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「熱中症の原因」になりやすい身体の状態はご存知ですか?【医師監修】

 公開日:2025/08/25
「熱中症の原因」になりやすい身体の状態はご存知ですか?【医師監修】

「気温はそれほど高くないのに、体調が悪くなった」「夜間に冷房をつけずに寝ていたら、翌朝ふらついた」このような経験はありませんか?
実は熱中症は、真夏の炎天下だけでなく、湿度が高い日や風通しの悪い場所、そして屋内や夜間でも発症する可能性があります。
本記事では、熱中症を発症するメカニズムや発症しやすい環境、注意すべき身体の状態や行動をわかりやすく解説します。

居倉 宏樹

監修医師
居倉 宏樹(医師)

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浜松医科大学卒業。初期研修を終了後に呼吸器内科を専攻し関東の急性期病院で臨床経験を積み上げる。現在は地域の2次救急指定総合病院で呼吸器専門医、総合内科専門医・指導医として勤務。感染症や気管支喘息、COPD、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする呼吸器疾患全般を専門としながら一般内科疾患の診療に取り組み、正しい医療に関する発信にも力を入れる。診療科目
は呼吸器内科、アレルギー、感染症、一般内科。日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本内科学会認定内科医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医、肺がんCT検診認定医師。

熱中症のメカニズム

熱中症のメカニズム

熱中症を発症するメカニズムを教えてください

熱中症は暑くて湿気の多い環境下において、体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体温調節機能がうまく働かなくなったりすることで発症します。
また、熱中症には下記のとおり複数のタイプがあり、症状は段階的に悪化します。

熱中症のタイプ 症状の特徴
熱失神 めまい、立ちくらみ、一時的な失神
熱けいれん 大量の汗をかいた後の筋肉の痛みやけいれん
熱疲労 頭痛、吐き気、全身のだるさや気分不良
熱射病 意識障害、けいれん、高体温(40度以上)

特に熱射病は中枢神経(脳)にまで影響が及ぶ可能性があり、緊急の治療が必要な状態です。

熱中症の際に体内では何が起きていますか?

熱中症を発症した際に、体内では次のようなことが起きています。

体温が上昇する
高温や強い日差し、運動などで身体が熱を作りすぎたり、うまく放熱できなかったりすると体温が上昇します。特に体温が40度を超えると、脳をはじめとする臓器に障害が起こるリスクが高くなります。

水分と塩分(電解質)が大量に失われる
汗をかくことで、体内の水分や塩分が失われます。脱水が進行すると血液量が減り、血圧が下がって脳や臓器への血流が不足します。

脳や心臓、肝臓、腎臓などの臓器がダメージを受ける
体温が上がり過ぎたり、血流が不足したりすると、臓器に必要な酸素や栄養素が届かなくなり、働きが悪くなります。特に脳が影響を受けると、意識がもうろうとしたり、けいれんが起きたりといった重篤な症状につながります。

全身に炎症が広がる
体温が極端に上がると、炎症反応が全身に広がることがあります。これにより、血液が固まりにくくなるDIC(播種性血管内凝固症候群)や、腎不全・肝不全などを引き起こすことがあります。

熱中症を引き起こしやすい環境

熱中症を引き起こしやすい環境

熱中症になりやすい環境を教えてください

先述したとおり、熱中症は高温多湿な環境で起こりやすくなります。
これは、気温が高いほど身体に熱がこもりやすく、湿度が高いと汗が蒸発しにくくなって体温を下げづらくなるためです。さらに無風状態では、皮膚からの熱の放散が妨げられて、身体に熱が蓄積してしまいます。

熱中症が発生しやすい場所はありますか?

熱中症が発生しやすい場所は、屋外・屋内を問わず高温多湿で風通しが悪い環境です。具体的には、以下のような場所が挙げられます。

  • 建設現場や屋外の作業場
  • 空調のない工場や厨房
  • 空気のこもる車内
  • 夏の体育館や運動施設
  • 学校のグラウンド、運動場
  • 住居(エアコンを使用していない場合)

なお、総務省消防庁の調査によると、熱中症の発生場所の約4割が住居内だとされています。

熱中症になる可能性が高くなる気温や湿度を教えてください

熱中症のリスクを評価する際には、WBGT(湿球黒球温度)という指標を用います。WBGTは、気温、湿度、日射・輻射(ふくしゃ)熱を総合的に評価する暑さ指標です。WBGT値が28度以上で厳重警戒、31度以上で危険レベルとされています。

熱中症の原因になりやすい身体の状態

熱中症の原因になりやすい身体の状態

身体がどのような状態のときに熱中症になりやすいですか?

熱中症は、身体の熱をうまく外に逃がせない状態のときに起こります。具体的には、身体が次のような状態であると、熱中症になるリスクが高くなります。

脱水
汗をかくと体内の水分と塩分が失われます。十分な水分補給ができないと血液量が減少して、熱を体外に逃がす効率が低下します。その結果、体温が下がらずに熱中症のリスクが高まります。

持病がある
高血圧、糖尿病、精神疾患などの持病がある場合、体温調節機能がうまく働かなくなることがあります。また、これらの疾患に使用される薬も自律神経や水分バランスの調節に影響します。

肥満
肥満であると、脂肪が断熱材のように働いて身体の熱を外に逃がしにくくなります。

運動習慣がない・暑さに慣れていない
日頃から運動習慣がない方や暑さに慣れていない方は、汗のかき方や体温調節機能が未発達です。そのため、急激な気温の変化に対応できない場合があります。

体調不良時
体力の低下や水分補給の不足がみられるときは、熱中症に対する抵抗力も下がります。特に下痢や発熱時には脱水傾向にあるため、熱中症のリスクが高まります。

熱中症になりやすい年齢や性別を教えてください

総務省消防庁の調査によると、令和6年5月から9月にかけて熱中症で救急搬送された方のうち、半数以上が高齢者(65歳以上)でした。
高齢者は、体温調節機能や喉の渇きに対する感覚が鈍くなるうえ、持病や服薬の影響で脱水になりやすい傾向があります。

また、熱中症の発症率は女性より男性の方が高いことがわかっています。しかし、熱中症の発症リスクに性別そのものが関連しているかについては、明確にはわかっていません。男性の発症率が高い背景には、男性が女性よりも仕事やスポーツなどで屋外で活動する機会が多いことや、熱中症対策の行動習慣の差などがあると考えられています。

熱中症を発症しやすい病気はありますか?

次のような疾患のある方は、熱中症を発症しやすいとされています。

高血圧
高血圧のある方は、動脈硬化によって血管が拡張しにくく、体外へ熱を放散しづらい状態になっています。また治療薬のひとつである利尿薬は、体内の水分を外に出すことで血圧を下げる働きをするため、脱水状態になりやすいといえます。

糖尿病
糖尿病の方は、自律神経の働きが低下して体温調節がうまくできなくなることがあります。また、尿量が増えて脱水傾向になり熱中症のリスクが高まります。

精神・神経系の疾患
精神や神経系の疾患がある方は、暑さに気付きにくかったり、熱中症予防に必要な行動(水分補給や涼しい場所への移動など)が遅れたりすることがあります。そのため、気付かないうちに熱中症が進行してしまうリスクがあります。

熱中症の原因になりやすい行動

熱中症の原因になりやすい行動

熱中症になりやすい仕事はありますか?

厚生労働省の調査によると、熱中症による死傷者の4割が建設業・製造業で発生しているとされています。特に、次のような特徴をもつ職業の方は注意が必要です。

屋外での作業が多い仕事
建設業が代表的です。直射日光の下で長時間作業を行うため、気温や湿度の影響を大きく受けます。また、足場の上など風通しが悪い環境では、さらに危険性が増します。

高温な環境での作業
製造業のなかでも、鉄鋼業や鋳造業など、高温の炉や機械がある環境では、室内でも熱がこもりやすくなります。

重い作業服や保護具の着用が必要な仕事
作業着やヘルメット、防護具などで体温がこもりやすく、発汗や体温調節がうまくできなくなる場合があります。

熱中症を発症しやすいスポーツを教えてください

屋外、屋内それぞれに熱中症を発症しやすいスポーツがあります。

屋外スポーツ
炎天下で行う屋外スポーツは、熱中症リスクが高くなります。
例えば、サッカー野球、陸上競技などは広いグラウンドで長時間にわたって行われることが多く、強い日差しや高温の影響を強く受けやすい状態です。

屋内スポーツ
屋内のスポーツでも注意が必要です。例えば、バスケットボールバレーボールでは、室内で行われるうえに運動量が多く、大量の汗をかきやすい競技です。さらに、室内は風通しが悪く湿度が高くなる傾向にあり、換気が不十分であると身体に熱がこもってしまいます。

また、剣道のように防具を着用する競技では身体から熱が逃げにくく、汗が蒸発しづらいため、体温が上昇しやすくなります。

バドミントンでは、シャトルの軌道が風の影響を受けるため、窓やドアを閉め切って練習することが多くなります。こうした換気の悪い環境で長時間プレーを続けると、熱中症のリスクが高まるため注意が必要です。

水泳競技
一見すると涼しそうにみえる水泳競技ですが、プールでの熱中症にも注意が必要です
特に屋外プールでは、強い日差しや高気温の影響で水温が上昇し、体温への影響がないとされる中性水温(33~34度)を超えると、例え水に浸かっていても体温が上がりやすくなります。また、水の中にいると汗をかいていることに気付きにくく、脱水に気付かないまま熱中症を発症する場合もあります。

水分が不足していると熱中症になりますか?

はい。水分不足は熱中症の大きな原因のひとつです。人間は暑いと汗をかいて身体の熱を逃がしますが、その際に水分と塩分が失われます。これらをしっかり補えないと体温が下がらなくなり、脱水が進行して熱中症を引き起こします。

特に以下のような場合は脱水状態になる可能性があります。

  • 喉が渇く前に水分補給をしていない
  • カフェインやアルコール摂取量が多い
  • 暑い場所で作業していても水分をとるタイミングがない

また、水分だけでなく塩分も一緒に補うことがポイントです。経口補水液やスポーツドリンクも活用するとよいでしょう。

編集部まとめ

編集部まとめ

 熱中症は炎天下だけでなく、夜の寝室や屋内の運動中など、思わぬ場所でも起こる可能性があります。
体内では水分や塩分のバランスが崩れたり、体温がうまく下がらなかったりして、気付かないうちに負担が蓄積します。特に小さな子どもや高齢者、持病のある方は重症化しやすいため、こまめな水分と塩分の補給や、涼しい場所での休息を意識しましょう。

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