「スマホ内斜視」を発症すると「目」の状態はどのように変化する?【医師監修】

スマホ内斜視(スマホ急性内斜視)とは、スマートフォンやタブレットなど小さな画面を長時間近くで見続けることで起こる目のトラブルです。近年、この症状を訴える方が若い世代を中心に増えており、デジタル機器の使い過ぎが一因と指摘されています。
片方の目の黒目が内側に寄ってしまい、物が二重に見える複視などの症状が現れるのが特徴です。本記事では、スマホ内斜視の基礎知識から通常の内斜視との違い、大人と子どもの発症傾向や将来への影響、症状の見た目や進行、そして治し方や予防法までを解説します。

監修医師:
栗原 大智(医師)
スマホ内斜視について

スマホ内斜視とはどのような状態ですか?
本来、健康な目は物を見るとき両目が同じ方向を向き、二つの目で焦点を合わせることで立体的に見えています。しかし、スマホ内斜視になると、一方の目が内側に向いたままもとに戻りづらくなり、両目の視線がズレてしまいます。その結果、ピントが合いにくくなり、遠くを見ると物が二重に見える(複視)状態を自覚します。
通常の内斜視とスマホ内斜視の違いを教えてください
従来型の内斜視では症状や原因によって対策も異なり、多くは徐々に現れ、幼少時に気付かれることが多いです。
一方、スマホ内斜視はデジタル機器の至近距離での長時間使用によって発症する後天性の内斜視です。特に、スマホ内斜視では、長時間の近距離作業で両目を内側に寄せる状態に慣れすぎてしまい、遠方を見る際に目をきちんと外側に開くことができなくなります。
また、幼少期に発症する先天性の内斜視では脳が適応して複視を感じにくい場合もありますが、スマホ内斜視はそれまで両目で正常に見えていた方に急に起こるため複視などの自覚症状が強いことも大きな違いです。さらに、スマホ内斜視は原因がスマートフォンやポータブルゲーム機であるため、適切な使用や治療によって改善することも特徴です。
スマホ急性内斜視とスマホ内斜視は異なる病気ですか?
【スマホ内斜視】大人と子どもの違いと将来への影響

スマホ内斜視は大人と子どものいずれも発症しますか?
参照:『若年者の後天共同性内斜視の特徴を明らかに 中高生に多いことや、改善しやすい人の特徴がわかりました』(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター)
子どもと大人のスマホ内斜視に違いはありますか?
そのため、子どもの場合、周囲の大人が仕草や行動から気付くケースが少なくありません。具体的には、まばたきの回数が増える、物をよくつかみ損ねる、顔を斜めに傾けて片目で見ようとする、といった様子がみられます。これは、子ども自身は見えにくい原因が両目のずれによるものとわからず、ピントを合わせようと瞬きを繰り返すなど、片目で見たほうが二重に見えないため自然とそうした行動をとってしまうためです。
子どもがスマホ内斜視になると将来の視力や見え方に影響がありますか?
スマホ内斜視の見た目と進み方

スマホ内斜視はどのような見た目になりますか?
スマホ内斜視の進行による経過を教えてください
しかし、その後も同じ生活を続けていると症状がだんだん悪化し、徐々に複視が改善しにくくなってきます。こうして急性内斜視だったものが次第に慢性化し、常に目が内側に寄てしまいます。この段階になると、両目の位置ずれをもとに戻すことが難しくなります。
スマホ内斜視の治し方

スマホ内斜視は眼科で治療することはできますか?
そのうえでスマホ内斜視と診断された場合、治療の第一歩はやはり原因となっているデジタル機器の使用時間を減らすことです。症状が軽ければ、スマートフォンやゲームを控えるだけでもとの正常な目の位置に戻ることもあります。しかし、改善がみられない場合や斜視の角度が大きく進行している場合には、眼科で以下のような治療が検討されます。
- プリズム眼鏡による治療
- 視能訓練(両目で見る力を取り戻すためのトレーニング)
- A型ボツリヌス毒素注射
- 斜視手術
いずれの場合も、まずは生活習慣の改善が治療の基本です。眼科で相談すれば、症状の程度に応じた適切な治療計画を立ててくれますので、「スマホ内斜視かも?」と思ったら早めに眼科を受診してください。
スマホ内斜視を自分で改善する方法を教えてください
| 改善するための ポイント |
内容 |
|---|---|
| 距離を保つ | スマートフォンの画面は30cm以上離して見る |
| 長時間連続で使わない | 20~30分おきに休憩を取り、遠くを20秒以上眺める |
| 姿勢と環境を整える | うつ伏せや横向きでの使用や暗い部屋での視聴は避ける |
これらのポイントをおさえた習慣にすることができれば、スマホ内斜視の症状は改善するかもしれません。もちろん、スマホ内斜視にならないためにも、これら方法を心得ておくことが重要です。しかし、生活習慣を変えても症状が治らない場合は、プリズム眼鏡や手術などの治療を行う必要があるかもしれません。
スマホ内斜視と診断された場合に気を付けることはありますか?
スマートフォンを使用する距離や時間のルールは必ず守るべき事項です。症状が改善するまでは可能な限りスマートフォンを使わずに過ごし、本を読むにしても目を近づけすぎないよう注意します。寝転がりながらスマートフォンを見たり、暗い部屋で明るいスマートフォンの画面を見たりするのはやめましょう。このように、生活習慣に気を付けることで、目に優しい生活を送ることができます。
編集部まとめ

スマホ内斜視は、スマートフォンなどのデジタル機器の使い方によって引き起こされる目の病気です。便利なスマートフォンも使い方を誤れば目の健康を損なうリスクがあります。スマートフォンやゲームが手放せない現代だからこそ、一人ひとりが目に優しいデジタル機器との付き合い方を身につけることが大切です。子どもの場合は周囲の大人が率先してルールを守り、目の異変のサインを見逃さずサポートしてあげましょう。
参考文献



