どんな症状があると「胃下垂は治療」が推奨される?【医師監修】

胃の位置が普通より下がっている胃下垂という言葉を聞いたことがありますか?
「食後に下腹部がぽっこり出る」「少し食べただけですぐお腹いっぱいになる」、そんな症状がある方は、もしかすると胃下垂かもしれません。本記事では、胃下垂とは何か、症状や原因、治療の必要性や検査方法、さらに日常でできるセルフケアまでを解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)
目次 -INDEX-
胃下垂の基礎知識

胃下垂とはどのような状態のことを指しますか?
胃下垂は病気ですか?
胃下垂自体は問題にはならなくても、胃アトニーや消化不良を併発して胃もたれや膨満感など不快な症状が現れる場合には、胃下垂も無視できない状態となり治療の対象になります。つまり、症状があるかないかが重要で、症状がなければ経過観察でよいものの、症状が出ている場合には対策が必要な状態といえるでしょう。
胃下垂の症状を教えてください
- 胃部の膨満感や張った感じ
- 少量の食事で満腹だと感じてしまう
- 食後に下腹部が膨らむ感じがする
- 食欲不振や吐き気、げっぷなど消化不良に伴う不快感
こうした症状は胃下垂で現れることがある症状ですが、胃下垂の程度や個人差によって現れ方はさまざまです。また、胃が骨盤近くまで下がる重度の胃下垂では、胃が腸や膀胱を圧迫して便秘や下痢を繰り返したり、頻尿になったりといった症状を引き起こすこともあります。
なぜ胃下垂になるのですか?
また、過労やストレス、急激な体重減少や腹部の手術後、出産を複数回経験した場合も、胃下垂が起こることがあります。このように胃下垂にはさまざまな要因が関与します。
胃下垂の検査と治療法

胃下垂で治療が必要なケースを教えてください
しかし、前述のような症状を伴う場合には治療を検討します。特に、胃の筋緊張低下による胃アトニーがみられて消化不良を起こしている場合は、放置すると症状が慢性化するおそれがあるため治療が必要です。
病院では胃下垂に対してどのような検査を行いますか?
加えて、胃下垂と似た症状を示すほかの病気が隠れていないか確認するために胃内視鏡検査(胃カメラ)を行うこともあります。このほか、必要に応じて血液検査で貧血や炎症の有無をみたり、腹部超音波検査やCT検査で胃の位置や周囲臓器の状態を確認したりすることもあります。
病院での胃下垂の治療法を教えてください
加えて、胃下垂は適切な食事療法で改善できることもあるため、あわせて食事指導が行われます。これらの生活指導により症状の改善が見込まれる場合はまず生活習慣の修正に取り組み、それでも改善しない場合に薬物療法を追加するといった方針になることが多いでしょう。
治療と同時並行で行いたい胃下垂のセルフケア

胃下垂の方が日常生活のなかで避けた方がよい食習慣を教えてください
- 暴飲暴食を避ける
- 早食いや噛まずに飲み込むことを避ける
- 刺激の強い食べ物や脂っこい料理を控える
- 極端に冷たい物・熱すぎる物を避ける
これらに加えて、不規則な食事も胃の働きを乱す原因になりえます。規則正しい食生活を送ることが胃下垂の管理には重要です。
胃下垂の方に推奨される食べ物や調理法、食べ方はありますか?
- 油っぽいものや甘いものは控えめにする
- 野菜やタンパク質(肉・魚・大豆製品など)をバランスよく取り入れる
- 少量の食事を回数多くとる
- よく噛んでゆっくり食べる
以上のような食事内容やとり方の工夫によって、胃下垂でも食べ物が消化されやすくなり、症状の改善が期待できます。無理のない範囲で間食を取り入れたり、肉類や炭水化物もしっかり摂取したりして、必要最低限の脂肪や筋肉を身体につけるよう心がけましょう。
胃下垂の方に推奨される運動や生活習慣を教えてください
- 腹筋運動など適度な運動を習慣づける
- 十分な休養とストレス管理を心がける
- 極端なダイエットを避けて適正体重を維持する
これらの生活習慣の見直しによって、胃下垂に伴う不調がかなり改善することもあります。食生活や生活習慣をいきなり変えるのは難しいと思いますので、無理せずに1つずつ取り入れていきましょう。
編集部まとめ

胃下垂自体は危険な状態ではありません。症状がなければ特に心配はいりません。しかし、胃下垂によって胃もたれや膨満感などの不調が現れている場合には、放置せず適切な対策を行うことが重要です。まずは医療機関で正確に診断してもらい、ほかの病気がないか確認したうえで、生活習慣の改善に取り組みましょう。食事内容の工夫や腹筋トレーニングによって、胃下垂による症状が軽減あるいは改善することは十分期待できます。
逆に、不適切な生活を続けていると胃の不調が長引くだけでなく、胃炎などほかの消化器トラブルを招く可能性もあります。大切なのは予防と早めの対処です。自分の体質とうまく付き合いながら、必要に応じて医師のアドバイスを受けつつ、胃の健康を維持していきましょう。


