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「熱中症で頭痛」を発症する原因はご存知ですか?対処法も解説!【医師監修】

 公開日:2025/08/04
「熱中症で頭痛」を発症する原因はご存知ですか?対処法も解説!【医師監修】

暑い時期になると増えてくる熱中症。その症状の一つとして頭痛があります。熱中症で頭痛がある場合は、中等症や重症の場合であり、ときに命に関わることもあります。本記事では、熱中症で頭痛が起こるメカニズムや特徴、ほかの頭痛との違い、そして適切な治療法についてわかりやすく解説します。

居倉 宏樹

監修医師
居倉 宏樹(医師)

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浜松医科大学卒業。初期研修を終了後に呼吸器内科を専攻し関東の急性期病院で臨床経験を積み上げる。現在は地域の2次救急指定総合病院で呼吸器専門医、総合内科専門医・指導医として勤務。感染症や気管支喘息、COPD、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする呼吸器疾患全般を専門としながら一般内科疾患の診療に取り組み、正しい医療に関する発信にも力を入れる。診療科目
は呼吸器内科、アレルギー、感染症、一般内科。日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本内科学会認定内科医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医、肺がんCT検診認定医師。

熱中症と頭痛の関係

熱中症と頭痛の関係

熱中症は頭痛になりやすいですか?

はい、熱中症は頭痛になりやすいです。特に高温多湿の環境下で身体に熱がこもると、体温調節が正常に行えず、脳への血流が低下し、頭痛を引き起こすと考えられています。

熱中症で頭痛が生じるメカニズムを教えてください

人間の身体は、体温が上昇したときに、体内の温度(深部体温)が上がりすぎることを防ぐために体温調節機構が働きます。

体温が上昇すると、皮膚の血管を拡張させ、血流を増加させることで体内の熱が外部へと放出されます。また、発汗によっても放熱し、体温を調節しています。しかし、高温多湿の環境に長時間晒されると、熱の放出が追いつかず、深部体温を下げることができなくなります。そして、大量の発汗により体内が脱水傾向になります。体内の水分を喪失すると全身をめぐる血液量(循環血液量)が低下し、脳をはじめとする重要臓器への血流が低下します。それによって頭痛、めまい、倦怠感といった全身症状が生じると考えられています。

熱中症による頭痛の特徴とほかの病気による頭痛との違い

熱中症による頭痛の特徴とほかの病気による頭痛との違い

熱中症による頭痛にはどのような特徴がありますか?

熱中症による頭痛は、ズキズキ・ガンガンとした痛みと表現される傾向にあります。 これは、体内にこもった熱や脱水によって脳への血流が低下するために起こると考えられています。そのほかにも電解質異常や炎症により放出されるサイトカインという物質も頭痛が生じるメカニズムに関与していると考えられています。 深部体温が40度を超えると細胞の変性が起こり、多臓器へと障害をおよぼすといわれています。また、熱中症は一時的な異常で必ず回復する病気ではなく、対応が遅れると後遺症を残しうる危険な病気です。熱中症による頭痛は、身体からの危険サインの一つです。放置せず、早めの対処や受診が大切です。

熱中症で頭痛以外に生じる症状を教えてください

熱中症では頭痛のほかにも、さまざまな症状が現れます。代表的なものには、めまい、吐き気、身体のだるさ、大量の発汗や逆に汗がでなくなるといった症状があります。さらに症状が進行すると、意識がもうろうとする、呼びかけに反応しにくくなる、筋肉の痙攣など、命に関わる重い状態に進むこともあります。

熱中症による頭痛とほかの病気による頭痛はどう違いますか?

熱中症による頭痛と、ほかの病気による頭痛の違いは、原因と症状の現れ方にあります。熱中症は中等症以上で頭痛を認めます。軽症のときには吐き気やめまい、立ちくらみ、筋肉痛などの症状を認めるため、頭痛が生じているときには、これらの症状も伴っていることが多いです。

頭痛をきたすほかの疾患はたくさんありますが、代表的な疾患に、片頭痛くも膜下出血などがあります。 例えば片頭痛では、嘔気を認める方もいますが、全身症状はあまり見られない傾向にあります。しかし熱中症では、頭痛のほかにも、発熱や筋肉痛などの症状を認め、それが片頭痛とは異なる点です。

また、光や音に過敏になる、特定の予兆(閃輝暗点など)があるといった片頭痛特有の症状も違いになります。

くも膜下出血では何時何分のあの瞬間から痛いといったように、突然の痛みで自覚することが多いですが、熱中症では病態が悪化するなかで徐々に頭痛が生じる点が異なります。

そのほかにも、髄膜炎脳炎なども頭痛を認める疾患です。

このように頭痛をきたす疾患は多岐にわたります。上記に頭痛をきたすほかの疾患と熱中症の違いの一例として挙げましたが、実際には、頭痛だけで熱中症かどうかを見分けることは難しく、そのほかの症状や状況を踏まえての判断が必要になります。 また、熱中症とは別の疾患になりますが、夏場は汗を多くかくため脱水傾向になりやすく、血液の粘度が高まることで血栓(血の塊)ができやすくなり、脳梗塞のリスクが上昇するといわれています。脳梗塞の初期症状には、軽度の麻痺、めまい、吐き気、ふらつきなどがあり、熱中症の症状と似ているため注意が必要です。呂律が回らない片方の手足に力が入らない顔の片側が歪むといった症状が少しでも見られた場合は、脳梗塞を疑い、速やかに医療機関を受診してください。

熱中症と頭痛の治療法

熱中症と頭痛の治療法

熱中症はどのように治療しますか?

熱中症の治療は、症状の重さに応じて治療法が異なります。しかし共通する部分もあります。身体にこもった熱を下げ水分と塩分を補うことです。熱中症の症状が軽い場合は以下の方法で改善が期待できます。

  • 涼しい場所へ移動
  • 衣類をゆるめて熱を逃す
  • 首、脇の下、太ももなどの太い血管がある部位を冷やす
  • 経口補水液やスポーツドリンクで、水分・塩分の補給を行う

次の症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。

  • 意識がもうろうとしている
  • 自力で水が飲めない
  • 吐き気、嘔吐で水分がとれない
  • 呼びかけに反応しにくい、けいれんがある

病院では以下のような治療が行われます。

  • 点滴による水分や電解質の補正
  • 意識障害や呼吸困難時には入院下での酸素投与や投薬治療(DIC予防など)

熱中症は早めの対応が重症化を防ぐカギです。症状が軽いうちに対処し、少しでも異変を感じた場合は医療機関に相談しましょう。

医療機関での熱中症による頭痛の治療法を教えてください

治療内容としては、点滴治療、体表、体内の冷却をメインに行います。点滴の目的は脱水や電解質異常の改善です。

深部体温が高温な状態が数時間続いてしまうと、DIC(播種性血管内凝固症候群)という全身の血管内で小さな血栓が多発する疾患を引き起こすことがあります。この疾患は、全身に血栓を作ることで多臓器に障害を及ぼし、また、凝固に関与する物質が消耗され出血傾向にもなる病態です。まれに発症することがあり、命に関わります。。熱中症の際、早急に体温を下げることはこれらの重篤な疾患を予防する目的があります。

また、入院管理が必要な状態では、全身状態を安定させる酸素投与や点滴治療などを行うこともあります。

熱中症による頭痛は市販の鎮痛剤で治りますか?

熱中症による頭痛に対して、市販の鎮痛剤を使用することはあまり推奨されていません。理由としては、熱中症における高体温への解熱効果は明らかにされていないからです。 風邪などで見られる発熱には、脳内の視床下部という部位が関与します。ウイルスが体内に侵入し炎症を起こすと、プロスタグランジンという物質が放出されます。この物質が視床下部に作用し、体温を上げるように指示が出されます。その指示により、筋肉を震えさせて熱を産生させます。また、皮膚表面の血管を収縮させることで、体内から熱を逃さないようにすることで発熱が起こります。

またこのとき、体内では炎症によりブラジキニンという物質が放出されます。この物質が頭痛を引き起こすと考えられています。プロスタグランジンはブラジキニンによる痛み増強する作用があります。これらの物質が頭痛に関与しています。

しかし、熱中症はメカニズムが異なります。高温の環境下で、皮膚の血管や発汗による放熱で十分に体温が下がらず、深部体温が上昇することで熱中症が引き起こされます。深部体温が上がると脳をはじめとする臓器の機能が低下し、体温調節機能も低下します。 脳への血流が低下するために頭痛が引き起こされると考えられており、上述した感染症などによる頭痛とはメカニズムが異なります。

市販の鎮痛剤では、感染症などによる発熱を引き起こす物質であるプロスタグランジンやブラジキニンを抑制することで解熱、鎮痛作用を示すと考えられています。しかし、熱中症では発熱を起こしているメカニズムが異なるため、症状を改善する効果がはっきりとしていません。

また、ほかの疾患などが原因の場合に、これらの解熱鎮痛剤により症状が隠れてしまうこともありますので、安易な使用は控えるべきです。

熱中症の頭痛だけ治らないときの対処法を教えてください

熱中症の初期対応を行なっても、頭痛だけがなかなか治らないという場合があります。上述したとおり、熱中症になり、深部体温が高い状態が続いてしまうと、脳などの中枢神経へ障害を残す場合があります。頭痛が続いているときは、注意が必要ですので、医療機関を受診してください。また、頭痛だけが治らないというときは、熱中症の頭痛ではない別の疾患が原因の可能性もあります。自己判断で様子を見ずに、医師にご相談ください。

編集部まとめ

編集部まとめ

熱中症による頭痛は、脱水・高体温・自律神経の乱れ・全身炎症など複数の要因が重なって起こります。ズキンズキンと痛む頭痛であり、吐き気、倦怠感を伴います。十分な冷却、水分や塩分補給を早急に行うことが大切です。症状が続く場合や改善しないときは、早めに医療機関に受診しましょう。

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