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「食中毒で発熱」を引き起こす原因はご存知ですか?対処法も解説!【医師監修】

 公開日:2025/08/30
「食中毒で発熱」を引き起こす原因はご存知ですか?対処法も解説!【医師監修】
食中毒というと、真っ先に下痢や嘔吐を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし実際には、食中毒によって発熱が生じることもあります。ときには38度を超える高熱となることもあり、身体のだるさや頭痛を伴って日常生活に支障をきたすこともあります。特に夏場や湿度の高い時期は、細菌やウイルスが繁殖しやすく、食中毒のリスクが高まります。

この記事では、食中毒の主な種類とそれぞれの症状、特に発熱との関係を詳しく解説します。
林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
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眼科(角膜外来)

食中毒の種類と症状

食中毒の種類と症状

食中毒の種類を教えてください

食中毒にはいくつかの種類があり、原因によって分類されます。代表的なものは、細菌性、ウイルス性、寄生虫性、化学物質性、自然毒性の5つです。

細菌性食中毒は、サルモネラやカンピロバクター、O157などの大腸菌、黄色ブドウ球菌、腸炎ビブリオ、ウェルシュ菌などが原因です。加熱不足や常温での放置によって細菌が増え、食べることで発症します。

ウイルス性食中毒には、ノロウイルスやロタウイルスがあります。特にノロウイルスは冬に流行しやすく、わずかな量でも感染します。

寄生虫性は、魚に寄生するアニサキスや豚肉などに含まれる旋毛虫などが原因です。生食や加熱不足で感染します。

化学物質性は、農薬や洗剤などの有害物質が混入した食品を食べることで起こります。

自然毒性は、フグや毒キノコ、ジャガイモの芽などに含まれる天然の毒によって発症します。

食中毒の種類別に初期症状を教えてください

食中毒の初期症状には、嘔吐、下痢、腹痛がよく見られます。発熱や頭痛、全身のだるさを伴うこともありますが、原因によって症状の出方や強さに違いがあります。 細菌性の食中毒では、38度を超える高熱が出ることもあり、腹痛や下痢に加えて血便が出ることもあります。

ウイルス性の食中毒では、突然の嘔吐や水のような下痢が目立ち、発熱は軽度から中等度にとどまります。乳幼児では高熱や白っぽい便が続くこともあります。

寄生虫性の食中毒では、発熱は少なく、食後に強い胃痛や吐き気が現れます。

化学物質性の食中毒では、症状が急激に現れ、口のただれ、吐き気、腹痛、めまいなどがみられることがあります。

自然毒性の食中毒では、原因となる毒によって異なりますが、嘔吐、しびれ、けいれん、呼吸困難など、神経症状が現れることがあります。発症が早く、重症化しやすい傾向があります。

食中毒はどのように進行しますか?

食中毒は、潜伏期間の後に突然症状が始まり、数日から1週間程度で回復するのが一般的です。

最初は吐き気、嘔吐、腹痛などが現れ、次第に下痢や発熱が加わります。軽症であれば水分補給と安静で自然に治りますが、症状が強い場合や脱水が進んだ場合には、医療機関での点滴などが必要になることもあります。

また、食中毒によって腸内環境が乱れることで、回復後しばらく便通異常や食欲不振が続くこともあります。

食中毒と発熱

食中毒と発熱

食中毒で発熱することはありますか?

はい、食中毒によって発熱することがあります。食中毒は、単にお腹の不調だけでなく、身体全体に影響を及ぼす感染症の一つです。原因となる細菌やウイルスが身体に入ると、身体はそれを排除しようとして免疫反応を起こし、体温が上がります。これが発熱の原因です。

特に腸に炎症が起きたときは熱が出やすくなります。ただし、すべての食中毒で発熱が起きるわけではありません。例えば、黄色ブドウ球菌のように毒素だけが原因の場合は、嘔吐や腹痛はあっても熱は出ないことがあります。発熱の有無だけでは判断できないため、ほかの症状と併せて見ることが大切です。

食中毒のなかでも発熱しやすい種類を教えてください

発熱しやすいのは、細菌性ウイルス性の食中毒です。 細菌性では、カンピロバクター、サルモネラ菌、腸管出血性大腸菌(O157など)などが代表的で、38度以上の高熱が出ることもあります。腹痛や下痢に加えて、血便や全身のだるさを伴うこともあります。特にO157では、まれに重い合併症を引き起こすこともあります。

ウイルス性では、ノロウイルスやロタウイルスがよく知られています。ノロウイルスは突然の嘔吐や水のような下痢が特徴で、発熱は軽度から中等度です。ロタウイルスは乳幼児での感染が多く、39度前後の高熱が数日続くことがあります。下痢や嘔吐も長引く傾向があります。

食中毒の発熱は何日程度続きますか?

食中毒による発熱の持続期間は、原因となる微生物の種類や、患者さんの体力・免疫状態によって異なりますが、多くの場合、1〜3日程度で自然に解熱します。

ただし、発熱が4日以上続く、熱が39度を超えている、もしくは何度もぶり返すような場合には、ほかの感染症や重篤な合併症の可能性もあるため、早めに医療機関を受診する必要があります。

食中毒で発熱したときの対処法

食中毒で発熱したときの対処法

食中毒で熱が出たときは病院を受診すべきですか?

食中毒による発熱は、軽度で短期間の場合は自宅で安静に過ごすことで自然に回復することもありますが、症状の程度や体力によっては医療機関の受診が必要になります。 特に以下のような場合には、早めに病院を受診することがすすめられます。

  • 38度以上の高熱が2日以上続いている
  • 嘔吐や下痢で水分がとれず、脱水症状が疑われる
  • 血便や強い腹痛がある
  • 意識がもうろうとしている、反応が鈍い
  • 乳幼児、高齢者、基礎疾患がある方など、重症化しやすい場合

食中毒で発熱した場合は市販の解熱剤を飲んでもよいですか?

食中毒による発熱に対して市販の解熱剤を使用することは、症状の緩和に有効なこともありますが、慎重な判断が求められます。

まず、市販薬を使用する際にはアセトアミノフェンといった胃腸への負担が少ない成分のものを選ぶことが大切です。胃腸が弱っているときにイブプロフェンやロキソプロフェンなどのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を服用すると、まれに胃腸障害を悪化させる可能性があります。

解熱剤を使用する際には、服用後に吐かないか、下痢で薬が吸収されない状況でないかを見極めることも大切です。自己判断での服薬が不安な場合は、薬剤師や医師に相談してから使用するようにしましょう。

嘔吐や下痢がひどく薬が飲めないときの対処法を教えてください

嘔吐や下痢が激しくて薬を飲めない場合には、まずは脱水を防ぐことが最優先です。体内の水分と電解質が大量に失われるため、経口補水液(OS-1など)やイオン飲料などを使って、こまめな水分補給を行ってください。

このとき、無理に大量の水分をとろうとすると嘔吐が悪化することがありますので、スプーン1杯ずつでも構いません。少量ずつを頻回に摂取するのがポイントです。

薬が内服できない場合には、座薬による解熱剤の投与や、点滴による治療が必要となることもあります。これらの処置は医療機関でのみ対応可能なため、水分が摂れない状態が続くときや、体力の低下が著しいときには、早めに受診を検討してください。

編集部まとめ

編集部まとめ  食中毒では、下痢や嘔吐だけでなく発熱がみられることもあります。特に細菌やウイルスが原因のものでは、38度を超える高熱や脱水を起こすことがあり、注意が必要です。

軽い発熱で水分がとれていれば自宅で安静にして様子を見ることも可能ですが、高熱が続く、嘔吐や下痢が強く水分がとれない、血便があるといった場合は早めに医療機関を受診しましょう。

解熱薬を使うときは、胃腸に負担の少ないものを選び、不安があれば医師や薬剤師に相談してください。薬が飲めないときは座薬や点滴が必要になることもあります。

ふだんから食材の加熱や手洗いなどを徹底し、予防を心がけることが大切です。症状が出た場合も落ち着いて対応しましょう。

この記事の監修医師