目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「インフルエンザで幻覚」が見える原因はご存知ですか?危険な幻覚も解説!【医師監修】

「インフルエンザで幻覚」が見える原因はご存知ですか?危険な幻覚も解説!【医師監修】

 公開日:2025/09/14
「インフルエンザで幻覚」が見える原因はご存知ですか?危険な幻覚も解説!【医師監修】

インフルエンザにかかった家族が幻覚症状を訴えたら、とても心配になりますよね。 高熱に伴う一時的な幻覚なのか、それともインフルエンザ脳症といった危険な合併症なのか判断がつかず、不安になる方も多いでしょう。本記事では、インフルエンザで幻覚が見える状況や原因、危険な症状と様子見できる症状の違い、幻覚が出たときの家庭での対処法、医療機関での検査・治療内容、さらにインフルエンザ脳症の可能性や経過・予後をQ&A形式で解説します。

居倉 宏樹

監修医師
居倉 宏樹(医師)

プロフィールをもっと見る
浜松医科大学卒業。初期研修を終了後に呼吸器内科を専攻し関東の急性期病院で臨床経験を積み上げる。現在は地域の2次救急指定総合病院で呼吸器専門医、総合内科専門医・指導医として勤務。感染症や気管支喘息、COPD、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする呼吸器疾患全般を専門としながら一般内科疾患の診療に取り組み、正しい医療に関する発信にも力を入れる。診療科目
は呼吸器内科、アレルギー、感染症、一般内科。日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本内科学会認定内科医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医、肺がんCT検診認定医師。

インフルエンザで幻覚が見える状況と原因

インフルエンザで幻覚が見える状況と原因

インフルエンザで幻覚が見えるのはどういう状況ですか?

インフルエンザに伴う幻覚の多くは、高熱による一時的な意識混濁の状態(熱せん妄)で起こります。特に子どもは高熱になりやすく、脳が未発達なため熱せん妄を起こしやすい傾向があります。熱せん妄になるとまるで夢を見ているかのように現実との区別がつかなくなり、実際にはない物や人物が見えたり(幻視)、聞こえない声が聞こえたり(幻聴)することがあります。このような高熱時の幻覚・異常行動は、多くの場合は一時的な熱せん妄であり、熱が下がるにつれて短時間でおさまります。

インフルエンザで幻覚が見える原因を教えてください

熱せん妄による幻覚の直接的な原因は、高熱による脳機能の一時的な混乱だと考えられています。体温の上昇に伴い脳内のホルモンバランスや神経伝達が乱れ、脳が睡眠中に夢を見ているような状態になるのが原因です。つまり、身体は目覚めているのに脳は夢を見ているような興奮状態になり、夢の内容を現実と勘違いしてしまうため、ありもしない物が見えたり意味の通らない言動が出たりします。熱せん妄による幻覚の直接的な原因は、高熱による脳機能の一時的な混乱だと考えられています。体温の上昇に伴い脳内のホルモンバランスや神経伝達が乱れ、脳が睡眠中に夢を見ているような状態になるのが原因です。つまり、身体は目覚めているのに脳は夢を見ているような興奮状態になり、夢の内容を現実と勘違いしてしまうため、ありもしない物が見えたり意味の通らない言動が出たりします。

インフルエンザ|危険な幻覚と様子を見てもよい幻覚

インフルエンザ|危険な幻覚と様子を見てもよい幻覚

インフルエンザ脳症と熱せん妄の幻覚の違いを教えてください

熱せん妄による幻覚とインフルエンザ脳症による幻覚は、症状そのものは一見よく似ているため初期段階での判別が難しい場合があります。どちらも高熱のタイミングで現れ、幻覚や意味不明な言動、さらには一過性のけいれん発作が起こることもあるため、発症直後に素人が見分けることは困難です。しかし、経過を追うと次第に違いが現れます。最大の違いは症状が時間とともに改善するかどうかです。熱せん妄の場合、幻覚や混乱した言動は数分~数十分程度で治まり、意識状態が普段どおりに戻るのが特徴です。熱が下がれば嘘のように元気になり、後遺症も残りません。つまり熱せん妄による幻覚は一過性で良性であり、脳に恒常的なダメージを与えることはほとんどありません。

これに対しインフルエンザ脳症では、症状が長引き悪化していく傾向があります。脳症ではけいれんが繰り返し起こったり15分以上続いたり、呼びかけても反応が鈍い・目が合わないといった意識障害が12~24時間以上持続することが多いです。また幻覚以外にも高熱なのに極端にぐったりして反応がない、異常なほどの頭痛や嘔吐があるといった症状を伴いやすく、放置すれば急速に昏睡や呼吸不全に至る危険があります。熱せん妄は短時間で必ず意識がはっきり戻りますが、脳症の場合は意識障害が長く続き後遺症や命の危険を伴う点が決定的な違いです。

インフルエンザで幻覚でも様子見をしてもよいケースはありますか?

はい、熱せん妄が疑われる一時的な幻覚で、危険な症状を伴わない場合は、家庭で注意深く様子を見ることが可能です。 インフルエンザによる幻覚の大多数は熱せん妄によるものなので、まずは落ち着いて以下のポイントに該当しないか確認してください。特に5歳未満でインフルエンザに伴う熱性せん妄が発生する割合は約10〜15%とされており、学童期以降や成人ではまれです。

ほかの深刻な症状がない 幻覚や意味不明言動以外に、けいれん発作や手足の麻痺、激しい頭痛・嘔吐など明らかな異常が見られない場合、熱せん妄の可能性が高いです。

刺激に反応する 完全に意識を失っているわけではなく、名前を呼んだり身体を揺さぶったときに何らかの反応がある場合は、落ち着いて様子を見てもよいでしょう。

短時間で落ち着いてくる 幻覚症状が始まっても徐々におさまってきている場合や、発熱から1時間程度以内に普段の様子に改善してきた場合は、典型的な熱せん妄と考えられます。

上記のような状況であれば、必ず大人が寄り添ったうえで自宅で様子を見ることが可能です。熱せん妄は一度治まれば基本的に後遺症もなく元の状態に戻る良性の症状ですので、慌てずに適切に対処すれば自宅療養で経過を見ることができます。ただし、少しでも不安な点や判断に迷う点があれば、早めに医療機関に相談することをためらわないでください

インフルエンザの幻覚でただちに受診すべきサインを教えてください

次のような危険なサインが一つでも見られたら、ただちに医療機関を受診してください。

  • けいれん発作を起こした
  • 意識障害がある
  • 症状が悪化している
  • 1時間以上改善しない
  • 一度良くなった後にまた異常言動が出た

以上のようなサインがあれば様子見はせず、すぐに小児科や救急病院を受診してください。

インフルエンザで幻覚が見えているときの対処法

インフルエンザで幻覚が見えているときの対処法

インフルエンザで幻覚が見えている家族に対してどのように接したらよいですか?

家族が幻覚を見て取り乱している場合、周囲の方が落ち着いて安心させる対応をすることが何より大切です。まず、驚いて慌ててしまいがちですが、深呼吸してこちらが冷静になるよう心がけましょう。患者さんに対しては優しく穏やかな声かけを行い、幻覚に怯えている場合は「大丈夫だよ、ここにいるからね」などと安心させる言葉をかけます。決して怒鳴ったり叱責したりしないでください。

インフルエンザによる熱せん妄の幻覚が繰り返される場合の対処法を教えてください

熱せん妄による幻覚は、一度おさまっても高熱が続く間は再度起こる可能性があります。特に夜間や体温が再び上がったタイミングで繰り返し起こることがあるため、発熱後2~3日は油断せず子どもから目を離さないようにしましょう。具体的な対処法のポイントは次のとおりです。

引き続き付き添い、安全を確保する 幻覚症状が治まった後も、熱が高い間は念のため常に大人が付き添って様子を見るようにする。

体温を下げるケアを継続する 氷枕や冷却パックを当てて身体を冷やす。

十分な休養と水分補給

これらの対処を行っても幻覚が何度も頻回に起こる場合や、前回より症状が重くなっている印象がある場合は、躊躇せず再度医療機関を受診してください。

インフルエンザで幻覚が見える際の病院での検査と治療

インフルエンザで幻覚が見える際の病院での検査と治療

インフルエンザで幻覚が見える場合、病院ではどのような検査を行いますか?

まずインフルエンザによるものか確認するため、迅速検査キットでインフルエンザ感染の有無を調べます。インフルエンザ陽性が確認されたら、次に現在の症状が熱せん妄なのかインフルエンザ脳症なのか評価するための各種検査を行います。さらに、小児の場合は腰椎穿刺(ようついせんし)による髄液検査を行うこともあります。髄液中の免疫細胞の数や種類を分析し、細菌性髄膜炎やほかのウイルス性脳炎との鑑別、あるいは脳症で見られる特有の所見がないか確認します。

インフルエンザの幻覚が脳症だった場合の治療法を教えてください

インフルエンザ脳症と診断された場合、集中治療室(ICU)での全身管理と脳への特別な治療が行われます。 まず原因となっているインフルエンザウイルスに対しては、抗インフルエンザ薬が投与されます。しかし、脳症の主な問題は免疫反応による脳の炎症と浮腫なので、脳のダメージを抑える治療が並行して行われます。代表的なのはステロイドパルス療法です。加えて、必要に応じて免疫グロブリン製剤の点滴が行われることもあります。また、脳症でけいれん発作が起きていれば抗けいれん薬(ジアゼパムなどの静注)が使われ、発作を止めます。脳の浮腫に対しては脳圧降下薬の点滴(高張グリセロールやマンニトール)や必要に応じて脳低体温療法が検討されます。

インフルエンザ脳症の経過と予後を教えてください

インフルエンザ脳症は発熱後わずか数時間~1日以内に急速に発症し、一気に重篤化しうる病態です。治療により少しずつ脳のむくみが引いて、意識が戻ってくるケースもありますが、決して油断できません。脳症発症から早期に適切な治療を開始できた場合でも、入院管理は数日から数週間規模になることが多いです。 予後については、残念ながらインフルエンザ脳症は死亡率は約30%であり、命が助かったケースでも子どもの約25%に何らかの後遺症が残ると報告されています。具体的な後遺症としては四肢まひ、片麻痺といった運動まひ、てんかん発作の慢性化、知的障害・学習障害、記憶や思考力の低下などが挙げられます。重症度によって後遺症の内容もさまざまで、リハビリを通じてある程度回復が見込める場合もありますが、障害が重い場合は長期的なケアが必要になることもあります。

編集部まとめ

編集部まとめ

インフルエンザに伴う幻覚症状は、多くの場合は高熱による一時的な熱せん妄であり、適切に対処すれば後遺症なく改善します。一方で、インフルエンザ脳症というまれながら重篤な合併症でも初期症状として幻覚や異常行動が現れることがあります。いずれの場合であっても、まず周囲の方が落ち着いて優しく対応してください。危険な症状が少しでも疑われれば早めに受診し、必要な検査を受けましょう。インフルエンザ自体の予防にはワクチン接種や手洗いうがいの徹底が有効です。ご家族の健康を守るため、正しい知識と冷静な対応でインフルエンザシーズンを乗り切りましょう。

この記事の監修医師