「低血圧に効果がある漢方薬」はご存知ですか?漢方薬を服用する際の注意点も解説!

ふらふらする、朝すっきりと起きられない、などの低血圧の症状を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。低血圧自体は生命維持に支障を来さないため、治療対象とはなりません。しかし、低血圧に起因するめまいや立ちくらみなどの症状は治療対象となり、漢方薬で対処することも可能です。本記事では、低血圧にまつわる症状に効く漢方について解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科
目次 -INDEX-
低血圧の定義と症状

低血圧の基準を教えてください
低血圧になるとどのような症状が現れますか?
低血圧と漢方薬

漢方薬とはどのような薬ですか?
漢方薬では、症状のある部位のみを治療するとの考えではなく、身体全体を治療対象とします。また、漢方薬によって自然治癒力を高め、病気を治すのは、患者さん本人と定義されています。
参照:『漢方とは(概論)』(日本臨床漢方医会)
低血圧に効果がある漢方薬はありますか?
四物血行散(しもつけっこうさん)は血液の循環を整えることで、貧血や疲労感などの症状を改善します。また、半夏白朮天麻湯(はんげはくじゅつてんまとう)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、五苓散(ごれいさん)は、体内の水の滞りを改善して、疲労感やめまい、頭痛、冷えなどの症状を緩和する作用が期待されます。
漢方医学に基づいて患者さんの体質を確認し、患者さんに合った漢方薬を処方します。
漢方薬が低血圧に効くとされる根拠を教えてください
血流が滞る原因は、患者さんによって異なります。漢方医学は、患者さんそれぞれの原因を見極め、症状に応じた処方で、症状の改善を目指します。
低血圧に効果的な漢方薬はどこで処方してもらえますか?
ドラッグストアなどでも漢方薬は販売されており、近年は、病院で処方されるものと成分や含有量が同じ商品もあります。ただ、専門の医師の診察を受けたほうが、より自分に合った漢方薬を処方してもらえる可能性が高いうえ、健康保険が適用されることもあります。
低血圧の方が漢方薬を服用する際の注意点

低血圧の人が漢方薬を飲むことにリスクはありますか?
| 漢方薬名 | 主な副作用 | 注意が必要な方 |
|---|---|---|
| 補中益気湯 十全大補湯 |
むくみ、高血圧、低カリウム血症 | 高齢者、心疾患・腎疾患のある方 |
| 当帰芍薬散 四物血行散 |
発疹、かゆみ、食欲不振、胃部不快感 | 過去に薬で発疹が出た方、胃腸が弱い方 |
| 五苓散 | 発疹、発赤、かゆみ | 過去に薬で発疹が出た方 |
| 半夏白朮天麻湯 | 発疹、蕁麻疹(じんましん) | 過去に薬で発疹が出た方 |
また、特に合併する疾患や服薬中の薬がある場合、漢方薬の服薬によって、副作用が出たり、症状が悪化したりする場合があります。診察時に合併する病気や服薬中の薬に関して詳細な情報を伝えたうえで、漢方薬を処方してもらうようにしましょう。
低血圧の人が漢方薬を服用する際の注意点を教えてください
また、自身の体質に合わない漢方薬を服用すると、逆に症状が悪化する場合があります。複数の漢方薬を組み合わせることで、新たな副作用が発現する場合もあります。漢方に精通した医師の診察で、ご自身に合った漢方薬を処方してもらいましょう。
漢方薬でも低血圧が治らないときはどうすればよいですか?
| 対策項目 | ポイント |
|---|---|
| バランスのとれた食事をする | 特にタンパク質・ミネラル・ビタミンを十分に摂取することが大切です。 |
| こまめに水分を補給する | 喉が渇く前に水分をとりましょう。 |
| 適度な塩分を補給する | 一般的には、塩分は控え目に摂取することが推奨されていますが、低血圧の方は医師の指示のもとで適度に摂取することが望まれます。ただし、とりすぎには注意が必要です。 |
| 適度な運動をする | 筋肉量の不足や、長時間の立位に慣れていないことが低血圧を招く場合があります。無理のない範囲で 体を動かす習慣をつけましょう。 |
| 食後にカフェインをとる | カフェインは交感神経を刺激し、血液循環をよくする働きがあります。ただし、摂りすぎには注意しましょう。 |
また、場合によっては、以下のような血圧自体を上げる薬が処方されることもあります。
| 薬剤名 | 主な作用機序 | 作用の特徴 |
|---|---|---|
| 塩酸ミドドリン | 動脈系に直接作用して血管を収縮させます。 | 血管を収縮させて血圧を上昇させます。 |
| 塩酸エチレフリン | 交感神経を刺激して血圧を上げます。 | 心拍数や心収縮力も増強させ、全身の血圧を上昇させます。 |
| メチル硫酸アメジニウム | 交感神経機能を間接的に亢進させます。 | 神経伝達を強めて血管を収縮・血圧を上昇させます。 |
なお、低血圧が別の病気や薬物に起因している場合もあります。症状が強い場合や長期間続く場合は、早めに医師に相談しましょう。
編集部まとめ

低血圧自体は、深刻な病気ではありませんが、さまざまな症状を引き起こし、QOLを下げることがあります。症状がつらい場合は、生活習慣の見直しとともに、漢方による治療も選択肢の一つに加えてはいかがでしょうか。ただし、低血圧の背景に別の疾患が隠れている場合もあります。患者さん自身で安易に漢方薬を選択して服薬するのではなく、医療機関で診察を受けたうえで、患者さんに適した漢方薬を処方してもらうとよいでしょう。
参考文献




