「ウイルス性胃腸炎がうつった」ときの対処法はご存知ですか?【医師監修】

ウイルス性胃腸炎は、ウイルス感染によって胃や腸に炎症が起こる病気です。俗におなかの風邪などとも呼ばれ、子どもから大人まで幅広い世代が毎年かかります。特に秋から冬にかけて流行しやすく、集団での感染事例も多い厄介な感染症です。本記事ではウイルス性胃腸炎がうつるのかをはじめ、症状や治療、感染経路、そして実際にうつってしまった場合の対処法や予防策を解説します。

監修医師:
高宮 新之介(医師)
ウイルス性胃腸炎の概要

ウイルス性胃腸炎とはどのような病気ですか?
細菌による食中毒とは原因が異なり、特にウイルスによる胃腸炎が発生しやすいのは秋から冬にかけての寒い時期です。いわゆる胃腸風邪の多くはこのウイルス性胃腸炎にあたります。感染力が強く、保育園・学校や高齢者施設などで集団感染するケースもみられます。
なお、ウイルス性胃腸炎には複数の原因ウイルスがありますが、代表的なものにノロウイルス(主に冬季に流行)、ロタウイルス(乳幼児に多い)、アデノウイルスなどがあります。
ウイルス性胃腸炎の症状を教えてください
多くの場合、まず数回の嘔吐が起こり、半日~1日ほどで吐き気は治まりますが、続いて水のような下痢が1日〜数日間続きます。発熱は出ないか微熱程度で済むこともありますが、ウイルスの種類や体質によっては38度以上の熱が出ることもあります。
また脱水症状(体の水分不足)が起こることもあります。嘔吐や下痢によって体内の水分が失われるため、お口の渇きや尿の減少、めまいなどの脱水の徴候が現れることがあります。特に乳幼児や高齢の方は脱水になりやすいです。
ウイルス性胃腸炎はどのように治療しますか?
ウイルス性胃腸炎の感染経路と発症のメカニズム

ウイルス性胃腸炎の原因となるウイルスを教えてください
参照:『令和6年(2024年)食中毒発生状況』(厚生労働省)
ウイルス性胃腸炎の感染経路を教えてください
接触感染(汚染物に触れてお口から入る)や食中毒型の感染(汚染された食品を食べる)が主な経路です。さらにノロウイルスの場合は、嘔吐物が乾燥するとウイルスが微粒子として空気中に舞い上がるため、それを吸い込んで感染することもあります。狭い室内で嘔吐した際に周囲の方が吸入感染するような飛沫感染(空気感染)にも注意が必要です。
ウイルス性胃腸炎は感染後どのようなメカニズムで発症しますか?
例えばノロウイルスは人の小腸で盛んに増殖し、小腸粘膜の上皮細胞を破壊します。その結果、水分や栄養の吸収がうまくできなくなって水様性の下痢が生じます。また、ウイルスと腸管免疫との戦いにより腸が刺激され、内容物を早く体外に出そうとして吐き気・嘔吐や腹痛を引き起こすと考えられています。
発熱は身体がウイルスと戦う免疫反応の一環で、特に小児では高熱が出ることもあります。
ウイルス性胃腸炎が流行しやすい時期を教えてください
ウイルス性胃腸炎がうつったときの対処法と感染対策

ウイルス性胃腸炎がうつったらどうすればよいですか?
ウイルス性胃腸炎で病院に行くべきサインを教えてください
- 水分がまったく摂れないか、飲んでもすぐ吐いてしまう場合
- 脱水症状が疑われる場合(尿が半日以上出ない、唇やお口の中がカラカラに乾いている、ぐったりして反応が鈍いなど)
- 血液が混じった下痢や激しい腹痛がある場合
- 38度以上の高熱が続く場合
- 乳幼児や高齢の方で症状が重い場合
これらはいずれも重症化のサインで、点滴などの治療が必要な可能性があります。
特に乳幼児ではわずかな脱水でも症状が急速に悪化することがあります。下記のような症状は重度の脱水状態の兆候です。
- おむつが半日以上濡れていない
- 泣いても涙が出ない
- 皮膚の弾力がなくなる(つまんでも戻らない)
このようなときは迷わず病院で治療を受けてください。高齢の方では嘔吐物を喉に詰まらせて誤嚥性肺炎を起こすリスクもあるため、早めの受診がすすめられます。
ウイルス性胃腸炎を予防するために何をすべきですか?
- 手洗いの徹底
- 食品の衛生管理
- 嘔吐物・便の適切な処理
- 感染者の隔離
- 予防接種(ロタウィルスの乳幼児用ワクチン)
以上のような対策を講じることで、ウイルス性胃腸炎の感染リスクを大幅に減らすことができます。特に手洗いと嘔吐物の適切処理は今すぐ実践できる有効策です。日頃から衛生管理を徹底し、ウイルスを持ち込まない・広げない習慣を心がけましょう。
編集部まとめ

ウイルス性胃腸炎の流行を防ぐには、一人ひとりの対策の積み重ねが重要です。手洗いや消毒など基本を徹底し、ご家族みんなで感染予防に取り組みましょう。
正しい知識を持って対処すれば過度に怖がる必要はありません。発症してしまった場合でも、まずは落ち着いて水分補給と休養を行いましょう。多くは数日で回復し、後遺症を残すこともありません。大切なのは脱水に気をつけることと、必要に応じて早めに医療機関を受診する判断です。また、日頃から手洗いの徹底や食品の衛生管理によってウイルス性胃腸炎はかなり防ぐことができます。特にノロウイルスはごく微量でうつるため、「もらわない・うつさない」ための手洗い・消毒・マスク着用は家族みんなで心がけたいですね。
参考文献




