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「網膜剝離」を発症するとどんな「見え方」になるかご存知ですか?初期の見え方も解説!

 公開日:2025/12/04
「網膜剝離」を発症するとどんな「見え方」になるかご存知ですか?初期の見え方も解説!
視界に突然、「虫やホコリのような影がちらつく(飛蚊症)」や「光が走るように見える(光視症)」といった症状が現れたら要注意です。

それは網膜剥離という目の病気のサインかもしれません。網膜剥離は放置すると進行して失明のおそれもある目の病気ですが、初期のわずかな見え方の異常に気付いて早期に対処できれば、視力への影響を最小限に抑えることが可能です。本記事では、網膜剥離の初期から進行期にかけて見え方がどう変化するのか、また網膜剥離と紛らわしい症状を起こすほかの疾患などを解説します。
栗原 大智

監修医師
栗原 大智(医師)

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2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。

網膜剥離の見え方とは

網膜剥離の見え方とは

初期の網膜剥離は見え方に変化はありますか?

初期の網膜剥離では、飛蚊症(ひぶんしょう)や光視症(こうししょう)といった症状が現れます。飛蚊症とは、視界に小さな虫や糸くず、黒い点のようなゴミが浮いて見える症状で、網膜に小さな裂け目(裂孔)ができた際に現れることがあります。

一方、光視症は実際には光がない所でピカッと稲妻のような光が視野の端に走る症状です。網膜が引っ張られる刺激で閃光を感じます。初期の裂孔が生じただけで網膜剥離がまだ起きていない段階では、視野に大きな欠損はなく、これら飛蚊症や光視症の軽い症状だけのこともあります。

いずれにせよ網膜剥離は痛みを伴わず、自覚しにくいため、こうしたわずかな見え方の変化を見逃さないことが重要です。

網膜剥離が進行した場合の見え方を教えてください

網膜剥離が進行して網膜が剥がれてくると、見え方に大きな変化が生じます。代表的な症状が視野欠損と呼ばれる症状で、視界の一部が見えなくなる現象です。具体的には、視界の端から黒い幕かカーテンが下りてきたように感じたり、視野の一部が影に覆われて暗くなったりします。

また、網膜剥離が黄斑(おうはん)と呼ばれる網膜中心部にまで達すると、急激な視力低下が起こり、物が歪んで見える(変視症)症状を自覚します。

進行した網膜剥離では視力低下のスピードがとても速く、失明のリスクも高まります。一度中心部まで剥がれてしまうと視野の回復は難しくなるため、カーテン状の暗い影が視野に広がるなど少しでも異変を感じたら、時間をおかずに眼科を受診する必要があります。

網膜剥離と似た見え方になる病気を教えてください

網膜剥離と似た症状を起こす目の病気はいくつかあります。

例えば硝子体出血です。硝子体出血は文字どおり眼球内の硝子体への出血で、糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症などの網膜の病気で起こることがあります。硝子体出血が生じると視界に突然大量の飛蚊症が現れたり、視界全体がかすんで見えにくくなったりすることがあり、網膜剥離と症状が似ています。

また、目の中の炎症(ぶどう膜炎)でも硝子体が濁るため、飛蚊症の症状が現れることがあり注意が必要です。

さらに、網膜剥離と同様に視野が欠ける疾患として緑内障があります。緑内障は進行すると視野が徐々に狭く欠けていく病気ですが、網膜剥離のように急速に広がることはなくゆっくり進行します。

このほか網膜静脈閉塞症網膜動脈閉塞症などの血管障害でも、突然片目の視野が欠ける症状が起こることがあります。しかし、これらは網膜への血流障害によるもので、網膜自体が剥がれる網膜剥離とは原因が異なります。

病気ではないのに網膜剥離と似た見え方になることはありますか?

はい、目の病気でなくても網膜剥離と紛らわしい見え方の異常を経験することがあります。代表的な状態が後部硝子体剥離です。後部硝子体剥離とは加齢に伴って眼球内の硝子体が収縮し、網膜から硝子体が離れる現象です。後部硝子体剥離そのものが起こる際にも、一時的に飛蚊症や光視症が現れることがあり、網膜剥離の前兆症状と大変よく似ています。

もう一つは片頭痛の前兆である、閃輝暗点(せんきあんてん)です。片頭痛持ちの方が頭痛の前に経験することがある現象で、突然視界の一部がギザギザと輝く模様に覆われ、視野の一部が見えなくなります。光視症が一瞬の閃光であるのに対し、閃輝暗点では揺らめく光が持続する点で異なります。

このように病気でなくても一時的に網膜剥離と似た視界の異常が起こることがあります。しかし、「視界の中に光が走る」「視野の一部が急に欠けた」などいつもと違う症状を感じたら、念のため早めに眼科で検査を受けてください。

網膜剥離が疑われるときの眼科での検査と診断

網膜剥離が疑われるときの眼科での検査と診断

どのような見え方になったら眼科を受診したらよいですか?

少しでも網膜剥離を疑う症状があれば、できるだけ早く眼科を受診してください。具体的には、前述した飛蚊症や光視症を自覚した場合は、その程度に関わらず一度眼科で検査を受けることが望ましいです。

特に、飛蚊症の数が急に増えた場合や視野の一部に黒い影が現れた、あるいは視力が急に下がったといった症状がある場合は、眼科を受診するようにしましょう

眼科では、瞳孔を広げて眼底を詳しく調べる検査(散瞳検査)などで網膜の状態を確認できますので、不安な症状があれば迷わず眼科医の診察を受けましょう。

網膜剥離が疑われるときに実施される検査の内容を教えてください

網膜剥離が疑われる症状がある場合、眼科ではさまざまな検査を行います。

具体的には、視力検査や屈折検査などの基本的な検査、そして眼底検査を行います。眼底検査は、目薬で瞳孔を大きく開いてから、目の奥(眼底)をすみずみまで観察する検査です。眼底検査により網膜に裂孔や剥離が起きていないか直接確認しますが、もし出血などで眼底が見えにくい場合には超音波検査を行って網膜の状態を調べます。

また、網膜の中心部(黄斑)の状態を調べるために光干渉断層計(OCT)検査で網膜の断面像を撮影します。

これら検査結果を踏まえて、経過観察でよいのか、治療をすべきなのかを判断します。

網膜剥離の診断基準を教えてください

網膜剥離の診断は、網膜が剥がれているかが確認できれば診断できます。具体的には、眼底検査によって網膜が剥がれている所見を認めることが診断には必要です。

眼科医が散瞳したうえで眼底を観察し、網膜が網膜色素上皮から離れて浮き上がっている様子が確認できれば網膜剥離と診断されます。

さらに、網膜剝離内の裂孔の有無や剥離範囲、黄斑まで剝離が広がっているかなどで重症度が判断され、治療方針を立てます。

網膜剥離の治療法

網膜剥離の治療法

網膜剥離はどのように治療しますか?

網膜剥離の治療は病状に応じてレーザー治療または手術が行われます。

まだ網膜剥離になっておらず網膜裂孔や円孔があるだけの場合には、レーザー光凝固術によって裂孔の周囲を焼き固め、網膜剥離への進行を食い止める治療が行われます。

一方、すでに網膜剥離が生じている場合は多くが手術適応です。網膜剥離は治療せず放置すると失明の危険が高いため基本的に早期手術が原則です。手術による治療法は大きく二つあります。

一つは強膜内陥術といい、目の外側から網膜の裂孔に対応する強膜の部分にシリコンゴムなどのバックル(あて物)を縫い付けてくぼませ、網膜を内側から押し当てて剥がれを治す方法です。

もう一つは硝子体手術といい、目の内部からアプローチする方法です。小さな切開創から細い器具を挿入し、濁った硝子体や増殖膜を取り除いて網膜をもとの位置に復位させます。

これらの治療方法のうちどれを選択するかは、それぞれの網膜剝離の状態から判断します。いずれにせよ早めに治療に取りかかることが大切です。網膜剥離が広範囲におよび手術が遅れると、複数回の手術が必要になったり、最善を尽くしても残念ながら視力が戻らなかったりすることもあります。

網膜剥離が再発することはありますか?

はい、網膜剥離は再発する可能性があります。

初回手術で網膜をしっかり復位できれば多くは治癒しますが、一部の症例では術後に、再び網膜が剥がれてしまうことがあります。再発の原因として、初回手術で裂孔が完全に塞がりきらなかった場合や、網膜上の見落とされた別の裂孔、あるいは術後に新しく裂孔ができた場合が挙げられます。

もう一つの再発要因は、増殖硝子体網膜症と呼ばれる合併症です。これは網膜剥離の術後に網膜の細胞が増殖して膜を形成しまい、網膜を再び引っ張ってしまう状態です。増殖硝子体網膜症が起きると網膜が強く牽引されるため、通常の手術手技での復位が難しくなります。

このように、網膜剥離は網膜が残っている限り、再発する可能性があります。

編集部まとめ

編集部まとめ

網膜剥離は、放置すれば失明につながりかねない目の病気です。しかし、初期段階で発見できれば、レーザー治療のみで進行を止められる可能性もあり、視力への影響も最小限ですませることができます。したがって、「飛蚊症や光視症が急に出てきた」「視野の隅が暗く欠ける感じがする」といった症状に気付いたら、できるだけ早めに眼科を受診してください。重要なのは予防と早期発見、早期治療です。日頃から目を強くこすらない、目の怪我に注意するなどリスクを減らしつつ、定期的な眼科検診で網膜の状態を確認しましょう。そして異変を感じたら放置せずすぐ眼科医に相談してください。それが、ご自身の大切な視力を長く保つ何よりの秘訣です。

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