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「良性発作性頭位めまい症」の症状・原因はご存知ですか?【医師監修】

 公開日:2025/10/01
「良性発作性頭位めまい症」の症状・原因はご存知ですか?【医師監修】
良性発作性頭位めまい症は、頭の位置を変えたときなどに突然起こる回転性のめまいが特徴で、めまい疾患のなかでも少なくない病気の一つです。主な原因は、内耳にある耳石が三半規管へ入り込むことで、短時間のぐるぐる回る感覚やふらつきが生じます。発作は通常、数秒から1分以内で治まり、聴力障害や神経症状は伴いません。診断は問診や眼振検査、ディックス・ホールパイク法などの頭位変換検査で行われます。治療は主に耳石置換法などのリハビリ体操が中心で、多くは自然治癒も期待できます。日常生活での再発予防も大切です。

参照:『2024年8月 良性発作性頭位めまい症』( 一般社団法人 宇部市医師会)
伊藤 規絵

監修医師
伊藤 規絵(医師)

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旭川医科大学医学部卒業。その後、札幌医科大学附属病院、市立室蘭総合病院、市立釧路総合病院、市立芦別病院などで研鑽を積む。2007年札幌医科大学大学院医学研究科卒業。現在は札幌西円山病院神経内科総合医療センターに勤務。2023年Medica出版社から「ねころんで読める歩行障害」を上梓。2024年4月から、FMラジオ番組で「ドクター伊藤の健康百彩」のパーソナリティーを務める。またYou tube番組でも脳神経内科や医療・介護に関してわかりやすい発信を行っている。診療科目は神経内科(脳神経内科)、老年内科、皮膚科、一般内科。医学博士。日本神経学会認定専門医・指導医、日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医、日本老年医学会専門医・指導医・評議員、国際頭痛学会(Headache master)、A型ボツリヌス毒素製剤ユーザ、北海道難病指定医、身体障害者福祉法指定医。

良性発作性頭位めまい症の症状と原因

良性発作性頭位めまい症の症状と原因

良性発作性頭位めまい症の症状を教えてください

主な症状は、頭を動かした際に突然ぐるぐる回るような回転性めまいが生じることです。例えば、寝返りをうったときや起き上がる際、急に上を向いたときなどに発作が起こり、多くの場合、めまいはおおむね数秒〜数十秒ほどで治まります。めまいによりフワフワした感覚や、雲の上にいるような浮遊感をおぼえることもあり、吐き気嘔吐を伴うこともあります。また、何度も発作が繰り返されるのが特徴ですが、じっとして頭を動かさなければ症状は自然に軽快する傾向にあります。聴力障害や耳鳴り、頭痛などは通常みられませんので、めまいの症状のみが現れる点が特徴的です。

良性発作性頭位めまい症の原因を教えてください

主な原因は、内耳に存在する耳石(じせき)と呼ばれる炭酸カルシウムからなる結晶状の粒が剥がれ落ち(正常では球形嚢および卵形嚢の中にある)、三半規管(身体の回転や傾きを感じる耳の器官)に入り込むことです。耳石が頭の位置や姿勢の変化に伴って三半規管内を移動すると、リンパ液の流れが乱れ、平衡感覚を保つ神経が過剰に刺激され、めまいが発生します。耳石が剥がれる原因には、加齢による耳石器の変化や頭部外傷、内耳の炎症、運動不足、長時間同じ姿勢を続けることなどが挙げられます。特に高齢の方や骨粗しょう症のある方、女性ではホルモンの変化もリスク要因とされています。このようなさまざまな要因が重なり、発症リスクとされています。

参照:『2024年8月 良性発作性頭位めまい症』( 一般社団法人 宇部市医師会)

良性発作性頭位めまい症の検査と診断

良性発作性頭位めまい症の検査と診断

良性発作性頭位めまい症が疑われるときは何科を受診しますか?

耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。耳鼻咽喉科では、めまいや聴覚障害の有無、耳石の位置の特定など専門的な診断が可能です。めまいはさまざまな原因で生じるため、聴力検査や問診を通じて、ほかの疾患との鑑別も行います。また、めまいが何度も起こる場合や、難聴や耳鳴りなどの症状が伴う場合は適切な治療を受けるためにも早期の受診が重要です。まずは耳鼻咽喉科に相談してください。

良性発作性頭位めまい症の検査を教えてください

まず問診や診察で症状の状況や発作のタイミングを確認します。代表的な検査は眼振検査と呼ばれ、頭の位置を変えることで現れる眼の動き(眼振)を観察します。フレンツェル眼鏡や赤外線CCDカメラ(患者さんに特殊なゴーグルを装着して眼振をみる検査)を用いて眼振の有無や向きを調べ、耳石が三半規管へ入り込んだことを確認します。ほかの疾患との鑑別のため、聴力検査や必要に応じて血液検査、CT、MRIなどの画像検査も行います。

良性発作性頭位めまい症の診断基準を教えてください

診断基準は、特徴的な回転性めまいや頭を動かした際に誘発される一過性のめまいを認めることです。問診で症状の内容や発生状況を確認し、眼振(眼の異常運動)検査やディックス・ホールパイク法(Dix-Hallpike maneuver supine roll test:頭を傾けて眼振を誘発する検査)などの頭位変換検査で特徴的な眼振が観察されることが重要な診断点です。画像検査(CT・MRI)で脳梗塞や腫瘍など他疾患が否定されることも診断の補助とされます。聴力障害や耳鳴り、神経症状がない場合、良性発作性頭位めまい症と診断されます。

良性発作性頭位めまい症の治療法

良性発作性頭位めまい症の治療法

良性発作性頭位めまい症は治癒する病気ですか?

多くの場合で自然に治癒する病気です。よって、治療が行われなかった場合は外側半規管型では平均9日、後半規管型では平均39日でめまいが消失するといわれています。ただし、症状が長期間続く場合や再発するケースもあるため、場合によっては耳鼻咽喉科でリハビリや専門的治療を受けることが推奨されます。良性発作性頭位めまい症は治癒後に50%が再発し、特に1年以内の再発がよくみられます。

良性発作性頭位めまい症の標準的な治療法を教えてください

標準的な治療法は、頭の位置を変えて三半規管から耳石を元の位置に戻す耳石置換法(エプリー法)です。医師が患者さんの頭を数回動かして誘導し、耳石を症状の出ない部位へ移動させます。特に後半規管型はエプリー法、外側半規管型にはレムペルト法など適した運動療法が施されます。発症直後の激しいめまいの自覚があるときは7%重曹水の静注、制吐薬・抗不安薬、その後は抗めまい薬、抗ヒスタミン薬の投与がなされます。薬物療法は補助的に用いられ、自然治癒を待つケースもあります。

良性発作性頭位めまい症の再発を防ぐ方法はありますか?

再発率を低下させるためには睡眠時の頭位を健側下頭位にすることが有効と示されています。そのためには主治医から患側が右か左かを聞いておくことが必要です。また、生活習慣の見直しや耳石の剥離や迷入を防ぐため日常的な前庭リハビリ・頭位変換運動(Brandt–Daroff体操など)が有効とされています。

寝返り運動や頭を動かす体操を日常的に行うことで、耳石が三半規管に入り込むのを防いだり、耳石が細かく砕かれたりして再発リスクを減らす効果があります。さらに、ビタミンDやカルシウムなど栄養状態の改善、ストレスや睡眠不足の回避も予防に有効です。 定期的な耳鼻咽喉科の受診や相談も再発対策として大切です。

日常生活で気を付けることを教えてください

まず頭を動かす際はゆっくりと行動し、めまいが誘発されやすい動作や姿勢は避けるようにします。起き上がるときはすぐに身体を起こさず、天井を見てから横向きになってゆっくり起きあがります。また、めまい発作時は転倒防止を意識し、安全性の高い場所での安静が大切です。規則正しい生活や十分な睡眠、適度な水分補給も症状の軽減や再発防止に役立ちます。

参照: 『2024年8月 良性発作性頭位めまい症』( 一般社団法人 宇部市医師会) 『良性発作性頭位めまい症診療ガイドライン』(Equilibrium Res Vol. 68(4) 218~225,2009) 『良性発作性頭位めまい症』(済生会)

編集部まとめ

編集部まとめ

良性発作性頭位めまい症は、頭の向きや姿勢を変えた際に突然回転性のめまいが起こる疾患で、主に内耳の耳石が三半規管へ入り込むことが原因とされています。症状は短時間で治まるものが多く、命に関わる危険性や後遺症もありませんが、ときに吐き気やふらつきを伴うことがあります。診断は問診や頭位変換検査(ディックス・ホールパイク法)・眼振検査などを通じて行われ、他疾患との鑑別のために画像検査も行われる場合があります。治療は耳石置換法、つまりエプリー法やBBQロール(身体を横向きに回転させ耳石を戻す方法)などの体位リハビリが中心となり、多くの場合自然治癒も期待できます。繰り返す場合は耳鼻咽喉科に相談し、生活習慣の工夫も大切です。

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