「ADHDの薬」を服用することでできなくなることはご存知ですか?【医師監修】

ADHDは、不注意や多動性・衝動性などの特性によって、学校生活や仕事などの日常生活に影響を及ぼす疾患です。ADHDの治療には、環境を整える工夫や精神療法などに加えて、薬物療法があります。本記事では、ADHDの治療薬の種類、その効果や副作用、服用時の注意点を解説します。

監修医師:
前田 佳宏(医師)
目次 -INDEX-
ADHDの概要と主な治療法

ADHDとはどのような病気ですか?
- 細部に注意を払えない
- 課題や遊びで注意を維持することが難しい
- 課題や活動に必要なものをなくしやすい
- 外からの刺激によってすぐに気が散る
- もの忘れが多い
- 手足を落ち着きなく絶えず動かしたり、身体をくねらせたりする
- 離れるべきではない状況で、席を離れる
- 順番を待つことが難しい
ADHDはこのような症状が少なくとも6ヶ月以上持続し、日常生活に支障をきたす疾患です。なお、これらの特性は12歳以前に現れるとされています。
ADHDは薬で治癒しますか?
ADHDの主な治療法を教えてください
精神療法は、症状そのものへの理解を深めて、それに対処するためのスキルを身につけることを目的とします。その一つに認知行動療法があります。考え方や行動の癖やパターンを見直し、衝動的な行動や注意の偏りなどを少なくしていきます。そのほかに、ペアレントトレーニングが行われることもあります。親が子どもの褒め方や指示の出し方など具体的な養育のスキルを学びます。
薬物療法は、このような非薬物療法を行ってもなお、改善しない場合に検討されます。AHDHで使用するのは、脳内の神経伝達物質に作用する薬剤で、症状の緩和を目指します。
ADHDの治療に用いられる薬の種類と効果

ADHDの治療で使用される薬の種類を教えてください
ADHDの治療薬にはどのような効果がありますか?
不注意の改善としては、集中力の向上、計画性・実行機能の改善、ミスの減少があります。具体的には、気が散りにくくなり、課題や作業に対する集中力を長く持続できるようになります。また、作業の順序立てや、目標に向かって物事をやり遂げる能力が向上し、不注意によるケアレスミスや忘れ物などの頻度が減少する可能性があります。
多動性・衝動性が改善すると、身体の落ち着きのなさが減り、授業中や会議中など、じっとしているべき状況で静かに過ごしやすくなります。また、衝動的な傾向が抑えられると、対人関係でのトラブルや、危険な行動をとるリスクの軽減につながることが期待されます。
どのような人がADHDの薬を服用できますか?
ADHDの薬で生じる可能性がある副作用と注意点

ADHDの薬の副作用を教えてください
中枢神経刺激薬であるメチルフェニデート塩酸塩徐放剤は、食欲不振、不眠、頭痛、動悸、血圧上昇などを生じる可能性があります。非刺激薬であるアトモキセチンは、食欲不振、吐き気・嘔吐、頭痛、眠気、血圧上昇、心拍数増加などの副作用が起こりえます。グアンファシン塩酸塩徐放剤は眠気、血圧低下、徐脈(脈が遅くなること)などの副作用が起こりえます。
なお、ADHDの薬では、頻度は高くありませんがQT延長と呼ばれる心電図異常が生じることがあり、重篤な不整脈を引き起こす可能性があります。
また、薬のアレルギーは、すべての薬剤で起こりえます。かゆみや発疹(皮膚が赤くなる、蕁麻疹が出る)がある場合はアレルギーの可能性があります。
ADHDの薬を服用することでできなくなることはありますか?
ADHDの薬に依存性はありますか?
一方、非刺激薬であるアトモキセチンは依存性の問題がないとされています。グアンファシン徐放剤も依存の問題が少ないといわれています。
参照:
『ADHD(注意欠如・多動症)』(NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター)
『Q69:注意欠如・多動症(ADHD)にはどの様な治療法がありますか?』( 一般社団法人 日本小児神経学会)
『ADHDについて』(信州大学医学部 分子細胞生理学教室)
ADHDの薬を服用する際の注意点を教えてください
また、ADHDの薬は医師の指示にしたがって正確に服用します。自己判断で服用量を変更したり、服用を中止したりしないでください。副作用などついて気になることがあれば、主治医や薬剤師に相談します。
副作用に関する注意点もあります。食欲不振や不眠などの副作用は、服用開始時や増量時に一時的に現れるとされていますが、症状が続く場合や重篤な副作用が現れた場合は、すぐに主治医に相談してください。薬剤によっては、QT延長などの副作用が現れる可能性があるため、定期的な受診が必要です。
編集部まとめ

ADHD治療薬は、脳内の神経伝達物質の働きを調整することで、不注意や多動性・衝動性などの症状を和らげます。治療薬には中枢神経刺激薬と非刺激薬があります。効果が期待できる一方で、食欲不振や眠気などの副作用がみられる可能性があります。また、依存性が指摘されている薬剤もあります。医師の判断によって適切な薬物治療が選択されます。ただし、薬物療法はあくまで治療の一部であり、環境調整や精神療法と組み合わせることで効果が期待できます。医師と相談しながら、ご自身の症状や状況に合った治療法を選択しましょう。
参考文献




