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「熱中症で寒気」を感じる原因はご存知ですか?症状や対処法も解説!【医師監修】

 公開日:2025/08/24
「熱中症で寒気」を感じる原因はご存知ですか?症状や対処法も解説!【医師監修】

猛暑日の屋外や蒸し暑い室内に長くいることで体温が急上昇し、熱中症を起こすことがあります。多くの方が身体が熱くなる症状を想像しますが、実はブルッと悪寒がして寒いと訴えるケースも少なくありません。この寒気は、一見すると熱中症とは結びつかない軽いサインに思えるかもしれませんが、実際には身体の体温調節機能が限界に達し、生命の危険が迫っていることを示す大変重要なサインです。この状態を放置すると、意識障害や多臓器不全など、深刻な事態に至るおそれがあります。本記事では、熱中症で寒気が起こるしくみやほかの病気との見分け方、受診の目安と家庭で行う応急処置を解説します。

高宮 新之介

監修医師
高宮 新之介(医師)

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昭和大学卒業。大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術を経験し、外科専門医を取得。昭和大学大学院 生理学講座 生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事し学位を取得。昭和大学横浜市北部病院の呼吸器センターで勤務しつつ、週1回地域のクリニックで訪問診療や一般内科診療を行っている。診療科目は一般外科、呼吸器外科、胸部外科、腫瘍外科、緩和ケア科、総合内科、呼吸器内科。日本外科学会専門医。医学博士。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)修了。ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)。BLS(Basic Life Support)。

熱中症による寒気の症状とは

熱中症による寒気の症状とは

熱中症で寒気を感じることはありますか?

熱中症の症状として寒気(悪寒)を感じることは、医学的にも確認されており、特に症状が進行している危険な状態を示すサインとして知られています。身体の内部の温度(深部体温)は40度近くまで上昇しているにも関わらず、本人は寒いと感じ、ガタガタと身体が震えるシバリングという現象が起こることさえあります。これは、体温調節を司る脳の司令塔(視床下部)が機能不全に陥っているか、または大量の汗によって体内の水分が極度に不足し、血の巡りが悪化していることによって生じます。一見矛盾しているように思えるこの症状こそ、熱中症がすでに軽症の段階を超え、中等症から重症へと移行しつつあることを示しているのです。

熱中症による寒気の特徴を教えてください

熱中症による寒気は、いくつかの特徴的な状態を伴います。最も重要なのは、本人が寒さを訴えている一方で、他人が皮膚に触れると大変熱く感じられる点です。具体的には、体温計で測ると38度から40度、あるいはそれ以上の高熱になっていることが多く、皮膚は赤みを帯びて乾燥しているか、もしくは体温を下げるための発汗機能が追いつかず、大量の汗でじっとりと湿っている状態です。悪寒そのものは、数分から十数分程度の短い時間で収まる傾向にありますが、寒気が消えたからといって回復したわけではありません。むしろ、頭痛や倦怠感、意識がもうろうとするなど、より深刻な症状へ移行する前触れであることが多いため、決して油断は禁物です。

熱中症の寒気はどのような症状とともに現れますか?

めまい、吐き気、歩行のふらつき、脈拍の速さ、けいれん、意識障害などを伴います。これらが同時にみられる場合は病院受診が必要な場合があります。

熱中症の寒気と風邪などの寒気の違いを教えてください

熱中症の寒気と、風邪やインフルエンザによる悪寒は、発症した状況やほかの症状を丁寧に見ることで見分けることが可能です。両者は対処法がまったく異なるため、正確な見極めが大変重要になります。まず、大きな違いは発症状況です。熱中症は、猛暑日の屋外や閉め切った室内、車内といった高温・多湿の環境にいた後に発症します。

次に症状も異なります。熱中症では頭痛、吐き気、めまい、強い倦怠感などが主な症状です。これに対して風邪の場合は、咳、鼻水、喉の痛みといった症状や、関節痛・筋肉痛などを伴うことが一般的です。

発汗の様子にも違いがあります。熱中症の初期には体温を下げようと大量の汗をかきますが、重症化すると発汗機能が麻痺し、汗が止まって皮膚が乾燥することがあります。風邪の場合は発汗機能は保たれており、熱が下がる際に汗をかくことが多いです。

熱中症により寒気を感じる原因

熱中症により寒気を感じる原因

そもそもなぜ人間の身体は寒気を感じるのでしょうか?

私たちの身体は、脳の視床下部という部分にある体温調節中枢によって、常に体温が約37度に保たれるよう精密にコントロールされています。この視床下部が寒いと判断すると、熱を産生するために筋肉を小刻みに震わせるよう命令を出します。この筋肉の震えが、私たちが感じる寒気や悪寒(おかん)の正体です。本来は体温を維持するための正常な生理反応ですが、熱中症のように体温調節システムが乱れた場合にも異常な形で起こることがあります。

熱中症で寒気がする原因を教えてださい

体温が危険なレベルまで上昇しているにもかかわらず寒いと感じてしまうのは、体温調節システムが破綻し、身体が矛盾した異常な反応を起こしているためです。その原因は主に3つ考えられています。

第一に、体温調節の司令塔である視床下部の機能不全です。視床下部は熱に弱く、深部体温が40度を超えるとダメージを受け、正常に機能しなくなります。その結果、体温が危険なほど高いにもかかわらず体温が低いと誤った判断を下し、体温を上げるための指令、つまり筋肉を震わせる(シバリング)命令を出してしまうのです。

第二に、大量発汗による循環血液量の低下です。体温を下げるために大量の汗をかくと、体内の水分が失われ、血液全体の量が減少します。すると身体は、生命維持に不可欠な脳や心臓などの重要臓器に血液を優先的に送ろうとし、手足の末梢血管を強く収縮させます。これにより皮膚への血流が急激に減って皮膚温が低下し、皮膚のセンサーが冷えを感知して脳に寒いという信号を送るのです。

第三に、この筋肉の震え(シバリング)自体が、本人の感じる寒気となります。この震えはさらに体温を上昇させ、熱中症を悪化させるという悪循環に陥らせます。

熱中症で寒気があるときの対処法

熱中症で寒気があるときの対処法

熱中症で寒気を感じるときは病院を受診した方がよいですか?

はい、ただちに医療機関を受診することを強くすすめます。寒気の症状が出ている時点で、熱中症はすでに中等症(Ⅱ度)以上に進行していると考えられ、放置すれば急速に重症化するおそれがあります。特に、意識がおかしい、けいれんを起こしている、体温が40度以上あるといった場合は、命の危険があるため、病院受診してください。

子どもや高齢者が熱中症により寒気を感じているときの対処法を教えてください

子どもと高齢者は、体温調節機能が未熟であったり、衰えていたりするため、熱中症が重症化しやすく、特に迅速な対応が求められます。

まず、エアコンの効いた室内や風通しのよい日陰など、涼しい環境へ速やかに避難させます。次に、ベルトなどをゆるめて衣服を緩め、身体から熱が逃げやすいようにします。そして、太い血管が通っている首の両脇、わきの下、足の付け根を、氷のうや冷たいペットボトルなどで集中的に冷やすと効率的です。

意識がはっきりしている場合に限り、水分と塩分を同時に補給できる経口補水液やスポーツドリンクを少量ずつ、ゆっくりと飲ませてください。吐き気がある、意識がはっきりしない場合は、誤嚥の危険があるため無理に飲ませてはいけません

熱中症による寒気があるときは部屋を温かくしてもよいですか?

避けてください。これは熱中症の対処として最も危険な誤りの一つです。本人が寒いと訴えていても、それは脳の機能不全による誤った信号であり、身体の内部(深部体温)は危険なレベルまで上昇しています。この状態で身体を温めると、体温がさらに上昇し、脳や心臓、腎臓などの臓器障害を急速に悪化させ、死に至る危険性を著しく高めます。寒気の訴えがあっても、行うべきは冷却です。室温はエアコンなどを使用して涼しく保ち、身体を冷やす処置と、意識があれば水分補給を最優先で行ってください。

編集部まとめ

編集部まとめ

熱中症で寒いと感じる悪寒は、決して軽視してはならない、身体からの最終警告ともいえる危険なサインです。この症状は、体温調節機能が破綻し、生命の危機が迫っていることを示しています。意識障害やけいれんを伴う場合は、ただちに救急車を呼んでください。本人が寒さを訴えても、身体を温めるのは絶対に避け、涼しい場所で身体を冷やす応急処置を最優先しましょう。特に重症化しやすい子どもや高齢者には、周りの方が異変に早く気付き、迅速な対応を心がけることが命を守る鍵となります。

この記事の監修医師