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「プール熱と新型コロナウイルス」の違いはご存知ですか?似ている症状や見分け方も解説!

 公開日:2025/08/08
「プール熱と新型コロナウイルス」の違いはご存知ですか?似ている症状や見分け方も解説!

夏場を中心に子どもに流行するプール熱と、依然として注意が必要な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。一見すると似たような症状もありますが、原因となるウイルスや対処法には違いがあります。本記事ではプール熱と新型コロナ感染症について基礎知識から症状の違い・共通点、見分け方、そして学校などでの出席停止期間の違いまでを解説します。両者を正しく理解し、適切に対応できるようにしましょう。

栗原 大智

監修医師
栗原 大智(医師)

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2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。

プール熱と新型コロナ感染症の基礎知識

プール熱と新型コロナ感染症の基礎知識

プール熱とはどのような病気ですか?

プール熱は正式には咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ)といい、アデノウイルスによって引き起こされる子どもに多い急性ウイルス感染症です。

主な症状は高熱・のどの痛み(咽頭炎)・眼の充血(結膜炎)の3つで、首のリンパ節腫脹や腹痛・下痢がみられることもあります。俗にプール熱と呼ばれるのは、かつてプールを介した集団感染が多かったことに由来しますが、近年はプールでの流行報告はほとんどありません。プール熱は学校保健安全法で第二種感染症に指定されており、治療法は特効薬がなく解熱剤などによる対症療法が中心ですが、多くの場合は自然に快方に向かいます。

現在の新型コロナ感染症の特徴を教えてください

新型コロナウイルス感染症は、SARS-CoV-2による呼吸器の感染症です。現在主流のオミクロン株では発熱、のどの痛み、咳、鼻水など風邪に似た上気道症状が中心で、頭痛や倦怠感を訴える方も多くいます。症状は個人差がありますが、多くは1週間前後で軽快し、かつて特徴的とされた嗅覚・味覚障害は現在はほとんど報告されなくなりました。

一方で、高齢者や基礎疾患のある方では重症化して肺炎を起こすリスクがあり注意が必要です。また、2023年5月8日から感染症法上の位置付けが季節性インフルエンザなどと同じ5類感染症となり、行動制限は法律上求められなくなりました。ただし発症後一定期間の自粛が推奨される点はインフルエンザと同様です。ワクチンや治療薬の普及もあり現在のコロナは全体的に重症度は低下していますが、依然として感染力が強く、流行の波が季節を問わず発生している点が特徴です。

プール熱と新型コロナ感染症の違いと似ている症状

プール熱と新型コロナ感染症の違いと似ている症状

プール熱と新型コロナ感染症の症状の違いを教えてください

両者にはいくつかの症状で明確な違いがあります。主な相違点は以下のとおりです。このような違いはありますが、なかには症状だけでは判別できない場合もあります。

目の症状の有無 プール熱ではほぼ必ず結膜炎(目の充血・目やになど)が見られます。一方、新型コロナ感染症で結膜炎が起こることはまれで、報告例でも1~3%程度とされています。

呼吸器症状 新型コロナでは咳や鼻水、息苦しさなどの呼吸器症状がよくみられます。プール熱でも咳や鼻水を伴うことがありますが、症状の中心は高熱とのどの痛みであり、激しい咳や鼻汁は少ない傾向があります。

消化器症状 プール熱では小児を中心に腹痛や下痢がみられることがあります。新型コロナでも一部で下痢や嘔気が出ることがありますが、その頻度はプール熱ほど高くありません。

プール熱と新型コロナ感染症に似ている症状はありますか?

はい、共通する症状も多く存在します。両疾患とも発熱は典型的で、特にプール熱・新型コロナともに38度以上の高熱が出ることがあります。また、のどの痛み(咽頭痛)も両者によく見られる症状です。そのほか、頭痛や全身の倦怠感、食欲不振などの全身症状は両者で共通して起こりえます。プール熱も新型コロナもウイルス性の上気道感染症であるため、初期の風邪のような症状は似通っており、症状だけで見分けるのが難しいケースも少なくありません。特にプール熱でも結膜炎症状が出ていない場合は、インフルエンザや新型コロナと症状がほぼ変わらないため、検査による確認が必要となります。

プール熱と新型コロナ感染症の見分け方

プール熱と新型コロナ感染症の見分け方

自分でプール熱と新型コロナ感染症を見分ける方法を教えてください

症状がよく似ているため、症状だけで見分けるのは難しい場合があります。ただし、いくつかのポイントがあります。まず、市販の新型コロナウイルス抗原検査キットを活用することです。発熱や喉の痛みなど体調に異変を感じたら、まずは抗原検査キットでセルフチェックし陽性なら一定期間外出を控えることが推奨されています。抗原検査で陽性となれば新型コロナ感染症の可能性が高いでしょう。逆に抗原検査が陰性で、特に子どもで高熱が続き目の充血が見られる場合はプール熱を疑います。

また、周囲でプール熱の流行が報告されているか(保育園や学校でアデノウイルス感染が出ていないか)も判断材料になります。とはいえ自己判断には限界があるため、症状が強かったり長引いたりする場合は早めに医療機関を受診して確定診断をつけることが大切です。

病院ではどのようにプール熱と新型コロナ感染症を見分けますか?

医療機関では医師が症状や所見から総合的に判断し、必要に応じて検査を行います。まず喉の腫れ具合や扁桃の様子、目の充血などを診察します。プール熱を疑えば、のどや結膜を拭ってアデノウイルスの迅速検査を行い、10分程度で陽性かどうか確認できます。

一方、新型コロナ感染症が疑わしい場合は鼻咽頭ぬぐい液などでPCR検査や抗原定量検査を実施します。医療機関ではこのような検査によって原因ウイルスを特定し、プール熱なのか新型コロナなのかを確定診断します。

プール熱と新型コロナ感染症の判断に迷ったときの診療科目を教えてください

発熱やのどの痛みなどがあり、プール熱か新型コロナか判断に迷う場合は、まず内科を受診しましょう。大人の場合は内科、子どもの場合は小児科が適切です。発熱外来を設置しているクリニックであれば迅速に各種検査を受けられます。

また、のどの痛みが主症状であれば耳鼻咽喉科でも対応可能です。目の充血がひどく眼痛が強い場合には眼科を受診したくなりますが、プール熱の場合は全身の感染症であるため、眼科だけではなく全身管理のできる小児科や内科でも診てもらう方が安心です。

出席停止措置におけるプール熱とコロナの違い

出席停止措置におけるプール熱とコロナの違い

プール熱の出席停止期間を教えてください

プール熱は学校保健安全法に基づき出席停止期間が定められています。規則では主要症状が消退した後、2日を経過するまで登校・登園は禁止とされています。具体的には、高熱やのどの痛み・目の充血などの主症状が治まってから丸2日間は自宅で安静にする必要があります。例えば、熱が下がって喉の痛みもなくなった日を0日目と数えて2日後から登校可能となります。

症状が治まってもウイルスはしばらく排泄され続けるため、規定の期間はしっかり休養を取りましょう。また、医師から登校許可(治癒証明)を求められる場合もありますので指示にしたがってください。

新型コロナ感染症に感染したら何日出席停止になりますか?

新型コロナウイルス感染症についても、学校保健安全法施行規則により出席停止の基準が示されています。令和5年5月8日以降は発症した後5日を経過し、かつ、症状が軽快した後1日を経過するまでを出席停止の目安とすると定められました。これはインフルエンザの出席停止基準に準じた措置で、新型コロナの場合は解熱などから1日経過で解除となります。

例えば、発症日(発熱や咳など症状が出た日)を0日目として数え、5日目が経過しかつ症状改善から1日経てば登校可能という計算です。ただし、この基準はあくまで出席停止の目安であり、2023年以降法律上は登校禁止の強制力はありません。本人の体調や周囲への感染リスクを考慮し、学校医や主治医と相談のうえで登校再開の時期を判断してください。症状が続いている場合や体力が回復していない場合は無理をせず十分療養しましょう。

編集部まとめ

編集部まとめ

プール熱と新型コロナ感染症は、ともにウイルス性の感染症で発熱や咽頭痛など共通する症状があるため、特に発症初期は見分けが難しい場合があります。プール熱は子どもに多く結膜炎を伴う点、新型コロナは呼吸器症状が強く全年齢が罹患しうる点など違いを押さえておきましょう。自己判断に迷う場合は市販の抗原検査キットを活用しつつ、医療機関で適切な検査を受けるようにしましょう。また、学校や職場での出席停止期間のルールも両者で異なります。プール熱は症状消失後2日間、新型コロナは発症後5日かつ解熱後1日とされています。周囲への感染拡大を防ぐため、これらの基準に沿って休養をとることが大切です。引き続き手洗いや咳エチケットを徹底し、感染予防と適切な対応を心がけましょう。

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