「動脈硬化と言われた人」が食生活で気を付けることはご存知ですか?【医師監修】

動脈硬化は、身体に血液を送る重要な動脈が硬く狭くなることでさまざまな問題が生じる病気です。今回の記事では、動脈硬化とはどのような病気なのか、治療法や生活習慣で気をつけるべき点を解説します。

監修医師:
佐藤 浩樹(医師)
目次 -INDEX-
動脈硬化の基礎知識

動脈硬化とはどのような状態ですか?
動脈硬化にはいくつの種類がありますが、太い動脈にできやすいものとして、粥状(じゅくじょう)動脈硬化(アテローム動脈硬化)があります。
動脈は、心臓から身体や脳に血液を送り、栄養分や酸素を届ける役割を果たしています。心臓が収縮し、全身に血液が送り出されるときには、動脈に強い圧力がかかります。その圧力に耐えるため、動脈は内側から内膜、中膜、外膜の3層構造になっています。
アテローム動脈硬化の場合、動脈の壁の内膜の下の部分に、変性あるいは余分なコレステロールがたまり、粥状物質(プラーク)が形成されています。
アテローム動脈硬化により、血管が狭くなる、あるいはプラークが破裂し血栓となることで、さまざまな病気が引き起こされることがあります。
動脈硬化のそのほかのタイプとして、主に高血圧が原因となり脳や腎臓の細い動脈が硬くなる細動脈硬化、動脈の中膜にカルシウムがたまって硬くなる中膜硬化(メンケルベルグ型硬化)があります。
動脈硬化を放置するとどうなるのか教えてください
また、プラークが破れて血管の内部に広がることで血管の中で血栓ができやすくなります。すると、血管が詰まり、心筋梗塞や脳梗塞にまで至るケースもあります。
また、身体の細い血管の動脈硬化によってもさまざまな症状が引き起こされることもあります。例えば、足の股から先の動脈硬化が起こる、末梢動脈疾患(Peripheral Artery Disease、 PAD)などがあります。PADは、歩くと痛くなるが、休むとまた歩くことができるようになる間欠性跛行(かんけつせいはこう)や、安静にしている際にも痛みや冷感を感じるようにもなります。
さらに、胸やお腹の大動脈に動脈硬化が起こり、コブ状に膨れる大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)が生じることもあります。これは、破裂すると出血し生命がおびやかされることもある病気です。
動脈硬化の原因を教えてください
- 総コレステロールの増加
- LDL(悪玉)コレステロールの増加
- トリグリセライド(中性脂肪)の増加
- HDL(善玉)コレステロールの低下
- 糖尿病(耐糖能障害)
- 高血圧
- 肥満(メタボリックシンドローム)
- 加齢
- 飲酒
アテローム性動脈硬化は、これらのような危険因子の重複によって発症リスクが高まります。
動脈硬化を治療することはできますか?
しかし、生活習慣の改善や薬物療法によって、動脈硬化の進行や心臓・脳などの病気の予防が可能となります。
動脈硬化と言われたら気を付けること

動脈硬化と言われた人が食生活で気を付けることを教えてください
まず、LDLコレステロール値が高いといわれた場合は、コレステロール摂取を1日200mg未満に抑えることで、LDLコレステロールを減らす効果が期待できます。
ただし、目標値は個々のコレステロール値や、合併症などによって異なります。
LDLコレステロールが高い方が控えた方がよい食品には、以下のようなものがあります。
- コレステロールの多い食品(レバー、臓物類、卵類)
- 飽和脂肪酸が多い食品(お肉の脂身、ひき肉、鶏皮、バター、ラード、ヤシ油、生クリーム、洋菓子)
- トランス脂肪酸が多い食品(マーガリン、洋菓子、スナック菓子、揚げ菓子)
一方、食物繊維が豊富な食品である、野菜やきのこ、こんにゃく、大豆製品、未精製の穀物類は積極的に摂るようにしましょう。
高血圧を指摘されている方の場合は、減塩を意識した食生活を取り入れましょう。
高血圧の方の1日摂取食塩量は、6g未満が勧められています。
野菜もしっかりと食べるようにしましょう。くだものも摂りたいところですが、肥満や中性脂肪が高い方は過剰摂取は避けましょう。
総じて、動脈硬化を予防するためには、伝統的な日本食を意識し、減塩を心がけた食事をとるようにするとよいでしょう。
過食やアルコールの過剰摂取は避け、適正体重を保つことが大切です。
動脈硬化の人が生活のなかで気を付けることはありますか?
脂質異常症を指摘されている場合は、毎日30分以上の有酸素運動が動脈硬化予防に効果的です。
有酸素運動としては、ウォーキングや早歩き、水泳、ベンチステップ運動などが挙げられます。
これらを、ややきついなと感じる程度に行います。
1日合計30分以上の運動を、週3回以上、できれば毎日行うことを目標にしましょう。
ただし、動脈硬化の重症度によっては激しい運動を避けた方がよい方もいます。
運動に関しては、主治医に相談のうえどれくらい行うのがよいかを決めるとよいでしょう。
動脈硬化と診断されたらタバコはやめた方がよいですか?
喫煙は、心臓の重要な血管である冠動脈の疾患や、脳卒中の危険因子となります。
たとえ、1日1本の喫煙によってもそのリスクが上昇します。
また、動脈硬化が原因となる、腹部大動脈瘤や末梢動脈疾患の危険因子ともなります。
喫煙は、それ自体が動脈硬化症によるさまざまな病気のリスクを高めるだけではありません。糖尿病や脂質異常症、メタボリックシンドロームなどの発症の危険性を高めることにより、間接的に動脈硬化による病気のリスクを上昇させることも明らかになっています。
さらに、受動喫煙によってタバコを吸わない方にも影響を与えます。
一方、腹部大動脈瘤の場合、禁煙後25年で、非喫煙者と病気になるリスクは同程度になると示されたデータもあります。動脈硬化といわれたら、タバコはやめましょう。
動脈硬化の治療法

動脈硬化と診断されたらどのような治療が始まりますか?
生活習慣の改善に加えて、脂質、血圧、血糖値をコントロールするための薬物療法が行われます。
脂質異常症に関しては、LDLコレステロールの値や、すでに心疾患を発症しているかなどによって目標とするコレステロールやトリグリセライドの値などを設定します。
LDLコレステロールが高い場合には、スタチンを中心とし、小腸コレステロールトランスポーター阻害薬、陰イオン交換樹脂、プロブコールなどが投与されます。
トリグリセライドが高い場合には、フィブラート系薬、ニコチン酸誘導体などが選択されます。
また、動脈硬化による病気のひとつに、動脈硬化性下肢閉塞性動脈疾患があります。この病気では、慢性的な動脈硬化によって特に足の動脈が詰まってしまい血流が低下し、いろいろな症状が現れることがあるものです。
間欠性跛行などがみられる場合、手術によって血流が改善するよう、血行再建術が行われるケースもあります。
動脈硬化は病院での治療を受けることで治癒しますか?
しかし、適切な治療を行うことで、動脈硬化の進行をおさえ、心臓や脳、身体に起こるさまざまな病気の予防は可能となります。
動脈硬化の治療期間を教えてください
血圧やコレステロールの数値が改善しても、自己判断で薬をやめると再び進行することがあります。医師の指示に従い、定期的に検査を受けることが重要です。
編集部まとめ

動脈硬化は、生活習慣によって進行しやすい病気ですが、適切な食事・運動・禁煙を続けることで予防や進行を防ぐことも可能です。血圧・血糖・脂質の数値を定期的に確認し、必要に応じて医療機関で相談しましょう。早めの対策が、将来の重大な病気を防ぐ第一歩です。
参考文献




