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「熱中症の症状」はご存知ですか?初期症状や進行すると現れる症状も解説!

 公開日:2025/08/06
「熱中症の症状」はご存知ですか?初期症状や進行すると現れる症状も解説!

暑さが厳しい季節になると、注意したいのが熱中症です。めまいや頭痛などの軽い症状から始まり、進行すると意識障害など命に関わる状態に至ることがあります。屋外だけでなく、室内でも起こる可能性があり、誰にでも起こりうる病気です。本記事では、熱中症の前兆や初期症状、原因、対処法、そして受診の目安までをわかりやすく解説します。

江口 瑠衣子

監修医師
江口 瑠衣子(医師)

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2009年長崎大学医学部卒業。大学病院での初期臨床研修終了後、10年以上にわたり地域の基幹病院で腎臓内科の診療に従事。患者さん一人ひとりに寄り添った医療を心がけており、現在は内科・精神科の診療を行っている。腎臓専門医。総合内科専門医。

熱中症の前兆と症状

熱中症の前兆と症状

熱中症になる前兆はありますか?

熱中症になる前兆は、軽い頭痛や不快感、いつもより疲れやすい、口の渇きを感じる、何となく体調がすぐれない、などの症状が挙げられます。そのほかにも軽い吐き気やムカムカ感などもあります。ただ、これらの前兆と熱中症の初期症状との切り分けは難しく、すでに熱中症が始まっているサインの可能性も否定できないため注意が必要です

熱中症の初期症状を教えてください

熱中症の初期症状には、次のような症状があります。

  • めまい、立ちくらみ
  • 生あくび
  • 多量の発汗
  • 筋肉痛、筋肉の硬直(こむら返り)

これは熱中症の重症度分類でいうところのⅠ度の症状で、熱中症のなかでは最も軽症の症状です。なお、熱中症の重症度はⅠ~Ⅳ度に分類されています。

熱中症が進行するとどのような症状が現れますか?

熱中症の病状が進むと、重症度分類のⅡ度となり、頭痛、吐き気や嘔吐、全身倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下などが出現します。

熱中症がさらに進行すると、重症度分類のⅢ度となります。具体的な症状は次のとおりです。

  • 意識障害(意識がもうろうとしている、今いる場所や時間がわからないなど)
  • けいれん発作
  • 手足の運動障害(手足がうまく動かせない
  • 小脳症状(ふらつきや手足のふるえ、まっすぐ歩けない

これらの症状以外にも、身体の中の臓器にも深刻な影響が現れます。肝臓や腎臓の働きが悪くなり、入院での治療が必要な状態となります。

そして、病状が最も重症の段階まで進行すると重症度分類のIV度となります。深部体温が40度以上に上がり、意識がほとんどない状態となります。

熱中症の原因とメカニズム

熱中症の原因とメカニズム

熱中症の原因を教えてください

熱中症は環境、からだ(体調)、行動の3つの条件が重なることで起こります。

  • 環境気温が高い、湿度が高い、風が弱い
  • 身体高齢者、乳幼児、脱水、体調不良
  • 行動激しい運動、慣れない運動、長時間の屋外作業、水分が補給しにくい環境

通常は体温が上昇するとその熱を皮膚の表面から逃がしたり、汗をかいて熱を逃がしたりします。しかしこの3つの条件がそろうと、体温の上昇調節機能のバランス崩れてしまい身体にどんどん熱がたまります。これが熱中症です。

熱中症のとき、体内ではどのようなことがおきていますか?

通常、体温が上がると、身体の表面にある皮膚の毛細血管熱をもった血液を送ります。そして、その熱を身体の外へ放出することで血液の温度を下げます。身体の表面に血液が集まるため、身体をめぐる血液の量(循環血液量は減少します。また、汗をかくことで汗の蒸発による気化熱で体温を下げますが、汗をかくと身体の中の水分量が減ります皮膚に血液を集めることと、発汗による脱水のために、熱を運び出す血液が減って、熱をうまく体外へ逃がせなくなってしまいます。

さらに熱中症が進行すると、体内では2つの変化によって、より重大な影響がみられるようになります。高い体温が長時間続くことと、循環血液量が減ることにより、体のさまざまな細胞が傷つき、細胞が死んでしまうこともあります。傷ついた細胞から炎症を引き起こす物質が放出され、身体を守る免疫細胞がこれに反応してさらに多くの炎症物質を作り出します。この炎症反応が全身に広がると、血管の内側が傷つき、血液を固める仕組みに異常が起こります。その結果、血液が固まりすぎて血管が詰まったり、逆に出血が止まりにくくなったりするDICという危険な状態になることがあります。最終的には、肝臓、腎臓など複数の臓器が同時に働かなくなる多臓器不全という、生命に関わる重大な状態に陥ります。

熱中症になりやすい状況を教えてください

熱中症は特に次のような条件で起こりやすくなります。

  • 気温が高い、湿度が高い
  • 風が弱い
  • 日差しが強い、照り返しが強い
  • 急に気温が上がる

具体的な場所は、運動場、体育館、工事現場などです。

熱中症というと、屋外で炎天下のなかに長時間いた、真夏など暑いときに運動をしていた、などを思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、実はこういった状況ばかりではなく、家の中など屋外でなくとも熱中症にかかることがあります。気密性の高いビルやマンションの最上階、一般家庭の風呂場、冷房を使わず窓を締め切った室内などでも発症リスクがあります。

熱中症の症状が現れたときの対処法と受診の目安

熱中症の症状が現れたときの対処法と受診の目安

熱中症が疑われるときはどうすればよいですか?

熱中症が疑われたら、すぐに風通しのよい日陰や、涼しい場所へ避難させます。可能であればクーラーが効いている室内などが望ましいです。安静にし、衣服を緩めて身体を冷やします。具体的には皮膚を濡らしてうちわで扇ぐ、扇風機の風を当てる、氷やアイスパックなどで冷やすなどです。同時に水分と塩分を補給します。

重症の場合は、救急車をすぐに呼び、現場で速やかに身体を冷やし始めることが大切です。例えば全身にホースで水をかけるなどの方法がありますが、2024年のガイドラインでは特定の方法は推奨はされていません。現場の状況や利用できる設備に応じて、可能な冷却方法を実施しましょう。

熱中症で緊急受診が必要な状態を教えてください

次のような状態があれば緊急受診が必要です。

  • 意識障害(ぼんやりしている・返事がおかしい・呼びかけに反応しない)
  • けいれん
  • 手足の運動障害がみられる、まっすぐ歩けない

このほかにも表面体温で40度以上、もしくは皮膚に明らかな熱感が感じられる場合も、重症の可能性があります。また、軽症と判断して応急処置を行った場合でも水分を自力で摂取できない、症状が改善しないなどの場合は速やかに医療機関を受診しましょう。

熱中症は何科を受診すればよいですか?

熱中症には専門の診療科があるわけではありませんが、意識障害を認める重症の場合は高度で特殊な治療が必要となります。救急要請した場合は、症状に応じて救命救急センターなどのある病院へ搬送になるでしょう。

一方、重症以外で自力で受診するような場合も、重度の意識障害ではないが判断力が低下している、自力で水分摂取が難しい、などの症状があれば救命救急科(救急科など名称が違う場合もあります)のある、もしくはそれに準じた対応のできる病院を検討してください。軽症の場合は、内科などの一般外来でも対応可能なことがあります。ただし、個々の医療機関で対応できる範囲が異なるため、可能であれば事前に確認して受診しましょう。

医療機関での熱中症の治療法を教えてください

病院でも、まずは全身を冷却します。患者さんの状態や施設の環境に応じて、さまざまな冷却方法を組み合わせたActive Cooling(積極的冷却)が行われます。氷枕や氷嚢、冷却マット、体表面冷却装置など複数の方法があり、医療従事者が適切な方法を選択して実施します。また、身体の内部から冷却する方法がとられることもあります。

同時に、脱水に対する治療も行います。点滴で水分を投与脱水を改善させ、ナトリウムなどの電解質も補正します。

編集部まとめ

編集部まとめ

熱中症は、重症になると死に至ることもあるたいへん危険な病気です。熱中症の初期には、めまい、立ちくらみ、多量の発汗などがみられます。熱中症が疑われる場合は、速やかに身体を冷却し、水分と塩分を摂取します。応急処置を行っても改善がなければ早めに医療機関を受診してください。また、意識障害などがある場合は緊急での治療が必要なため、すぐに救急車を呼びましょう。適切な対策と早期対応が、熱中症から身を守ることにつながります。

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