「糖尿病と高血圧」は関係あるの?併発している人が気を付けることも解説!
公開日:2025/09/20

糖尿病と高血圧は、しばしば併発する生活習慣病の代表的な疾患です。両疾患は血管や心臓に大きな負担をかけるため、合併している場合はリスクがさらに高まります。糖尿病を罹患すると血管(特に毛細血管などの微小血管)が傷つきやすくなり、血管の障害により血圧の上昇を引き起こしやすくなります。高血圧も同様に血管に悪影響を及ぼし、動脈硬化や心疾患、さらには脳卒中など重大な合併症のリスクを増やすことが知られています。

監修医師:
伊藤 規絵(医師)
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旭川医科大学医学部卒業。その後、札幌医科大学附属病院、市立室蘭総合病院、市立釧路総合病院、市立芦別病院などで研鑽を積む。2007年札幌医科大学大学院医学研究科卒業。現在は札幌西円山病院神経内科総合医療センターに勤務。2023年Medica出版社から「ねころんで読める歩行障害」を上梓。2024年4月から、FMラジオ番組で「ドクター伊藤の健康百彩」のパーソナリティーを務める。またYou tube番組でも脳神経内科や医療・介護に関してわかりやすい発信を行っている。診療科目は神経内科(脳神経内科)、老年内科、皮膚科、一般内科。医学博士。日本神経学会認定専門医・指導医、日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医、日本老年医学会専門医・指導医・評議員、国際頭痛学会(Headache master)、A型ボツリヌス毒素製剤ユーザ、北海道難病指定医、身体障害者福祉法指定医。
目次 -INDEX-
糖尿病と高血圧の関係
糖尿病の患者さんのうち高血圧である人の割合を教えてください
糖尿病と高血圧には密接な関係があり、糖尿病患者さんの60%ほど1)が高血圧を合併しているといわれています。糖尿病患者さんの2人に1人、あるいはそれ以上が高血圧でもあることです。なぜ併発しやすいのかは、食生活や運動不足、肥満などの生活習慣での共通点が多く、また、糖尿病が進行すると腎臓に負担がかかり体内の水分や塩分バランスが崩れやすくなることも一因です。高血圧の管理は、糖尿病の合併症予防や健康寿命の延伸のためにとても重要なので、両方を指摘された場合は血糖とともに血圧のコントロールにも十分気を配ることが必要です。
なぜ糖尿病と高血圧を併発しやすいのですか?
糖尿病と高血圧が併発しやすい理由には、いくつかの共通した背景があります。まず、肥満や運動不足、食生活の乱れなど生活習慣のリスクが重なりやすい点が挙げられます。肥満になると血圧を上げるホルモンが多く分泌され、インスリン抵抗性も高まりやすくなります。また、糖尿病で血糖値が高い状態が続くと、血液の浸透圧が高まって体内の水分バランスが崩れ、循環血液量が増加しやすくなり、血圧の上昇につながります。さらに、腎機能の低下や動脈硬化も関与し、これらが複合的に作用して高血圧を引き起こしやすくします。よって、糖尿病と高血圧は互いに悪影響を及ぼしあう関係にあります。
高血圧の方は糖尿病を発症しやすいですか?
高血圧の方は糖尿病を発症しやすいことが知られています。実際に、高血圧患者さんは、非高血圧の方と比べて糖尿病を発症しやすいとされています2)。背景には、両者に共通する生活習慣(肥満・運動不足・食生活の乱れなど)や、インスリン抵抗性の増加、血管や腎臓へのダメージなどが関与しています。高血圧が続くことで血管の状態が悪化し、インスリンの効きが低下しやすくなるため、血糖コントロールが難しくなる場合があります。また、高血圧と糖尿病を併発すると、心筋梗塞や脳卒中などの重大な合併症のリスクも高まります。したがって、高血圧の方は血圧管理だけでなく、定期的に血糖値のチェックを心がけ、生活習慣の改善に努めることが大切です。
糖尿病と高血圧を併発している場合のリスク
糖尿病かつ高血圧である場合は血管の病気にかかりやすいですか?
糖尿病とかつ高血圧を併発している場合、血管の病気にかかりやすくなることが知られています。病態は、糖尿病による高血糖が血管の内皮細胞を傷つけ、動脈硬化が進みやすくなること、さらに高血圧によって血管壁への負担が増加し、心筋梗塞や脳卒中など重大な血管疾患のリスクが大きく高まるためです。
実際に、糖尿病と高血圧の両方を持つ方は、一方のみを持っている方や持たない方に比べて、心血管疾患や脳血管疾患を発症する頻度が明らかに高いと報告されています。血管の病気を防ぐためにも、血糖と血圧の両方を適切にコントロールし続けることがとても重要です。
糖尿病で高血圧も併発している場合の目への影響を教えてください
糖尿病に高血圧を併発している場合、目への影響はさらに深刻となります。両者が重なることで、網膜を支える細い血管へのダメージが強まり、糖尿病網膜症が悪化しやすくなります。具体的には、網膜出血、浮腫(むくみ)、新しくもろい血管の発生(新生血管)による出血や網膜剥離のリスクが高まります。そして、急激な視力低下や場合によっては失明につながるおそれがあります。また、高血圧単独でも高血圧性網膜症などの目の病気を引き起こすため、血糖だけでなく血圧の適切な管理が不可欠です。定期的な眼底検査が、早期発見と重症化予防のカギとなります。
そのほかにも糖尿病と高血圧を併発している場合のリスクはありますか?
複数のリスクが高まることが知られています。まず、腎臓病(糖尿病腎症)が進行しやすくなり、重度の場合は透析が必要になるケースもあります。また、神経障害など糖尿病の合併症状が悪化しやすくなり、しびれや筋力の低下、歩行障害で日常生活の質の低下を招くことが指摘されています。さらに、狭心症や心筋梗塞、心不全、脳卒中などの重大な心血管疾患のリスクが単独疾患の場合よりも大幅に上昇し、死亡リスクも高くなります。これらを防ぐためには、血糖と血圧、両方の管理がとても重要です。
糖尿病と高血圧の治療法
糖尿病はどのように治療しますか?
まず食事療法と運動療法が基本になります。エネルギー摂取量を適正に保ち、バランスのよい食事を心がけることで、血糖値のコントロールを目指します。また、適度な運動の継続が血糖を下げやすくし、インスリンの働き(インスリン感受性)を高める効果も期待できます。生活習慣の改善で十分な効果が得られない場合は、経口血糖降下薬などの内服治療を追加します。さらに重症の場合や効果が不十分なときにはインスリン療法も行います。治療方針は年齢や体調、合併症の有無など個々の状態に合わせて医師が判断しています。大切なのは、医療チームと協力しながら無理なく治療を継続することです。
高血圧の治療法を教えてください
まず生活習慣の改善から始めます。具体的には、塩分の摂取を1日6g未満に抑える減塩や、バランスのよい食事、適正体重の維持、適度な運動(例えば毎日の散歩)、節酒や禁煙、十分な睡眠を心がけることが重要です。生活習慣の見直しだけでは十分な効果が得られない場合、医師と相談のうえ降圧薬を使用します。降圧薬にはいくつか種類があり、個々の状態や合併している病気に応じて選択されます。また、薬を始めた際は身体のだるさやふらつきを感じることもありますが、多くは徐々に慣れていくため、継続が大切です。定期的な自己血圧測定と医療機関への通院、主治医との相談を続けていきます。
糖尿病と高血圧の両方を治療すべきですか?
明確に「はい」です。両方を放置すると、動脈硬化や心筋梗塞、脳卒中、腎臓病など重大な合併症リスクが大きく高まります。特に両者が併発している場合、合併症の危険性は単独の場合よりもさらに増し、健康寿命の短縮や生活の質の低下につながるおそれがあります。よって、血糖値と血圧の両方をしっかりと管理し、バランスのよい食事や運動、医師による適切な治療を並行して行うことがとても重要です。一方のみを治療してもリスク軽減は十分ではないため、両方の治療を積極的に進めます。
糖尿病と高血圧を併発している人が気を付けることを教えてください
気を付けるべきポイントは、まず血糖と血圧の両方をしっかり管理することです。バランスのよい食事や適度な運動、減塩や体重管理を継続し、規則正しい生活を心がけます。また、医師の指示にしたがって薬をきちんと服用し、自己判断で薬をやめたり減らしたりしないことが大切です。
定期的な血糖・血圧測定に加え、腎臓や目の検査も忘れずに受け、合併症の早期発見と重症化予防に努めてください。ストレスをためすぎず、十分な睡眠や禁煙、節酒も重要です。医療チームと連携して体調の管理が健康維持のカギとなります。
編集部まとめ
糖尿病と高血圧は密接に関係しており、生活習慣や身体の仕組みが重なり合うことで両者が併発しやすくなります。両疾患を罹患している場合、心筋梗塞や脳卒中、腎臓病、神経障害などの重大な合併症のリスクが大幅に高まり、健康寿命の短縮や生活の質の低下につながる可能性があります。よって、食事や運動、減塩など生活習慣の改善と、医師による適切な治療を受けることの両立が重要です。日々の血糖値と血圧の管理、定期検査の継続が健康維持のカギとなります。




