「適応障害で休職」する際の手続きの流れはご存知ですか?【医師監修】

適応障害は、職場などの特定の環境ストレスにより気分や行動面の問題が生じ、社会生活を送ることが困難になる病気です。
本記事では、適応障害になってしまったときに休職をした方がよいかの判断基準や適応障害で休職する場合の手続き、治療の流れや療養中の自宅での過ごし方などを解説します。

監修医師:
前田 佳宏(医師)
目次 -INDEX-
適応障害で休職した方がよいケース

適応障害で休職した方がよいケースや状況を教えてください
具体的な状況は下記のとおりです。
- 心身の不調により仕事に集中できない
- 朝、身体が動かず出社できない
- 不眠や食欲不振などが出ている
こういった状態は、仕事上のストレスにより精神が限界を迎えているサインの可能性があります。休職をして不調の原因から離れることが、症状の悪化を防ぎ心身の回復の鍵です。
適応障害でも仕事を続けてもよいですか?
しかし、適応障害は、特定の原因により情緒に問題が生じている状態のため、適応障害の原因となっている要因が職場にある以上は、その要因ををなくさない限りは状態が改善されません。
無理をして仕事を続けると、精神的な負荷が大きくなり、うつ病などほかの精神疾患につながるリスクもあります。
適応障害でも仕事を続ける場合には、適応障害の引き金となった要因を見定めて、仕事の負荷を減らしてもらう、異動願いを出すなどの対策が必要です。上司や人事に相談し、状況のシェアをおすすめします。
適応障害で休職するかどうかを医師が決めることはありますか?
会社が産業医を置いている場合には、産業医が主治医の診断書をもとに、従業員の心身の状態を評価し、業務をするに耐えるかを検討します。また、社内環境や従業員の業務内容を確認し、適応障害の原因となっていることを特定、企業に改善を提案します。
医師が従業員の健康状態を評価した内容を踏まえて、会社の人事部などが休職を決めます。
適応障害で休職する場合の流れと自宅での過ごし方

適応障害で休職する際の手続きを教えてください
医療機関で適応障害と診断されたら、主治医に休職したいことを伝え、診断書を記載してもらいます。
次に、職場の上司や人事・総務部門などに、体調不良で精神科・心療内科に受診し、適応障害と診断されたこと、療養のため休職したいことを連絡します。
そのうえで、医療機関から発行された診断書と、職場で指定されている休職のための申請書類を提出します。
休職中は、原則として給与は支給されませんが、一部の企業では給与が支給されることもあります。休職可能な期間や休職の手続きは職場により異なるため、社内の規定を確認しましょう。
また、傷病手当金や労災の休業補償が受給できる場合は、手続きをしましょう。
適応障害で休職している間は自宅でどのように過ごせばよいですか?
仕事がストレスの原因であった場合、休職中に職場のことを頻繁に考えることはおすすめできません。仕事のプレッシャーを感じてしまう場合は、仕事に関する資格の勉強なども避けた方が無難かもしれません。
音楽鑑賞や入浴、読書など、自分がリラックスできて好きな活動をするとよいでしょう。
運動は、ストレスを減らし、気分をリフレッシュするのに適しています。ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動や、ストレッチなど無理のないペースで取り入れるとよいでしょう。
また、初期の精神的な落ち込みが強い時期を超えたら、朝の光を浴びる習慣をつけると、朝起きて夜眠くなるリズムがつきます。
休職期間中の治療の流れを教えてください
休職して間もない時期は休養期であり、この時期は積極的な活動は控えて休むことに集中します。生活リズムもこの時期はあまり気にせず、休めるだけ休んで、動きたくなったときだけ動くような生活で構いません。
回復期は、心身が元の状態に戻ってきて、徐々に活動に身体を慣らしていく時期です。無理のない範囲で運動をするなど、日中の活動を組むとよいでしょう。
調整期は、もとの生活に戻るために、生活リズムや食事などを整えていく時期です。回復してきた頃に、心身のバランスを崩す要因となる思考の癖に気付くために、カウンセリングや認知行動療法を受ける場合もあります。
不眠や不安がある場合は、必要に応じて睡眠薬や抗不安薬が処方される場合もあります。
適応障害で復帰するタイミングと注意点

どのような状態になったら仕事に復帰してもよいですか?
まず、気分の落ち込み、不眠などの症状がなく、精神や身体の状態が回復している必要があります。生活リズムが整い、朝起きて夕方までの活動に耐えられる体力がついていることも復帰の目安です。
症状の改善や体力の回復に加えて、実際仕事に戻ったときに持続的に業務を遂行できるかも考慮します。
通勤ができるか、業務をこなせる能力や集中力があるかどうかなども確認して復帰が可能か検討する必要があります。
休職した方のコンディションの問題だけでなく、職場の環境が整っているかも確認します。
適応障害の引き金となった要因が改善されていないと、復職後再度不調に陥る可能性が高いため、復職しても大丈夫な環境か上司とも相談し、復帰を検討しましょう。
適応障害の再発を防ぐための仕事上の注意点を教えてください
心身の不調をきたした特定の外部要因があることが適応障害の特徴であり、適応障害の再発を防ぐためには、ストレスの原因になるべく晒されない環境を確立することが大切です。
ストレスの原因が人間関係であった場合は、配置転換を相談する、拘束時間の長い業務形態が原因であった場合は、残業を減らす、在宅勤務を増やす、などの手立てが取れるでしょう。
適応障害の休職から復帰する際に、急にもとの仕事内容や仕事量から始めると、負担が大きく感じられる可能性があります。
適応障害の再発を防ぐためには、短時間勤務や、業務量や業務の範囲を限定してスタートし、徐々に仕事時間や業務量を戻していくとよいでしょう。
日常生活ではどのようなことに気を付けるとよいですか?
決まった時間に起きる、バランスのよい食事を心がけ、よい健康状態を維持しましょう。
ストレス発散の方法を複数持っておくことも、心の状態を安定させるのに有効です。
「○○しなければならない」と考えるべき思考や、自己評価などが極端に振れやすい全か無か思考が強いと、ストレスで心のバランスを崩すリスクが上がります。
自分の考え方の癖に気付き、考え方を柔軟にしていくとよいでしょう。
また、適応障害の方のなかには、人に頼ることが苦手で、自分だけで抱え込んでしまう方も少なくありません。困ったときには早い段階で、職場の方や医師などの専門職に相談するようにしましょう。
編集部まとめ

本記事では、適応障害になってしまったときに休職をした方がよいかの判断基準、適応障害で休職する場合の手続き、治療の流れ、療養中の自宅での過ごし方、復帰のタイミングと注意点などを解説しました。
適応障害は、ストレスの原因を遠ざけ休養することで回復できる可能性の高い疾患です。療養期間中に、自身の考え方の癖を見直し、レジリエンスを養うことは、ストレスに影響されにくい素地を作ります。
適応障害で休職を考えている方は、医療や会社のサポートを活用して、焦らず回復の準備を進めていきましょう。
参考文献



