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「痛風の前兆となる初期症状」はご存知ですか?なりやすい人の特徴も解説!

 公開日:2025/12/22
「痛風の前兆となる初期症状」はご存知ですか?なりやすい人の特徴も解説!

痛風は高尿酸血症を背景に突然起こる関節炎で、強い痛みを特徴とします。発作は夜間や早朝に始まることが多く、関節が赤く腫れて熱を持ち、風があたるだけでも痛いと表現されるほどの苦痛を伴います。骨折と勘違いするほどの痛みで歩行や睡眠が妨げられることもあり、かつて贅沢病と呼ばれましたが、実際には遺伝的要因や腎機能、肥満、脱水、ストレス、薬の影響などが複雑に関わって発症します。発作の前には関節の違和感や軽い痛みが出ることがあり、早期に受診すれば症状を抑えられる可能性があります。逆に放置すると関節の変形や腎障害、心筋梗塞や脳梗塞などの合併症につながる危険があります。

この記事では痛風の仕組みや原因、前兆や初期症状、痛みの特徴、医師による診断と治療、生活習慣改善の方法を解説します。

林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)

痛風とは

痛風とは

痛風とはどのような病気ですか?

痛風は、血液中の尿酸が高い状態が続き、関節に尿酸結晶が沈着して炎症を起こす病気です。医師は診察で足の親指の付け根に突然の激しい痛みや赤み、腫れを確認すると痛風発作と診断します。発作は一見すると一過性の炎症に思えますが、繰り返すうちに関節の組織が傷み、変形や運動障害につながります。さらに尿酸が腎臓に沈着すると尿路結石や腎機能障害が進行し、関節の病気にとどまらず全身の健康にも影響を及ぼします。

痛風の原因を教えてください

痛風は、体内に尿酸が過剰に蓄積することで起こります。尿酸はプリン体という物質の代謝で生じる老廃物で、本来は腎臓から尿に排泄されます。尿酸が過剰に作られたり、排泄が十分に行われなかったりすると血液中の尿酸値が上昇し、結晶として関節に沈着します。

食事や生活習慣の要因も関係します。プリン体を多く含む白子やレバー類、イワシやカツオなどの青魚、エビなどの甲殻類を多く食べることは尿酸値を上げやすい要因です。アルコール、特にビールや日本酒は尿酸の排泄を妨げ、清涼飲料水に含まれる果糖も尿酸の産生を促します。過食によるエネルギー過多、脱水、腎機能低下も尿酸値を高める原因です。

参照:『食品・飲料中のプリン体含有量』(公益財団法人痛風・尿酸財団)

痛風になりやすい人に特徴はありますか?

痛風は40〜50歳代の男性に多くみられ、女性では閉経後に増加します。肥満がある方や日常的に多量の飲酒をする方は尿酸値が高くなりやすく、発症の可能性が高まります。糖尿病や高血圧、脂質異常症など生活習慣病を併せ持つ場合もリスクが上昇します。

また、家族に痛風の患者さんがいる場合は遺伝的な体質が関与することがあり、同じように発症しやすい傾向があります。さらに、運動後に水分補給を十分にしない方や、日常的に脱水を繰り返す方は尿酸が体内で濃縮されやすく、痛風を起こしやすい特徴があります。

参照:
『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版』(日本痛風・核酸代謝学会)
『高尿酸血症・痛風の診断と治療』(山中 寿、日本内科学会雑誌, 2015, 104巻, 9号, p. 2039-2045)

痛風の前兆や初期症状と発作中の痛み

痛風の前兆や初期症状と発作中の痛み

痛風には前兆がありますか?

痛風の発作の直前には、関節に普段と違う感覚が出ることがあります。代表的なのは、違和感や軽い痛み、関節が熱を帯びるような感覚です。痛みが出る前に、こうした軽い異常として現れる場合があります。ただし、この前兆はすべての方にみられるわけではありません。

痛風の初期症状を教えてください

初期の段階では、関節に赤みや腫れ、熱感が現れます。最初は違和感軽い不快感として始まり、関節に触れたり体重をかけたりしたときに普段とは異なる感覚を覚えることがあります。症状は夜中から早朝に出やすく、朝になると腫れや赤みがはっきり目立つ場合もあります。典型的には足の親指の付け根に起こりますが、足首や膝などほかの関節に出ることもあります。

痛風の発作はどのような痛みですか?

痛風の発作では、症状が急速に悪化し、関節が耐えがたいほどの痛みにおそわれます。患者さんは「布団に触れるだけでも我慢できない」と表現することがあり、関節は赤く腫れ上がり、強い熱感を伴います。歩行や就寝は大きく妨げられ、日常生活に深刻な支障をきたします。症状は通常数日から1週間ほど続き、治まった後も繰り返すことが多いため注意が必要です。

痛風を放置するとどうなりますか?

放置を続けると、関節に尿酸結晶が蓄積し、耳や肘、膝などに硬いしこり(痛風結節)ができます。結節が大きくなると関節が変形し、動かしにくくなります。さらに尿酸が腎臓に沈着して尿路結石を起こすことがあり、腰の強い痛みや血尿を伴います。腎機能が長期的に低下する場合もあり、慢性腎臓病へ進行する危険があります。また、動脈硬化が進みやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞といった重大な病気のリスクも高まります。

痛風の症状への対処法

痛風の症状への対処法

痛風が疑われるときは何科を受診しますか?

痛風が疑われる症状が出たときは、まず内科を受診するのが基本です。内科医が血液検査などで尿酸値を確認し、必要に応じて痛風かどうかを診断します。腎臓の病気や生活習慣病を併せ持つ場合には腎臓内科、関節炎が複雑に進んでいる場合にはリウマチ内科でより詳しい診察を受けることがあります。

痛風の検査方法と診断基準を教えてください

血液検査で血清尿酸値を測定し、7.0mg/dL以上であれば高尿酸血症と診断します。痛風の症状があるときには関節液を採取し、顕微鏡で尿酸結晶を直接確認して診断を確定します。さらに画像検査によって関節や腎臓への尿酸沈着の有無を評価することもあります。診断は症状と検査の結果を組み合わせて行います。

参照:『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版』(日本痛風・核酸代謝学会)

病院で治療すれば痛風は治癒しますか?

痛風は、一度治療して終わる病気ではなく、長期的に尿酸値を管理しながら付き合っていく必要がある慢性疾患です。急性期の激しい痛みは薬で抑えることができますが、尿酸値が高い状態を放置すると、再び発作を起こしたり、関節に痛風結節ができたりするおそれがあります。

そのため、発作を繰り返さないためには、薬による尿酸値のコントロールと生活習慣の改善を両立させることが大切です。尿酸降下薬を用いて血清尿酸値を原則6.0mg/dL以下、痛風結節がある場合や重症の方では5.0mg/dL以下を目標に調整します。あわせて、アルコールや果糖を多く含む飲料を控え、プリン体の多い食品を摂りすぎないように注意しましょう。十分な水分をとって尿量を確保し、野菜や乳製品を取り入れた食事を心がけることも有効です。

参照:『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版』(日本痛風・核酸代謝学会)

痛風の発作への対処法を教えてください

発作時は患部を安静にし、冷却して炎症を抑えます。薬物療法としてはNSAIDs、コルヒチン、ステロイド が有効です。コルヒチンは前兆や初期症状の段階で用いると頓挫効果が期待でき、NSAIDsは短期間に適切量を投与して炎症を鎮めます。NSAIDsが使いにくいときはステロイドを選択します。

編集部まとめ

編集部まとめ
痛風は高尿酸血症を背景に起こる関節の病気で、足の親指の付け根に赤みや腫れが出て、強い痛みに発展することがあります。放置すると関節の変形や腎臓の障害だけでなく、心筋梗塞や脳梗塞といった全身の病気につながるおそれもあります。

診断は尿酸値の測定や関節液の検査で行われ、治療では急な炎症を和らげる対応と、尿酸値を下げて再発を防ぐ対応を組み合わせます。発作を繰り返さないためには、薬による治療だけでなく、日々の工夫が大切です。食生活や飲酒習慣を見直し、水分をしっかりとること、体重を適正に保つことを心がけましょう。

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