「パニック障害」を発症するとどんな「治療薬」が処方される?副作用となる症状も解説!
公開日:2025/09/05

パニック障害は、突然激しい不安や動悸、息苦しさに襲われるパニック発作を繰り返す精神疾患です。日常生活に支障をきたすことも多く、早期の治療介入が大切とされています。現在では薬物療法と心理療法の両面からのアプローチが有効とされており、多くの患者さんが改善や回復を実感しています。本記事では、パニック障害の治療法のうち、特に薬物療法の効果や種類、副作用について詳しく解説し、あわせて心理療法についてもご紹介します。安心して治療に臨むための情報源としてご活用ください。

監修医師:
前田 佳宏(医師)
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島根大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科に入局後、東京警察病院、国立精神神経医療研究センター、都内クリニックにて薬物依存症、トラウマ、児童精神科の専門外来を経験。現在は和クリニック院長。愛着障害やトラウマケアを専門に講座や情報発信に努める。診療科目は精神神経科、心療内科、精神科、神経内科、脳神経内科。 精神保健指定医、認定産業医の資格を有する。
目次 -INDEX-
パニック障害の概要と治療の進め方
パニック障害とはどのような病気ですか?
パニック障害とは、理由が明確でないのに突然強い不安や恐怖に襲われるパニック発作を繰り返す病気です。発作には、動悸、息苦しさ、めまい、発汗などの身体症状が伴います。発作がいつ起こるかわからないという不安から、外出を控えるなどの行動制限が起きることもあります。このような状態が長く続くと、社会生活に支障をきたし、生活の質が著しく低下する可能性があります。
パニック障害の原因を教えてください
はっきりとした原因は解明されていませんが、脳内の神経伝達物質(特にセロトニンやノルアドレナリン)のバランスの乱れが関与しているとされています。また、遺伝的要因やストレス、不安傾向のある性格なども発症リスクを高める要因です。近年では、身体的な病気や生活環境の変化、過去のトラウマ経験が引き金となるケースもあることがわかってきています。
パニック障害はどのように治療しますか?
パニック障害の治療には、薬物療法と認知行動療法を中心とした心理療法が組み合わされます。薬で症状を抑えながら、心理療法で不安に対する考え方や行動パターンを修正するアプローチが一般的です。症状や生活環境に応じて、段階的かつ個別的に治療法を調整していくことが重要です。
パニック障害は治療によって完治する病気ですか?
多くの方が治療によって症状が軽減し、日常生活に支障のないレベルまで回復することが期待できます。薬物療法や認知行動療法などの治療を継続することで、発作や不安をコントロールできるようになり、仕事や家庭生活を安心して送れるようになるケースも少なくありません。再発予防のためには、継続的な治療や生活習慣の見直し、ストレス管理も重要です。また、治療が長期に及ぶ場合でも、焦らず自分のペースで少しずつ進めていく姿勢が回復への近道となります。症状が安定した後も、自己判断で治療を中断せず、医師や周囲と連携しながら無理なく生活を整えていくことが大切です。
パニック障害の薬物療法
パニック障害の治療における薬物療法の役割を教えてください
薬物療法は、症状の強い不安やパニック発作を緩和し、生活の安定を図るうえで重要な治療手段です。薬によって脳内の神経伝達物質のバランスを整え、不安の感じ方を和らげる効果があります。特に発作の頻度が高い場合や、心理療法の導入が難しい初期段階には薬物療法が治療の中心となります。
パニック障害の薬物療法の効果を示す統計はありますか?
複数のメタ分析によると、抗うつ薬や抗不安薬の使用によって、発作の頻度や重症度が有意に改善することが確認されています。特にSSRIは高い効果と持続性が報告されており、症状のコントロールに有効とされています。また、治療継続により再発リスクが低下するというエビデンスもあります。
パニック障害の薬物療法で用いられる薬の種類を教えてください
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
セルトラリンやパロキセチン、フルボキサミン、エスシタロプラムなどが代表的で、脳内のセロトニン濃度を高めることで不安やパニック発作を減らす効果があります。副作用が少なく、長期的な治療に向いていますが、効果が現れるまでに1~2週間、十分な効果が出るまで4~6週間ほどかかることがあります。
SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
ベンラファキシンやデュロキセチン、ミルナシプランなどがあり、SSRIが効かない場合や副作用が強い場合の選択肢となります。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬
即効性があり、急性のパニック発作や治療初期に補助的に使われることが多い薬です。アルプラゾラム、ロラゼパム、クロナゼパム、ジアゼパムなどが代表的で、服用後すぐに不安やパニック発作を和らげる効果があります。ただし、依存性や耐性のリスクがあるため、長期連用は避け、短期間または必要時のみの使用が推奨されます。
三環系抗うつ薬
SSRIやSNRIで効果が不十分な場合に検討される薬です。イミプラミンやクロミプラミンなどがあり、セロトニンやノルアドレナリンの再取り込みを阻害して不安やパニック発作を抑える作用があります。
パニック障害の薬に副作用はありますか?
パニック障害の治療薬にはそれぞれ副作用があります。SSRIやSNRIでは、主に吐き気や下痢などの消化器症状、眠気、体重増加、SNRIでは血圧上昇や発汗もみられます。ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、眠気やふらつき、記憶力低下があり、長期使用で依存のリスクがあります。三環系抗うつ薬(TCA)は特に副作用が強く、口渇や便秘、排尿障害、眠気、ふらつき、心電図異常(QT延長)などが起こりやすいのが特徴です。高齢者では認知機能の低下やせん妄にも注意が必要です。
パニック障害|薬物療法以外の治療法
パニック障害の認知行動療法とはどのようなものですか?
認知行動療法(CBT)は、パニック発作やそれに伴う不安、回避行動に対して、患者さん自身が発作や不安に対する考え方や行動パターンを見直し、より現実的で適応的な反応を身につけることを目指す心理療法です。治療では、パニック障害や不安に関する正しい知識を学ぶ心理教育から始まり、発作や不安を引き起こす状況に段階的に直面して慣れていく曝露(エクスポージャー)法を中心に進められます。これにより、回避行動の減少や不安のコントロール、自己効力感の向上が期待されます。CBTは標準化された手順で行われ、対面・オンラインいずれの形式でも有効性が示されています。
パニック障害の認知行動療法の効果を教えてください
近年の大規模な国際的研究やメタアナリシス(JAMA, Cochraneレビューなど)によれば、CBTはパニック障害の症状改善において薬物療法(特にSSRI)と同等、あるいは一部でそれ以上の効果を示すことが明らかになっています。また、CBTと薬物療法の併用は、単独療法よりも症状の再発リスクを低減し、治療満足度を高める可能性があると報告されています。CBTは治療終了後も効果が持続しやすい傾向があり、再発予防にも寄与することが示唆されています。ただし、個人差や治療へのアクセスのしやすさ、治療者の熟練度などによって効果に幅があることも指摘されています。
編集部まとめ
パニック障害は、放置すると生活の質を著しく損なう病気ですが、適切な治療により十分に改善が期待できます。薬物療法と認知行動療法は互いを補完し合い、患者さんの回復を支える有効な手段です。副作用への不安や治療への疑問がある場合は、遠慮なく医師に相談することが大切です。早めに支援を受けることで、再び安心して生活できる日常を取り戻せる可能性が高まります。
参考文献




