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「ウイルス性胃腸炎」の初期症状はご存知ですか?進行すると現れる症状も解説!

 公開日:2025/11/20
「ウイルス性胃腸炎」の初期症状はご存知ですか?進行すると現れる症状も解説!
ウイルス性胃腸炎は、毎年冬を中心に多くの方がかかる身近な感染症です。学校や保育園、介護施設などでは集団発生につながりやすく、家庭内でも一人が発症すると家族全員に広がることがあります。症状そのものは数日で治まることが多いものの、回復後もウイルスが排出され続ける点が特徴です。症状がない時期でも周囲にうつす可能性があるため、発症期だけでなく回復期の対応も大切です。

本記事では、原因や流行時期、症状の経過、診断と治療、自宅での過ごし方、そして予防の工夫について解説します。
林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)

ウイルス性胃腸炎の概要

ウイルス性胃腸炎の概要

ウイルス性胃腸炎とはどのような病気ですか?

ウイルス性胃腸炎は、胃や腸にウイルスが感染し、粘膜に炎症が起こることで発症する感染症です。細菌による食中毒と違い、抗菌薬は効かず、身体が持つ免疫の力で回復を待つ必要があります。特に流行期には、家庭内や学校、保育園、介護施設など集団で生活する場で広がりやすいのが特徴です。症状が治まった後も便のなかにウイルスが残り続けるため、本人は元気でも周囲へ感染が広がることがあります。

ウイルス性胃腸炎の原因を教えてください

主な原因となるウイルスは、ノロウイルス、ロタウイルス、サポウイルス、アデノウイルスです。ノロウイルスは強い感染力を持つため学校や介護施設などで大規模な集団発生を起こすことがあります。ロタウイルスは特に春先に乳幼児で重症例を引き起こすことがあり、入院が必要となる場合があります。サポウイルスやアデノウイルスも散発的な発生源となり、いずれも便や吐物を介した接触や、食品・水を通じて経口的に感染します。

ウイルス性胃腸炎が流行しやすい時期はいつですか?

発生は1年を通じて見られますが、特に11月から1月にかけて増加する傾向があります。年によっては立ち上がりが遅れ、2月から3月にかけて患者数が多い状態が続くこともあります。冬季はノロウイルスが主な原因で、その後は春先にロタウイルスの流行が目立ちます。夏は全体として少なくなりますが、サポウイルスやアデノウイルスが散発的に確認されます。つまり、冬に大きな流行が見られる一方で、年間を通じてさまざまなウイルスが関与するのが特徴です。

参照:『感染性胃腸炎 流行状況 2024年シーズン』 (東京都感染症情報センター)

ウイルス性胃腸炎の症状

ウイルス性胃腸炎の症状

ウイルス性胃腸炎の初期症状を教えてください

ウイルス性胃腸炎は、感染してから1〜2日の潜伏期間を経て発症します。最初に現れるのは吐き気嘔吐で、全身のだるさや頭痛、微熱を伴うことがあります。発症の仕方が急である点が特徴的です。初期の段階では食欲が急に落ち、水分や食事を受けつけにくくなることも少なくありません。

ウイルス性胃腸炎は進行するとどのような症状が現れますか?

嘔吐が落ち着くと、次に水のような下痢が繰り返し出るようになります。腹痛を伴う場合も多く、差し込むような痛みやお腹のハリを訴える方もいます。発熱は軽度であることが多いですが、ロタウイルスでは38度を超える発熱が続くこともあります。症状のピークは1〜2日間で、その後は少しずつ改善に向かうのが一般的です。しかし体力が低下していると回復が遅れ、症状が4〜5日以上続くこともあります。繰り返す下痢や嘔吐により、体内の水分と電解質が急速に失われ、お口の渇きや尿量の減少、皮膚の乾燥、ふらつきなど脱水のサインが目立ってきます。

ウイルス性胃腸炎を放置するとどうなるのかを教えてください

軽症であれば自然に回復しますが、放置して水分を摂らずにいると脱水が進行し、重症化する危険があります。脱水が進むと、意識がもうろうとしたり、けいれんが起こったりする場合があり、特に乳幼児や高齢の方では命に関わることもあります。嘔吐や下痢が続く状態で十分な水分補給ができないと、短期間で急速に脱水へ進むため、自宅で様子をみるだけでなく必要に応じて医療機関を受診するようにしましょう。

ウイルス性胃腸炎には合併症や後遺症はありますか?

最も注意すべき合併症は脱水です。水分だけでなくナトリウムやカリウムといった電解質が失われるため、循環不全や腎機能障害に至ることがあります。ロタウイルスでは、まれに脳炎や脳症といった重い合併症が報告されており、意識障害やけいれんを引き起こすことがあります。乳幼児や高齢の方では脱水から腎臓や心臓への負担が増し、全身状態が急激に悪化するケースもあります。一方で、典型的なウイルス性胃腸炎は後遺症を残すことはほとんどないといわれています。数日〜1週間程度で消化管の働きは回復し、普段通りの食事が可能になります。

ウイルス性胃腸炎の検査と診断、治療法

ウイルス性胃腸炎の検査と診断、治療法

ウイルス性胃腸炎が疑われるときは何科を受診すればよいですか?

小児であれば小児科、大人であれば内科を受診します。吐き気や下痢が強く水分が摂れない、尿が極端に減っている、意識がもうろうとしているといった場合は、救急外来での対応が必要です。乳幼児や高齢の方、基礎疾患のある方は軽い症状でも早めに受診しましょう。

ウイルス性胃腸炎の病院での検査方法と診断基準を教えてください

診断は基本的に症状の経過と流行状況をもとに行われます。嘔吐や水様性下痢、発熱などの典型的な症状があれば、臨床的にウイルス性胃腸炎と判断します。必要に応じて便を用いた迅速検査でノロウイルスやロタウイルスを調べることもありますが、すべての患者さんに行われるわけではなく、乳幼児や高齢の方など保険で認められた条件に当てはまる場合に限られます。血液検査で脱水や電解質の異常を確認することもあります。

病院ではウイルス性胃腸炎をどのように治療しますか?

原因となるウイルスに効く特効薬は存在しないため、治療は対症療法が中心です。軽症例では経口補水液による水分補給を続けながら経過をみます。吐き気が強く水分が摂れない場合や脱水が進んでいる場合には、点滴で水分と電解質を補います。症状に応じて吐き気止めや整腸剤、解熱剤が処方されることもあります。抗菌薬は効果がないため使用しません。重症例では入院が必要となり、点滴管理や全身状態の観察を行います。

ウイルス性胃腸炎にかかったときの自宅での過ごし方を教えてください

自宅では安静にし、経口補水液を少量ずつこまめに飲むことが大切です。食欲が戻ったらおかゆやうどんなど消化のよい食事から始め、牛乳や脂っこい食事は避けましょう。感染を広げないため、吐物や便は使い捨て手袋を着けて処理し、処理後は次亜塩素酸ナトリウムを用いて床やトイレを消毒します。衣類や寝具は熱湯や漂白剤を使って洗濯し、石けんと流水による手洗いを徹底してください。症状が治まっても便からは1〜2週間ほどウイルスが排出され続けるため、回復期も衛生対策を続けることが重要です。

編集部まとめ

編集部まとめ ウイルス性胃腸炎は、冬に多くみられる身近な感染症です。原因となるノロウイルスやロタウイルスは感染力が強く、少量でも感染します。急な吐き気や嘔吐、水のような下痢、軽い発熱が主な症状で、乳幼児や高齢の方では脱水が重症化につながることがあります。多くは数日で回復しますが、水分がとれないときや症状が強いときは早めに受診しましょう。

予防には、石けんと流水による手洗い、食品の十分な加熱、トイレや調理器具の次亜塩素酸ナトリウムによる消毒が役立ちます。症状が治まった後も便からウイルスはしばらく出続けるため、回復してからも衛生対策を続けることが大切です。

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