期間はケースによりますが、1週間から長い場合で2~3週間程度が目安です。ただし、入院期間は患者さんの状態や術後経過によって異なり、術後早期に網膜が安定すれば1週間以内で退院できる場合もあります。
参照:『網膜剝離』(日本眼科学会)
網膜剥離の治療後はどのようなことに気を付けるとよいですか?
特に、ガスが眼内に残っている間は飛行機や高地の移動は禁止されます。退院後も定期的に眼科を受診し、再剥離や合併症の早期発見に努めましょう。もし経過観察中に違和感や見え方の変化があれば、できるだけ早めに主治医に相談することが大切です。
編集部まとめ

網膜剥離は決してまれな病気ではなく、加齢や強度近視でも起こりうる目の病気です。しかし、初期には自覚症状に乏しく見過ごされがちで、症状に気付いたときにはすでに進行している場合もあります。本記事で解説したように、網膜剥離の程度によって治療方法や期間、費用は大きく異なります。初期の段階であればレーザー治療など簡便な処置で入院も不要で済みますが、剥離が進行してしまうと緊急手術や長期の入院安静が必要となり、視力への影響も大きくなります。したがって、飛蚊症や光視症、視野の異変に気付いたら、できるだけ早く眼科を受診するようにしましょう。治療後も再発予防のため定期検診を受け、日々の生活で目を保護する習慣を心がけてください。大切なのは予防と早期発見、早期治療です。自分の目に現れるサインを見逃さず、違和感があれば眼科を受診することで、将来の視力を守ることにつながります。




