「シェーグレン症候群の検査方法」はご存知ですか?検査前の注意点も解説!【医師監修】
公開日:2025/11/06

目や口の渇きが気になり、「もしかしてシェーグレン症候群かも?」と不安に感じていませんか。シェーグレン症候群は自己免疫の異常によって涙や唾液が出にくくなる病気で、中年の女性に多く見られる疾患です。本記事では、シェーグレン症候群が心配な方に向けて、その主な症状、原因、検査内容や診断基準についてQ&A形式で解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
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脳神経内科
眼科(角膜外来)
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シェーグレン症候群の概要
シェーグレン症候群の症状を教えてください
シェーグレン症候群の代表的な症状は、涙や唾液などの分泌液が減少することによる乾燥症状です。具体的には、目の乾燥(ドライアイ)によって、目が乾く・ゴロゴロするといった違和感が生じます。同様に、口の乾燥(ドライマウス)では口が渇いて唾液が出ない・食事のときに水が必要などの日常生活への支障が現れます。乾燥は目や口以外にもおよび、鼻腔の乾燥によって鼻の中がかさつき出血することもあります。加えて、全身症状として慢性的な疲労感や微熱、頭痛、集中力の低下、抑うつ傾向などがみられることもあります。
シェーグレン症候群の原因にはどのようなものがありますか?
シェーグレン症候群は自己免疫疾患の一種です。つまり本来は自分の身体を守るはずの免疫が何らかの異常により、自分自身の涙腺や唾液腺を攻撃してしまうことで炎症を起こし、涙や唾液の分泌機能が低下します。明確な原因は解明されていませんが、発症には複数の要因が関与すると考えられています。具体的には、遺伝的な素因、ウイルス感染などの環境要因、免疫システムの異常に加え、女性ホルモンの影響も一因とされています。こうした複数の因子が複雑に絡み合って発症すると考えられており、これさえが原因という単一の要因で起こる病気ではありません。
シェーグレン症候群の検査内容
シェーグレン症候群が疑われるときは何科を受診すればよいですか?
シェーグレン症候群が心配な場合は、まずリウマチ・膠原病を専門とする内科(膠原病内科・リウマチ科)を受診することをおすすめします。これらの診療科であれば、たとえ自覚症状が目や口の乾燥だけであっても、その背後にある全身的な異常を含めて総合的に検査・評価してもらえます。一方、乾燥症状は一般的な疾患(ドライアイやドライマウス)でも見られるため、患者さん自身がすぐに膠原病内科を受診が必要だとすぐには気付かないケースもあります。そのため、最初は症状に応じた科(目の渇きなら眼科など)を受診する方も少なくありません。
シェーグレン症候群の検査ではどのようなことを聞かれますか?
診察時にはまず問診が行われます。医師は現在の症状や困りごとについて詳しく確認します。シェーグレン症候群の症状は人によってさまざまなので、問診では特に以下のような点を聞かれるでしょう。
- 乾燥症状の具体的な内容と経緯
- 乾燥以外の症状
- 現在治療中の病気や服薬状況
- 生活上の支障
シェーグレン症候群の検査内容を教えてください
シェーグレン症候群と診断するためには、複数の検査を組み合わせて総合的に評価する必要があります。以下にそれぞれの検査内容を説明します。
目の検査
涙の分泌状況と目の表面の状態を調べます。代表的なのはシルマーテストと呼ばれる涙液分泌量の測定で、併せて、ローズベンガル試験やフルオレセイン染色試験などの染色検査も行います。
口の検査
唾液の分泌機能を調べるための検査です。代表的なものにガムテストとサクソンテストがあります。さらに詳しく調べるために画像検査(唾液腺造影、唾液腺シンチグラフィー)という検査を行うこともあります。
血液検査
採血によりシェーグレン症候群に特徴的な自己抗体の有無を調べます。特に抗SS-A(Ro)抗体および抗SS-B(La)抗体が陽性かどうかが重要です。
病理検査(生検)
必要に応じて唇の小唾液腺や涙腺の組織を一部採取して顕微鏡で調べます。
シェーグレン症候群の検査の所要時間はどの程度ですか?
シェーグレン症候群の検査は一つひとつの所要時間自体はそれほど長くありませんが、複数の検査を組み合わせて行うためトータルではある程度の時間を見ておく必要があります。例えば、シルマーテストは約5分、ガムテストは10分程度です。血液検査も採血自体は数分で済みますし、口唇の生検も外来で約20分で終了する短時間の処置です。しかし、これらの検査を同じ日にまとめて実施する場合は、待ち時間や準備時間も含めて半日~1日がかりになることもあります。多くの医療機関では、何回かに分けて外来受診し、その都度一部の検査を行っています。そのため、診断が確定するまでに数週間程度かかるケースもあります。
シェーグレン症候群の診断基準
シェーグレン症候群はどのような基準で診断されますか?
シェーグレン症候群の診断は、上述した複数の検査結果に基づいて総合的に行われます。一つの検査結果だけで即診断がつくわけではなく、診断基準を満たすかどうかが判断のポイントになります。日本で用いられている厚生労働省の改訂診断基準(1999年)では、以下の4つの項目のうち2項目以上が陽性であればシェーグレン症候群と確定診断すると定められています。なお、この診断基準は典型的な患者さんを想定したもので、なかには検査によって典型的な所見が得られず基準を満たさない場合もあります。そのようなケースでは、医師が臨床経過やほかの情報を総合的に判断してシェーグレン症候群と診断することもあります。
病理検査の陽性所見
口唇の小唾液腺または涙腺の組織を生検し、リンパ球の浸潤(多数のリンパ球の塊)が認められること。
口腔(唾液分泌)検査の陽性所見
ガムテストやサクソンテストで唾液分泌量の低下が証明され、さらに唾液腺シンチグラフィーまたは唾液腺造影で唾液腺の機能低下や構造異常が認められること。
眼科(涙液分泌)検査の陽性所見
シルマーテストで涙液分泌低下が証明され、かつローズベンガル試験または蛍光色素試験で角結膜上皮障害(目の表面の傷)が認められること。
血清検査の陽性所見
血液中に抗SS-A/Ro抗体または抗SS-B/La抗体が陽性であること。
シェーグレン症候群と診断された後の流れを教えてください
シェーグレン症候群と診断されたら、まず担当医から現在の病状や今後の見通し、治療方針について詳しい説明があります。シェーグレン症候群は完治させる根本治療がまだ確立されていない病気ですが、適切なケアと治療によって症状を和らげ日常生活の質を維持することが可能です。診断後の大まかな流れは以下のようになります。
治療方針の決定
症状の程度や合併症の有無に応じて治療計画を立てます。基本は乾燥症状の緩和と病気の進行や合併症の予防です。
経過観察とフォローアップ
シェーグレン症候群は長期にわたる慢性疾患です。定期的に病院で経過観察を行い、症状の変化や新たな合併症がないかチェックしていきます。
このように、診断確定後は医師と相談しながら長期的に病気と付き合っていくことになります。シェーグレン症候群自体は完治こそ難しいものの、適切な対応で乾燥症状のコントロールは十分可能です。焦らずに、しかし油断せずに、定期フォローを欠かさないことが大切です。
シェーグレン症候群で検査を受ける際の注意点
シェーグレン症候群の検査を受ける前日はどのようなことに気を付けますか?
基本的に、シェーグレン症候群の検査前日に特別な制限や準備はありません。食事や水分摂取も普段どおりで問題ありません。前日はリラックスして十分な睡眠を取り、体調を整えておきましょう。もし現在服用中の薬がある場合は、医師から特に指示がない限り普段どおり内服して構いません。ただし、ドライアイ治療のための点眼薬やドライマウス対策の唾液分泌促進薬を使っている場合、検査当日に一時中止するよう指示されることがあります。その場合は前日までに医師の指示を確認し、指示どおり対応しましょう。
シェーグレン症候群の検査当日の禁止事項を教えてください
検査当日も禁止事項は多くありません。ただし、正確な検査結果を得るために避けた方がよい行為がいくつかあります。
- コンタクトレンズの使用を避ける
- 検査前の点眼やうがいを控える
- 過度のアイメイクやリップの使用を避ける
シェーグレン症候群の検査を受けた後、自分で帰宅できますか?
はい、検査後は基本的に自分で帰宅できます。シェーグレン症候群の検査は入院や麻酔を伴う大がかりなものではなく、ほとんどが外来で完結する検査です。例えば口唇の生検も局所麻酔のみで行い、傷も1~2日で治る小規模な手術です。検査後に安静が必要だったり付き添いが必要になることは通常ありません。
編集部まとめ
シェーグレン症候群は、目や口の乾燥を主症状とする自己免疫性の病気です。一般的なドライアイ・ドライマウスと違い、全身の臓器にも影響を及ぼす可能性があるため、乾燥が気になる場合は早めに専門医での検査を受けることが大切です。診断後は、完治は難しいものの点眼薬や内服薬で乾燥症状を和らげたり、生活習慣の工夫で症状をコントロールしたりしながら、十分に生活の質を保っていくことが可能です。不安な気持ちはあるかもしれませんが、一人で抱え込まず医療者に相談し、正しい知識と対策で乾燥の悩みに向き合っていきましょう。
参考文献



