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「食中毒が疑われるときの対処法」はご存知ですか?診断された後の対処法も解説!

 公開日:2025/08/28
「食中毒が疑われるときの対処法」はご存知ですか?診断された後の対処法も解説!

食中毒は、細菌・ウイルス・寄生虫などの病原体や化学物質が付着した飲食物を口にすることで起こります。症状は軽い腹痛や下痢から、高熱・脱水症状まで多岐にわたり、特に乳幼児や高齢の方は重症化しやすいので注意が必要です。本記事では、発症直後の対応から回復期まで、家庭で実践できる具体策をQ&A形式で解説します。

高宮 新之介

監修医師
高宮 新之介(医師)

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昭和大学卒業。大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術を経験し、外科専門医を取得。昭和大学大学院 生理学講座 生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事し学位を取得。昭和大学横浜市北部病院の呼吸器センターで勤務しつつ、週1回地域のクリニックで訪問診療や一般内科診療を行っている。診療科目は一般外科、呼吸器外科、胸部外科、腫瘍外科、緩和ケア科、総合内科、呼吸器内科。日本外科学会専門医。医学博士。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)修了。ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)。BLS(Basic Life Support)。

食中毒が疑われるときの対処法

食中毒が疑われるときの対処法

食中毒が疑われるときにまずやるべきことを教えてください

食中毒を疑う症状、例えば突然の嘔吐や下痢、腹痛などが現れた場合、ご家庭でまず実践すべき重要なことは、安静水分補給記録の三つです。これらは、身体の回復を助け、重症化を防ぎ、後の正確な診断につなげるための基本となります。

第一に安静です。下痢や嘔吐は、ご自身が感じている以上に体力を激しく消耗します。身体は侵入してきた病原体や毒素を体外に排出しようと、多大なエネルギーを使っています。この身体の防御反応を助けるためにも、まずは楽な姿勢で横になり、身体を休めることに専念してください。仕事や学校、家事などは休み、体力を温存することが回復への近道です。

第二に、特に重要なのが水分補給による脱水の予防です。下痢や嘔吐では、水分だけでなく、体液のバランスを保つために不可欠なナトリウムやカリウムといった電解質も大量に失われます。この失われた水分と電解質を最も効率よく身体に吸収できるように調整されているのが経口補水液(ORS)です。

第三に記録です。医師が診断を下すうえで、この記録が大変重要な手がかりとなります。いつ、どこで、何を、誰と食べたか(できれば2~3日前まで遡って)、どのような症状が、いつから、どのくらいの頻度で起きているか、便の性状(水様便、血便など)や体温の変化などを、時系列でメモしておきましょう。また、もし可能であれば、原因究明のために便や嘔吐物を少量、清潔なビニール袋や蓋つきの容器に採取し、乾燥しないように密閉して冷蔵庫で保管し、受診時に持参すると、より正確な診断につながることがあります。

食中毒ではどのような症状が出たら受診すべきですか?

多くの食中毒は、適切な自己管理によって自然に回復しますが、なかには重症化したり、危険な合併症を引き起こしたりするケースがあります。以下のような症状や状況が見られる場合は、自己判断で様子を見ずに、速やかに医療機関を受診してください。

  • 水分をほとんど摂れず尿が8時間以上出ない
  • 38.5度以上の発熱、血便、黒色便、激しい腹痛
  • けいれん、意識障害、身体の点状出血
  • 乳幼児、高齢者、妊婦、免疫力が低い方で症状が続く

病院での食中毒の検査方法や診断基準を教えてください

医療機関では、まず丁寧な問診から原因の特定を試みます。患者さんが記録したいつ、何を、誰と食べたか症状の詳しい経過といった情報が、診断の最初の、そして最も重要な手がかりとなります。問診身体診察の結果、医師がより詳しい検査が必要と判断した場合には、主に以下の検査が行われます。

  • 便培養検査(細菌)
  • PCR検査(ノロ・ロタ)
  • 血液検査(脱水や炎症の程度)

これらの検査結果と問診、診察所見を総合的に判断して、医師は最終的な診断を下し、治療方針を決定します。

食中毒と診断されたら学校や職場に報告すべきですか?

はい、必ず報告が必要です。食中毒は、個人の健康問題であると同時に、周囲への感染拡大を防ぐという公衆衛生上の重要な側面を持っています。そのため、診断された場合は、速やかに所属する学校や職場に連絡し、適切な指示に従う義務があります。特に食品取扱業務の方保健所の就業制限解除まで復帰できません

食中毒と診断された後の対処法

食中毒と診断された後の対処法

食中毒と診断されたら病院ではどのような治療が行われますか?

食中毒の治療の基本は、原因となった病原体や毒素を体外へ排出し、その過程で生じる脱水や電解質の異常を補正しながら、身体自身の回復力をサポートする対症療法です。

治療の最大の柱は、水分・電解質の補給(輸液療法)です。軽度から中等度の脱水であれば、前述の経口補水液を用いた経口補水療法が中心となります。しかし、嘔吐が激しくて口から水分を摂ることがまったくできない場合や、すでに高度の脱水状態に陥っている場合には、入院して点滴による静脈輸液が必要となります。点滴によって、水分と電解質を直接血管内に送り込み、急速に体液バランスを正常化させます。

抗菌薬(抗生物質)の使用は、大変限定的です。抗菌薬が有効なのは細菌による食中毒のみであり、ノロウイルスなどのウイルス性食中毒にはまったく効果がありません。細菌性食中毒であっても、多くは自然に回復するため、抗菌薬が不要なケースがほとんどです。

血便を伴う重症例や、血液中に細菌が侵入している敗血症が疑われる場合など、特定の状況に限って医師の判断で使用されます。特に、腸管出血性大腸菌(O157など)の感染症では、抗菌薬の使用が菌を破壊する際に大量の毒素を放出させ、かえって重篤な合併症(HUS)のリスクを高める可能性があるため、原則として使用されません。

下痢や吐き気といったつらい症状を緩和する薬も、慎重に使用されます。吐き気が大変強い場合には、嘔吐中枢の働きを抑える制吐薬が使われることがあります。また、乱れた腸内細菌叢を整える目的で整腸薬が処方されることもあります。

食中毒で下痢や嘔吐があるときの家庭での感染対策を教えてください

ご家族の誰かがノロウイルスなどの感染力が強い食中毒にかかった場合、家庭内での二次感染を防ぐことが極めて重要です。特に、感染者の便や嘔吐物には大量のウイルスが含まれているため、その処理には細心の注意が必要です。

嘔吐物・便の正しい処理方法

準備
処理を始める前に、必ず使い捨てのマスク、手袋、エプロン(ガウン)を着用します。窓を開けて十分に換気することも忘れないでください。

拭き取り
ウイルスが飛び散らないように、嘔吐物や便をペーパータオルなどで外側から内側に向けて、静かに覆うようにして拭き取ります。

廃棄
拭き取ったペーパータオルや使用後の手袋などは、すぐにビニール袋に入れます。袋の中に後述の0.1%次亜塩素酸ナトリウム消毒液を少量スプレーしてから、口を固く縛って廃棄します。

消毒
汚染された場所を中心に、広めの範囲を0.1%次亜塩素酸ナトリウム消毒液で浸すように拭きます。数分置いた後、水拭きで消毒液を拭き取ります。

手洗い
すべての処理が終わったら、エプロン、マスク、手袋の順に外し、石けんと流水で30秒以上かけて丁寧に手を洗いましょう。

食中毒の下痢や嘔吐の症状を緩和する方法はありますか?

つらい症状を少しでも和らげるために、ご家庭でできるセルフケアがいくつかあります。しかし自己判断で下痢止めを使用することは避けてください。下痢は体内の病原体を排出するための重要な生体防御反応であり、これを無理に止めると回復を遅らせる可能性があります。医師から処方された整腸薬は、乱れた腸内細菌のバランスを整える助けになる場合がありますが、これも医師の指示にしたがって服用しましょう。

水分補給の工夫も有効です。経口補水液を少し冷やして飲むと、口当たりがさっぱりし、吐き気が和らぐことがあります。ただし、冷やしすぎると胃腸に負担をかけてしまうため、常温が基本です。少量ずつ、ゆっくりと摂取することを心がけてください。

身体を温めることも、腹痛の緩和に役立ちます。腹部を湯たんぽやカイロ、温かい毛布などで温めると、腸の過剰な動き(蠕動運動)やけいれんが和らぎ、差し込むような痛みが少し楽になることがあります。

食中毒による下痢や嘔吐で水分も摂取できないときの対処法を教えてください

重度の脱水症に陥る寸前の状態、あるいはすでに陥っている可能性が高い状況です。ためらわずにすぐに医療機関を受診するか、救急車を検討してください。

ご自身で動けない、あるいはご家族がそのような状態になった場合、救急車の到着を待つ間にもできることがあります。本人の意識がはっきりしている場合に限り、氷のかけらを口に含ませたり、水で濡らしたガーゼで唇を湿らせたりしてあげましょう。これにより、口の中の不快な渇きを和らげ、わずかながらでも水分を補給し、体温の上昇を少しでも抑える効果が期待できます。

意識障害がある場合は、経口補水液などを無理に飲ませようとすると、かえって嘔吐を誘発し危険な可能性もあるので避けましょう。

食中毒の回復期における対処法

食中毒の回復期における対処法

食中毒の症状がやわらいできたらすぐに普段の食事に戻してもよいですか?

嘔吐や下痢といった激しい症状が治まっても、胃腸の粘膜は大きなダメージを受けており、消化吸収能力は著しく低下しています。ここで焦って普段どおりの食事、特に脂っこいものや消化の悪いものを食べると、症状がぶり返してしまう再燃のリスクが大変高くなります。ダメージを受けた腸の機能が完全に戻るには、5日から10日ほどかかるともいわれています。回復を早め、再燃を防ぐためには、消化のよい食事を少量から始め、胃腸の様子を見ながら段階的に食事を戻していくことが何よりも大切です。

家庭内での食中毒の感染対策は治癒してから何日程度続けますか?

本人の自覚症状がなくなっても、便の中からはウイルスや細菌が排出され続ける無症候性キャリアという状態になることがあります。この期間に油断すると、気付かないうちに家庭内や地域社会に感染を広げてしまう可能性があります。

排出期間は病原体によって異なりますが、特にノロウイルスの場合は注意が必要です。症状が消えた後も、平均で1週間から10日間、長いときには1ヶ月近くにわたって便中にウイルスが排出され続けるという報告があります。またサルモネラ菌も数週間にわたり菌の排出が続くことがあります。

このため、同居するご家族などへの二次感染を確実に防ぐためには、症状が回復した後も最低1週間、可能であれば2週間程度は、以下の対策を継続することを強くすすめます。

編集部まとめ

まとめ

食中毒は、高温多湿な季節だけでなく、年間を通じて誰にでも起こりうる身近な病気です。しかし、その原因や対処法について正しい知識を持つことで、重症化を防ぎ、ご自身と大切なご家族を二次感染のリスクから守ることができます。万が一のときに慌てないよう、この記事で解説したポイントをぜひ日頃から心に留めておいてください。

この記事の監修医師