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「動脈硬化指数」がいくつ以上だと動脈硬化になりやすい?計算方法も解説!【医師監修】

 公開日:2025/12/05
「動脈硬化指数」がいくつ以上だと動脈硬化になりやすい?計算方法も解説!【医師監修】

動脈硬化指数は、血液中の脂質バランスから動脈硬化(血管の老化)リスクを推定する重要な指標です。生活習慣病や心筋梗塞などのリスクを早期に把握できます。この記事では、動脈硬化の原因や、指数の計算方法、数値の見方、そして改善のための方法を解説します。
佐藤 浩樹

監修医師
佐藤 浩樹(医師)

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北海道大学医学部卒業。北海道大学大学院医学研究科(循環病態内科学)卒業。循環器専門医・総合内科専門医として各地の総合病院にて臨床経験を積み、現在は大学で臨床医学を教えている。大学では保健センター長を兼務。医学博士。日本内科学会総合専門医、日本循環器学会専門医、産業医、労働衛生コンサルタントの資格を有する。

動脈硬化とは

動脈硬化とは

動脈硬化とはどのような状態ですか?

動脈硬化とは、動脈が古いゴムホースのように硬くなり、もともと備わっている弾力性を失った状態を指します。 血管の内側が厚くなり、通り道が狭くなることで血液の流れが悪くなり、さまざまな病気を引き起こす原因になります。

動脈硬化にはいくつかのタイプがありますが、太い動脈に起こりやすいのが、粥状(じゅくじょう)動脈硬化(アテローム動脈硬化)です。 動脈は、心臓から全身へ血液を送り、酸素や栄養を届ける重要な血管です。心臓が収縮して血液を押し出すたびに、動脈には強い圧力がかかります。この圧力に耐えるため、動脈の壁は内膜、中膜、外膜という3層構造になっています。

アテローム動脈硬化では、内膜の下に余分なコレステロールがたまり、粥状の塊(プラーク)が形成されます。 プラークによって血管が狭くなったり、破れて血栓ができたりすることで、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な疾患を引き起こすことがあります。

このほかにも、高血圧が原因で脳や腎臓の細い血管が硬くなる細動脈硬化、中膜にカルシウムが沈着して血管が硬くなる中膜硬化(メンケルベルグ型硬化)などがあります。

動脈硬化の原因を教えてください

アテローム動脈硬化は、次のような要因が重なることで血管の内側にプラークが生じる可能性が高まると考えられています。

  • 総コレステロールの増加
  • LDL(悪玉)コレステロールの増加
  • トリグリセライド(中性脂肪)の増加
  • HDL(善玉)コレステロールの低下
  • 糖尿病(耐糖能障害)
  • 高血圧
  • 肥満(メタボリックシンドローム)
  • 加齢
  • 過度の飲酒

これらの要因が複数重なるほど血管への負担が大きくなり、アテローム性動脈硬化が進行しやすくなります。

動脈硬化になるとどのような弊害がありますか?

アテローム動脈硬化を放置すると、血管の内側(内膜)の下にたまったプラークが血管の通り道を狭めてしまいます。 その結果、心臓や脳などに十分な酸素が届かなくなり、狭心症や一過性脳虚血発作(TIA)などの症状を引き起こすリスクが高まります。 さらに、プラークが破れて血管の内部に広がると、血栓(血のかたまり)ができやすくなることがあります。 血栓によって血管が完全に詰まると、心筋梗塞脳梗塞などの重大な疾患に発展するおそれがあります。

動脈硬化は、心臓や脳だけでなく、全身の血管にも影響します。その一つに、足の付け根から先の動脈が硬くなる末梢動脈疾患(Peripheral Artery Disease:PAD)があります。この病気では、歩くと足が痛くなり、休むとまた歩けるようになる間欠性跛行(かんけつせいはこう)などがみられます。

加えて、胸やお腹の大動脈に動脈硬化が進むと、血管の一部がコブのように膨らむ大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)を生じることもあります。大動脈瘤が破裂すると大量出血を起こし、命に関わる危険な状態になることもあります。

動脈硬化指数の計算方法と数値別のリスク

動脈硬化指数の計算方法と数値別のリスク

動脈硬化指数とはどのような指数ですか?

動脈硬化指数は、血液中の脂質のバランスから動脈硬化のリスクを推定する指標です。 HDLコレステロールと、総コレステロール値からLDLコレステロールを差し引いて算出したLDLコレステロールの比を算出します。 血液検査のみで行える簡単なリスク評価の一つです。

動脈硬化指数の計算方法を教えてください

動脈硬化指数は、以下のように計算されます。

動脈硬化指数=(総コレステロール-HDLコレステロール)/HDLコレステロール

この計算式により算出された動脈硬化指数の正常値は、4.0以下とされています。

最近では、LDLコレステロールを直接測定するようになり、LDLコレステロール/HDLコレステロールを新しい動脈硬化指数として用いることが一般的になってきています。 こちらの算出方法の場合は、基準値は3.0以下です。

動脈硬化の進行をおさえ、改善をする目的でのLDLコレステロール/HDLコレステロールの管理目標は、以下のように推奨されています。

対象や目的 推奨値
冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症)の発症予防(一次予防) 2.0以下
冠動脈疾患にすでになったことがある方(二次予防) 1.5以下

糖尿病や高血圧などの合併症がある場合、LDLコレステロールやHDLコレステロールに対して、それぞれ目標値が定められています。

参照: 『動脈硬化指数とLDL-C/HDL-C比の違いは何ですか?』(CRCグループ) 『LDL/HDL比|臨床検査項目の検索結果』(FALCO 臨床検査案内サイト)

動脈硬化指数が悪化するとどうなりますか?

動脈硬化指数は、心血管疾患のリスクの予測因子として、信頼性が高いことが多くの研究で明らかになっています。また、太っていない方でも、動脈硬化指数が高い場合には糖尿病のリスクが高まることが示された報告もあります。 心血管疾患とは、心臓のみならず身体の血管に影響を与える病気の総称です。具体的なものとして、狭心症や心筋梗塞、不整脈、末梢動脈疾患、大動脈瘤、脳血管障害(脳卒中)など多岐にわたります。

健康診断で直接動脈硬化指数が判定されることは少ないかもしれません。 しかし、HDLコレステロール値が低かったり、LDLコレステロール値が高かったりする場合などには放置せず、生活習慣の見直しや医療機関での相談をおすすめします。

動脈硬化指数を改善する方法

動脈硬化指数を改善する方法

動脈硬化指数が改善すれば動脈硬化の危険性は低下しますか?

はい。動脈硬化指数が高い状態は、LDLコレステロール値が高く、HDLコレステロール値が低い状態を示唆する場合が多いです。 そのため、これらの状況の改善によって、動脈硬化のリスクを下げることができると考えられます。

動脈硬化指数を自分で改善する方法はありますか?

動脈硬化による病気の発症を予防するために、自分でも行えるような方法もいくつかあります。

まずは、LDLコレステロール値が高いと健康診断などでいわれている場合には、日々の食事のなかで摂取する飽和脂肪酸を減らすようにしましょう。 飽和脂肪酸は、お肉の脂身やバター、ラードなどに多く含まれます。取りすぎに注意しましょう。 積極的に摂りたい食品として、食物繊維が豊富な未精製の穀物、大豆製品、野菜、海藻、きのこ類、こんにゃくなどがあります。

また、脂質異常がある場合には運動不足の解消をおすすめします。 毎日30分以上の有酸素運動を行うことで、動脈硬化の予防につながります。 ウォーキングや速歩、水泳、ベンチステップ運動などを、ややきつい程度で行うとよいでしょう。 1日合計30分以上の運動を、週3回以上、できたら毎日行うことが理想的です。

生活習慣の見直しをする際、タバコを吸っている場合にはやめるようにしましょう。喫煙や運動不足は、HDLコレステロール値を下げてしまうからです。

動脈硬化指数は病院での治療で改善しますか?

生活習慣の改善でも十分にLDLコレステロールの低下がみられないような場合は、薬物療法が検討されます。 例えば、脂質のコントロールのためには以下のような薬物が用いられます。

薬剤 期待される効果
スタチン系薬 コレステロールを合成する酵素の働きを抑えることで、LDLコレステロールを下げる
エゼチミブ 腸からのコレステロール吸収を抑制
フィブラート系薬 中性脂肪を下げ、HDLを増やす

これらの薬は動脈硬化の進行を抑える有効な手段となりえます。

編集部まとめ

編集部まとめ

動脈硬化指数は、血管の健康を数値で把握できる便利な指標です。 特にLDLとHDLのバランスは、食事や運動などの生活習慣で大きく変化します。数値が高めといわれた方も、日々の生活を整えることで改善が可能です。動脈硬化を防ぎ、健康的に過ごすことができるよう、生活習慣の見直しを今日から始めてみましょう。

この記事の監修医師