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「便秘の治療薬」にはどんな種類があるの?市販薬と処方薬の違いも解説!

 公開日:2025/11/25
「便秘の治療薬」にはどんな種類があるの?市販薬と処方薬の違いも解説!

便秘は誰にでも起こる身近な症状ですが、軽く考えると生活全体に影響を及ぼすことがあります。お腹のハリや食欲の低下、集中力が続かないといった不快感に加え、長引けば痔や大腸の病気の原因になることもあります。改善には食事や水分、運動といった生活習慣の見直しが基本ですが、それだけでは十分でない場合もあります。そこで役立つのが便秘薬です。市販薬と処方薬にはそれぞれ役割があり、正しく理解して生活習慣の工夫と組み合わせれば、より快適な毎日を取り戻すことができます。

本記事では、病院で処方される薬の種類や効果、市販薬との違い、薬との付き合い方を解説します。

林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)

病院の便秘治療で用いられる薬の種類と効果

病院の便秘治療で用いられる薬の種類と効果

病院で行われる便秘の主な治療法を教えてください

病院で便秘を相談すると、まず生活習慣を整えることから始められます。食事内容や水分摂取、運動習慣、排便リズムなどを確認し、改善のための指導を行います。こうした工夫で腸の動きが整い、自然な排便が期待できることも少なくありません。

それでも改善が得られない場合には薬による治療を検討します。病院では症状の程度や便秘のタイプ、併存する病気や服薬状況を踏まえ、適した薬を選んで処方します。必要に応じて用量を調整したり、複数の薬を組み合わせたりすることもあり、一人ひとりに合った治療を組み立てます。

便秘の薬物療法で用いられる薬の種類にはどのようなものがありますか?

病院で使われる便秘薬は、作用の仕組みによって5つに分類されます。

  • 浸透圧性下剤
  • 刺激性下剤
  • 膨張性下剤
  • 上皮機能変容薬(腸管分泌促進薬)
  • 胆汁酸調整薬

それぞれが異なる仕組みで便秘にアプローチしており、便の性状や腸の働き方に応じて使い分けられます。どの薬を選ぶかは、患者さんの便秘のタイプや身体の状態によって判断します。

便秘薬の種類ごとに効果を教えてください

便秘薬の効果を整理すると次のとおりです。

薬の種類 代表的な薬 効果の特徴
浸透圧性下剤 酸化マグネシウム
ラクツロース
腸管内に水分を引き込み便をやわらかくする。便が硬くて出にくい便秘に有効である。
刺激性下剤 センノシド
ビサコジル
大腸の神経を刺激して蠕動運動を強め、便を押し出す。数時間で効果が出る。
膨張性下剤 ポリカルボフィル
カルメロース
水分を吸収して便のかさを増し、その重みで腸を刺激して自然な排便を促す。
上皮機能変容薬
(腸管分泌促進薬)
ルビプロストン
リナクロチド
腸上皮に作用して水分分泌を増やし、便をやわらかくする。リナクロチドには腸の痛みを和らげる作用もある。
胆汁酸トランスポーター阻害薬 エロビキシバット 胆汁酸を大腸にとどめ、水分分泌を増やすと同時に蠕動運動を活発にする。

便秘薬には即効性のあるものと穏やかに効くものがあり、刺激性下剤は短時間で作用する一方、浸透圧性や膨張性下剤は長期の治療にも適しています。加えて、ルビプロストンやリナクロチド、エロビキシバットなどの新しい薬は、腸の分泌や胆汁酸の働きを利用するなど従来と異なる仕組みで効果を発揮します。

便秘の市販薬の成分と効果、処方薬との違い

便秘の市販薬の成分と効果、処方薬との違い

主な市販の便秘薬の成分を教えてください

市販の便秘薬は、刺激性下剤が中心です。代表的なのはセンノシドダイオウ由来のアントラキノン系成分、ジフェニルメタン系のビサコジルで、大腸を刺激して排便を促します。そのほか、腸に水分を引き込んで便をやわらかくする酸化マグネシウムを成分とした浸透圧性下剤も市販されています。これらは単独の成分で販売されるものもあれば、複数の成分を組み合わせて作用を補うように作られた製品もあります。

参照:
『慢性便秘の治療―‌大腸刺激性下剤の種類とその使い方―』(日本内科学会雑誌)
『OTC医薬品の有効性および安全性の科学的根拠に関する メタ解析: OTC緩下剤の評価』(アプライド・セラピューティクス)

市販の便秘薬には便秘を改善する効果はありますか?

市販薬にも便秘を改善する効果はあります。旅行や環境の変化などによる一過性の便秘や、食生活の乱れで起こる軽度の便秘に適しています。刺激性下剤は短時間で排便を促し、浸透圧性や膨張性下剤は自然な排便を助けるのが特徴です。ただし長期的な使用には向かず、便秘が続く場合には医師の診察が必要です。

市販薬と処方薬の違いを教えてください

市販薬は誰でもすぐに購入でき、穏やかな効果で一時的な便秘に対応する目的で用いられます。処方薬は診察を受けてから選ばれるため、体質や持病、ほかの薬との関係を考慮した調整が可能です。さらに、ルビプロストンやリナクロチド、エロビキシバットのような新しい作用機序の薬は市販されておらず、慢性便秘や強い症状では処方薬による治療が必要です。

便秘の人が薬と上手に付き合うために知っておきたいポイント

便秘の人が薬と上手に付き合うために知っておきたいポイント

便秘の処方薬には副作用はありますか?

処方薬は効果が期待できる反面、副作用が出ることもあります。酸化マグネシウムは腸に水分を集めて便をやわらかくしますが、腎機能が弱っている方では体内にマグネシウムがたまり、高マグネシウム血症を起こすことがあります。刺激性下剤は大腸を強く動かすため、腹痛下痢を伴うことがあります。さらに、ルビプロストンリナクロチドといった新しい薬でも、吐き気下痢などの副作用が報告されています。このように薬の種類によって起こりやすい副作用は異なります。

便秘の市販薬の副作用を教えてください

市販薬にも副作用があります。刺激性下剤では腹痛や下痢が起こることがあり、浸透圧性下剤は過量に服用すると電解質の乱れや脱水を招くことがあります。膨張性下剤は水分が足りない状態で飲むと腸につかえたような不快感や膨満感を生じることがあります。市販薬であっても成分によって起こりやすい副作用は異なります。

便秘の処方薬や市販薬を飲み続けると何か悪いことはありますか?

便秘薬を長いあいだ使い続けると、腸が薬の刺激や作用に慣れてしまい、自力で排便しにくくなることがあります。その結果、同じ量では効果が弱まり、より強い薬や量の増加が必要になることがあります。また、便秘の原因が大腸がん内分泌の病気などにある場合、薬によって症状が一時的に和らぐことで病気が隠れ、診断や治療の開始が遅れてしまう危険もあります。

薬に頼らずに便秘を解消する方法を教えてください

薬を使わずに便秘を改善するには、生活習慣の工夫が基本です。野菜や果物、豆類、海藻、きのこなど食物繊維を含む食品をとることで、便の量とやわらかさが整いやすくなります。水分をこまめにとることも大切で、便の通過を助けます。

運動も有効で、ウォーキングやストレッチなどの軽い運動は腸の動きを刺激します。さらに、朝食後にトイレに行く習慣をつけると腸のリズムが整いやすくなり、自然な排便につながります。十分な睡眠をとり、ストレスを減らすことも腸の働きを支える要素です。

編集部まとめ

編集部まとめ
便秘は軽く見られがちですが、放っておくと生活の質を下げたり、思わぬ健康リスクにつながったりします。病院で処方される薬は症状に応じて選ばれ、市販薬は一時的な便秘への対応に適しています。それぞれの役割を理解して、状況に合わせて使い分けることが大切です。

薬は便秘改善の助けになりますが、根本から整えるには生活習慣の見直しが欠かせません。食事や運動、水分補給や睡眠を意識しながら、薬を上手に取り入れることで、便秘の悩みが減り、普段の生活をより快適に送れるようになります。

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