「適応障害とうつ病の違い」はご存知ですか?それぞれの診断基準も解説!【医師監修】

適応障害とうつ病は、一見すると症状が似ているため混同されることがあります。職場や学校で強いストレスを感じて気分が落ち込んだり、眠れなくなったりしたときに、それが適応障害によるものなのか、うつ病によるものなのか、判断に迷う方も少なくありません。この記事では、適応障害とうつ病それぞれの特徴、区別するポイントや検査・診断の流れ、治療法を解説します。

監修医師:
前田 佳宏(医師)
目次 -INDEX-
適応障害とうつ病の違い

適応障害とはどのような病気ですか?
- 憂うつな気分(抑うつ気分)
- 不安感
- イライラ
- 集中力の低下
- 不眠
このような精神症状のほか、食欲不振、倦怠感、動悸などの身体症状が生じることもあります。また遅刻や欠勤、集中力低下によるミスなど、職場や学校で問題が起こる場合もあります。こうした症状により日常生活に支障を来たし、本来その方が持っている社会的・職業的な能力が発揮できない状態を適応障害といいます。
うつ病の概要を教えてください
- 抑うつ気分
- 興味、喜びの喪失
- 不眠または過眠
- 気力の減少もしくは無価値感
- 体重の変化(減少、増加)
- 希死念慮、自殺企図
抑うつ気分とは、絶望感・虚しさ・悲しみなどを伴う強い憂鬱な気分を指します。また、無価値観とは、自分には価値がない、生きている意味がない、など自分の存在そのものを否定的に感じてしまうことです。うつ病が重症化すると、死んでしまいたいと考えたり(希死念慮)、自殺しようとする行動(自殺企図)がみられたりします。
適応障害とうつ病は何が違いますか?
そして、適応障害とうつ病はその経過にも大きな違いがあります。適応障害の場合、ストレス因子から離れると症状は徐々に改善します。しかし、うつ病は原因と考えられていた問題から離れても、気分が回復せず、症状が持続します。
適応障害とうつ病を自分で見分ける方法を教えてください
病院での適応障害とうつ病の検査法と診断基準

適応障害が疑われる場合には病院でどのような検査が行われますか?
また、心理検査も実施される場合があります。心理検査とは、患者さんの気分や思考、行動の特徴や心理状態を質問紙や面接、課題などを通じて客観的に評価する検査のことです。病院ではこれらの問診、検査を実施して、適応障害かどうか、あるいはほかの病気の可能性がないかを評価します。
うつ病が疑われる際の検査方法を教えてください
適応障害とうつ病の診断基準を教えてください
- 精神疾患の診断・統計マニュアル第5版改訂版(DSM-5-TR)
- 国際疾病分類第11版(ICD-11)
今回はDSM-5-TRによる診断基準を解説します。
適応障害の診断基準は、特定可能なストレス因子にさらされてから、3ヶ月以内に精神症状、身体症状が出現することとされています。 さらにその症状は、以下のいずれかもしくは両方を満たす必要があります。
- ストレス因子に対して、不釣り合いな強い苦痛であること
- この症状によって社会的または職業的機能が大きく損なわれている。
また、ストレス因子が除去されると症状は徐々に改善し、ストレスがなくなってから6ヶ月以上は持続しないこととされています。
うつ病の診断基準は、以下の9つの症状項目のうち5つ以上が2週間の間ほぼ毎日続くことです。そのうち1つは、抑うつ気分または興味、喜びの喪失である必要があります。
- 抑うつ気分
- 興味、喜びの喪失
- 体重変化または食欲異常
- 不眠または過眠
- 精神運動の焦燥または制止
- 疲労感または気力減退
- 無価値感または過剰な罪悪感
- 思考力や集中力の低下、または決断困難
- 死についての反復思考や自殺企図
適応障害もうつ病も、これらの症状がほかの疾患によって引き起こされていない、という点も重要です。
【適応障害とうつ病】治療法の違い

適応障害の治療法を教えてください
適応障害の治療として、精神療法が行われることがあります。精神療法は、医師や臨床心理士などとのやり取りを通じて、患者さんが自分の感情や考え方を見直し、問題を理解することで対処法をみつけ、克服しようとする治療法です。症状に応じて薬物療法が用いられることもあります。ただし、適応障害そのものを治す薬はありません。不眠や強い不安感、抑うつ気分などに対する対症療法として、医師の判断で薬が処方されることがあります。
うつ病はどのように治療しますか?
精神療法も重要な治療手段です。代表的なものには認知行動療法があります。物事を悲観的、否定的にとらえてしまう考え方の偏りを修正していきます。なお、重症で薬物療法、精神療法に反応しない場合には、電気けいれん療法(ECT)や反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)などの治療法が検討されることもあります。
適応障害とうつ病の治療法の違いを教えてください
編集部まとめ

適応障害とうつ病の症状は似ている部分も多く区別が難しいですが、原因や経過、治療方針に違いがあります。ただし、いずれの場合でも症状がみられている場合は、医療機関への相談が必要です。適応障害もうつ病も病状が進行してしまう可能性があるため、気になる症状がある場合は、早めに病院を受診しましょう。


