【この時期注意】「大人がヘルパンギーナ」を発症すると現れる症状はご存知ですか?
公開日:2025/08/17

ヘルパンギーナは、一般的に乳幼児を中心とした夏かぜとして知られている感染症ですが、実は大人も感染する可能性があります。特に大人が感染した場合、子どもよりも症状が辛いこともあります。本記事では、大人のヘルパンギーナがどのような病気なのか、また原因や感染経路、治療、予防法をQ&A形式で解説します。

監修医師:
居倉 宏樹(医師)
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浜松医科大学卒業。初期研修を終了後に呼吸器内科を専攻し関東の急性期病院で臨床経験を積み上げる。現在は地域の2次救急指定総合病院で呼吸器専門医、総合内科専門医・指導医として勤務。感染症や気管支喘息、COPD、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする呼吸器疾患全般を専門としながら一般内科疾患の診療に取り組み、正しい医療に関する発信にも力を入れる。診療科目
は呼吸器内科、アレルギー、感染症、一般内科。日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本内科学会認定内科医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医、肺がんCT検診認定医師。
は呼吸器内科、アレルギー、感染症、一般内科。日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本内科学会認定内科医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医、肺がんCT検診認定医師。
大人のヘルパンギーナの症状
ヘルパンギーナとはどのような病気ですか?
ヘルパンギーナは、発熱、咽頭痛と口腔粘膜にあらわれる水疱性の発疹を特徴とした急性のウイルス性咽頭炎です。ヘルパンギーナとは、ギリシャ語のヘルペス(水疱)とアンギーナ(咽頭炎)を組み合わせた造語であり、その名前のとおり、咽頭部の水疱形成が最も特徴的な症状のウイルス感染症です。原因となるウイルスは、エンテロウイルス属に属するウイルスに起因します。コクサッキーウイルスA群、コクサッキーウイルスB群、エコーウイルスやエンテロウイルス68~71型など、多種類のウイルスが原因となることが知られており、これが複数回の感染を可能にする要因でもあります。
日本では毎年5月頃より感染者が増加し始め、7月8月にピークを迎えます。しかし近年は9月10月頃に再度感染者が増加する年もあり、夏だけに流行る風邪ではなくなっています。
大人のヘルパンギーナの特徴を教えてください
大人のヘルパンギーナも、症状は子どもと似ており、以下のような共通の症状を認めます。
- 38〜40度の高熱(発熱は認めないこともある)
- 強い咽頭痛
- 咽頭粘膜の発疹
ヘルパンギーナの症状と似た症状が現れる病気はありますか?
ヘルパンギーナには2つの代表的な似ている疾患があります。
1つ目は手足口病です。手足口病は、ヘルパンギーナと同じエンテロウイルス群を原因とするウイルス感染症です。手足口病でもヘルパンギーナ同様、発熱やお口の中の水ぶくれ(水疱)を認めます。しかし、手足口病ではお口の中に加えて、手のひらや足の裏などにも水ぶくれ(水疱)を認める点がヘルパンギーナと異なります。
2つ目は咽頭結膜炎(プール熱)です。咽頭結膜炎はアデノウイルスを原因とするウイルス感染症です。ヘルパンギーナと同じく38〜40度の高熱と強い咽頭痛を認めます。しかし、咽頭結膜炎では、名前にあるとおり、結膜炎症状(眼の充血や流涙)を認める点がヘルパンギーナと異なります。
しかし、これらは典型例の話であり、実際には症状だけで見分けることが困難なこともあります。
大人のヘルパンギーナの原因と感染経路
大人のヘルパンギーナの原因を教えてください
ヘルパンギーナの原因は上述したとおり、エンテロウイルス群に属するウイルスです。いわゆる夏かぜと呼ばれるように、日本では夏に流行することが多い感染症です。流行の仕方に特徴があり、一般的に国内での流行は西の地域から東の地域へと推移していきます。感染者の約9割が5歳以下で子どもに多い風邪であり、大人のヘルパンギーナのほとんどは子どもからの二次感染です。
大人のヘルパンギーナはどのような経路で感染しますか?
大人のヘルパンギーナは主に子どもからの感染です。感染経路としては以下の3つの経路があります。
飛沫感染
感染者の咳やくしゃみにより放出される飛沫に含まれるウイルスを吸入してしまうことで感染が起こります。
接触感染
感染者の鼻水や唾液などの分泌物が手や物を介して感染します。幼い子どもはおもちゃをお口に入れたり、鼻水に触れた手でおもちゃを遊んだりすることがあり、大人がそのおもちゃを介して感染することもありえます。
糞口感染
ヘルパンギーナに感染している子どもの便中にもウイルスが含まれています。子どものオムツ交換などの際に気付かないうちに手に付着し、その手がお口に触れお口の中にウイルスが入ることで感染が起こります。
大人のヘルパンギーナを治療する方法と自宅での過ごし方
大人のヘルパンギーナが疑われるときは受診すべきですか?
大人のヘルパンギーナは症状が長引く場合や症状が重症化することがあります。また、ヘルパンギーナの原因であるエンテロウイルスによる感染では、まれではあるものの、無菌性髄膜炎、脳炎、心筋炎といった合併症を引き起こすことが報告されています。これらの合併症はときに命に関わる重篤な疾患であり、早期の治療介入が必要です。症状が軽快傾向になく、高熱が持続する、頭痛、胸痛、けいれんや異常行動などの症状を認める場合は、医療機関を受診し、検査や必要に応じて治療を受けることが求められます。
病院でのヘルパンギーナの治療法を教えてください
ヘルパンギーナには特異的な治療法が現在のところ存在しません。そのため、治療法は対症療法が中心になります。
主に発熱や痛みの症状に対して解熱鎮痛剤を使用して経過を見ていきます。高熱による発汗に伴う脱水や咽頭痛により水分が十分に摂取できず脱水傾向にある場合は点滴治療を行うこともあります。
ヘルパンギーナに感染した大人は会社を休む必要がありますか?
ヘルパンギーナでは、法律上の出勤停止期間は設けられていません。上述したとおり、典型的には感染後2〜4日程度で解熱し、咽頭痛などの症状も1週間程度で改善する経過をたどります。発熱などの症状が落ち着いてから24時間以上が経過し、全身状態が回復するまでは仕事を休んで安静に療養することが望ましいです。ご自身の症状の経過を踏まえ、会社と相談しましょう。
ヘルパンギーナに感染した大人が家庭内で気を付けることを教えてください
ヘルパンギーナは家庭内の感染が多く、さらなる感染の拡大を防ぐためにいくつか気をつけることがあります。
基本的な感染対策としては、こまめな手洗い、触った部分の消毒、タオルや物品を感染者と分けることや定期的な換気などがあります。
また、三世帯住宅など、高齢者と居住している場合は特に注意が必要です。ヘルパンギーナは免疫力の落ちやすい高齢者は感染をするリスクがあり、感染すると重篤化することがあります。感染すると重篤になるリスクの高い方は、可能な限り感染者とは接触をしないでいいように居住環境の整備を行うことが大切です。
大人のヘルパンギーナを予防する方法
大人がヘルパンギーナに何度も感染することはありますか?
はい、あります。ヘルパンギーナを引き起こすウイルスは10種類以上あるといわれています。そのため、感染し、ウイルスに対する抗体が体内で作られたとしても、別の型のウイルスに感染することで何度も感染することがあります。
ヘルパンギーナの感染対策を教えてください
ヘルパンギーナは飛沫感染、接触感染、糞口感染とさまざまな感染経路により感染するため、完璧に防ぐことは困難かもしれません。しかし意識して感染対策をすることで感染リスクを下げることはできます。まず徹底すべきことはこまめな手洗いや手指消毒、そして換気です。
また、子どもがヘルパンギーナに感染している場合、症状が改善後も2〜4週間は便中にウイルスが残っており、オムツ交換などによる感染リスクがあるため、症状が改善したからといって安心せず、引き続き感染対策を行うことが大切です。また、免疫力が低下し感染しやすい状態とならないように、十分な睡眠やバランスのよい食事、ストレス管理なども感染対策として有効です。
ヘルパンギーナの予防接種はありますか?
ヘルパンギーナには予防接種は存在しません。そのため、上述したような感染対策を徹底することが大切です。
編集部まとめ
ヘルパンギーナは子どもの夏かぜと思い、子どもが感染したときに対策を怠っていると、大人にも感染する可能性があります。大人のヘルパンギーナはときに症状が強く、治癒に時間がかかる場合もあります。予防接種が存在しないため、日々の手洗いや換気といった感染対策を行い、感染しないようにしましょう。万が一感染した場合は対症療法になりますが、症状が軽快しない場合や合併症を疑う場合は速やかに医療機関を受診し適切な治療を受けることが大切です。




