「インフルエンザの咳の特徴」はご存知ですか?風邪の咳の違いも解説!【医師監修】
公開日:2025/11/11


監修医師:
林 良典(医師)
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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)
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インフルエンザと咳の関係
インフルエンザの代表的な症状を教えてください
インフルエンザの代表的な症状は、突然の38〜39度あるいはそれ以上の高熱から始まり、強い倦怠感、関節痛、筋肉痛、頭痛などの全身症状を伴う点が特徴です。一般的な風邪では、喉の違和感や鼻水が先に現れ、数日かけて咳や発熱などの症状が進行しますが、インフルエンザは急激に発症する点が大きな違いです。
また、熱が下がった後も倦怠感や咳が数日続くことがあり、解熱したからといって完全に回復したとは限りません。呼吸器症状として喉の痛みや咳、鼻水などが高熱と同時、あるいは少し遅れて現れる場合があります。
参照:『インフルエンザ施設内感染予防の手引き』(厚生労働省)
参照:『新型インフルエンザ 診療ガイドライン(第1版)』(一般社団法人日本感染症学会)
インフルエンザで咳が出ることはありますか?
インフルエンザに感染すると、多くの場合には咳の症状がみられます。これは、ウイルスが喉や気管の粘膜に炎症を起こすことで生じますが、症状の出方には年齢や体質による違いがあります。小児では痰を伴う湿った咳になることが多く、気道が狭いためゼーゼーとした呼吸音が聞こえることもあります。一方、高齢の方では典型的な咳が目立たず、倦怠感や食欲低下のみで進行することもあります。
ただし、すべての方に咳が出るわけではなく、喉の痛みや鼻水が中心となる場合もあるため、咳の有無だけでインフルエンザかどうかを判断することはできません。
インフルエンザの咳の特徴を教えてください
インフルエンザの咳は、痰があまり絡まないコンコンとした乾いた咳(空咳)で始まることが多い傾向です。これは、炎症が主に気管や気道の上部に生じ、気道が過敏になっているためです。
このような咳は、喉や胸への刺激を伴い、強い場合には胸の痛みを感じることもあります。咳によって呼吸が浅くなり、全身のだるさが増すこともあるため、症状としては大きな負担につながります。
インフルエンザの咳は進行するにつれて変化しますか?
インフルエンザの感染初期には乾いた咳が中心ですが、数日が経過して炎症が広がると、痰を伴う湿った咳に変化することがあります。
また、二次的に細菌感染を合併した場合には、黄色や緑色の痰が出るようになり、肺炎に進行する可能性もあります。息苦しさ、熱がなかなか下がらない、食欲の低下などの症状がみられた場合は、肺炎などの合併症が疑われるため、自己判断せずに医療機関を受診することが推奨されます。
インフルエンザの咳とほかの病気の咳との違い
インフルエンザの咳と似ている咳がでる病気はありますか?
インフルエンザと似た咳がみられる代表的な病気は下記のとおりです。
- 一般的な風邪(急性上気道炎)
- 新型コロナウイルス感染症
- 気管支炎
- 肺炎
インフルエンザの咳と風邪の咳の違いを教えてください
風邪の咳は軽い痰を伴うことが多く、喉の違和感や鼻水から始まり、数日かけて咳や発熱などの症状が現れる傾向があります。一方、インフルエンザの咳は突然の高熱と同時、あるいは少し遅れて現れ、痰が少ない乾いた咳が目立ちます。また、インフルエンザでは全身の強い倦怠感、筋肉痛、頭痛などの症状を伴うことが多く、咳と全身症状の強さを組み合わせて風邪と区別することができます。
インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の咳はどう違いますか?
インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の咳は、いずれも乾いた咳が主体ですが、経過や併発する症状などに違いがみられます。
インフルエンザの咳は発症初期から出やすく、数日間でピークを迎えるのが一般的です。これに対し、新型コロナウイルス感染症では乾いた咳が長く続く傾向があり、持続期間に違いがみられます。
また、新型コロナウイルス感染症では、味覚や嗅覚の異常、息切れ、長期間にわたる倦怠感などの症状を伴うことがあり、これがインフルエンザとの大きな違いです。
インフルエンザの咳への対処法
インフルエンザで咳が辛いときに自宅でできることはありますか?
自宅ではまず安静を保ち、十分な睡眠と休養をとることが基本です。咳が続くと体力を消耗するため、無理をせずに身体を休めましょう。室内の湿度を保つことで喉の乾燥を防ぎ、咳をやわらげる効果が期待できます。乾燥しやすい環境では、加湿器などを使って50〜60%程度の湿度を保つよう心がけましょう。
さらに、こまめな水分補給は粘膜の潤いを保ち、痰を出しやすくする効果があります。温かいスープやカフェインの少ないお茶などを選ぶとより効果的です。市販ののど飴をなめたり、マスクで喉を保湿したりすることも、咳を軽減するのに役立ちます。
参照:『令和6年度インフルエンザQ&A』(厚生労働省)
病院ではインフルエンザの咳に対してどのように治療しますか?
医療機関では抗インフルエンザ薬を用いてウイルスの増殖を抑えます。これらの薬は、発症から48時間以内に服用すると効果が高いとされます。
咳が強い場合には、症状をやわらげるための咳止め薬(鎮咳薬)や、痰を出しやすくする薬(去痰薬)が処方されることがあります。さらに、肺炎や気管支炎などの合併症が疑われる場合には、胸部レントゲンや血液検査などを行い、必要に応じて抗菌薬が投与されることもあります。
参照:『令和6年度インフルエンザQ&A』(厚生労働省)
インフルエンザで咳だけが長引くときの対処法を教えてください
インフルエンザが治った後でも、咳だけが数週間残ることがあります。これは気道過敏症と呼ばれる状態で、炎症が収まっても気道の粘膜が敏感になっているために咳が続くことがあります。
長引く咳は生活の質を下げるだけでなく、喘息の悪化など、別の病気が背景にある可能性もあります。特に、痰の色が濃くなる、息苦しさが強い、夜間に咳で目が覚めるといった症状がある場合には、あらためて医療機関で診察を受けることが推奨されます。
編集部まとめ
インフルエンザは風邪とは異なり、急激な高熱や強い全身症状を伴うのが特徴で、咳も主要な症状のひとつです。発症初期には痰を伴わない乾いた咳が多くみられ、進行に伴って湿った咳に変化することもあります。こうした咳は、肺炎などの合併症の兆候となる場合もあります。風邪や新型コロナウイルス感染症など、インフルエンザ以外の呼吸器疾患と症状が似ているため、咳の質や持続期間、全身の状態を総合的に判断します。
自宅では安静を保ち、加湿や水分補給などで咳をやわらげるよう心がけましょう。症状が強い場合や長引く場合には、医療機関を受診して適切な治療を受けることがすすめられます。
参考文献




