「乗り物酔いの原因」はご存知ですか?発症しやすい飲み物や食べ物も解説!【医師監修】
公開日:2025/09/27


監修医師:
高宮 新之介(医師)
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昭和大学卒業。大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術を経験し、外科専門医を取得。昭和大学大学院 生理学講座 生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事し学位を取得。昭和大学横浜市北部病院の呼吸器センターで勤務しつつ、週1回地域のクリニックで訪問診療や一般内科診療を行っている。診療科目は一般外科、呼吸器外科、胸部外科、腫瘍外科、緩和ケア科、総合内科、呼吸器内科。日本外科学会専門医。医学博士。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)修了。ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)。BLS(Basic Life Support)。
目次 -INDEX-
乗り物酔いの原因とメカニズム
乗り物酔いに正式な病名はありますか?
はい、あります。医学的には動揺病または加速度病と呼ばれます。英語ではMotion Sickness(モーションシックネス)と表現します。一般的には車酔い、船酔い、飛行機酔いなど、具体的な乗り物の種類に応じて呼び名が変わりますが、本質的には同じ現象です。
乗り物酔いの原因を教えてください
乗り物酔いの主な原因は、乗り物の揺れや加速・減速による感覚の混乱です。人間の身体は、三半規管(耳の奥にある平衡感覚器)で身体のバランスや揺れを感知しています。しかし、乗り物に乗ることで三半規管が普段より激しく刺激されると、目から入る視覚情報や筋肉や関節が感じる情報とのズレが生じます。この感覚のズレが脳を混乱させ、結果として自律神経が乱れてしまい、吐き気や冷や汗などの症状が現れます。
乗り物酔いが発生するメカニズムを教えてください
乗り物酔いが起きる仕組みは以下のように説明されます。
まず、三半規管が乗り物の揺れや動きを感知すると、その情報を脳に送ります。一方で目は、例えば車内で本を読んでいる場合など、固定された視覚情報をとらえているため「自分は動いていない」と認識します。こうした「身体は動いているのに、目は止まっていると感じている」という矛盾した情報を脳が受け取ると、脳はその状況を異常と判断して警告を発します。その結果、自律神経系が反応し、吐き気、めまい、冷や汗、生あくびなどの症状が引き起こされます。
乗り物酔いを起こしやすい病気はありますか?
特定の病気が直接的に乗り物酔いを引き起こすわけではありませんが、以下のような体質や症状がある方は、乗り物酔いを起こしやすい傾向があります。
- 片頭痛持ちの方
- 内耳疾患(メニエール病や内耳炎など)がある方
- ホルモンバランスが乱れやすい方(妊娠中や生理前など)
- 自律神経失調症の傾向がある方
乗り物酔いを起こしやすい状況
乗り物酔いはどのような乗り物で発生しやすいですか?
特に酔いやすいのは、揺れや動きが激しい乗り物です。具体的には、船、バス、自動車、飛行機、遊園地のジェットコースターやコーヒーカップなどのアトラクションが挙げられます。特に船酔いは波の動きが大きく、大変酔いやすい状況といわれています。また、映像だけが動くVR(仮想現実)ゲームや3D映画でも視覚と平衡感覚のズレが生じ、「映像酔い」が起こることがあります。
乗り物酔いが起きやすい食べ物や飲み物を教えてください
脂っこい料理、揚げ物、濃厚なスイーツなど、胃に負担がかかるものは消化が悪く、乗り物酔いを助長します。また、アルコールや大量のカフェインを含む飲み物は自律神経を乱しやすいため、避けるべきです。一方で、完全に空腹でも酔いやすくなるため、乗り物に乗る1時間ほど前に軽めの消化のよい食事(おにぎりやパン、バナナなど)をとるとよいでしょう。
乗り物酔いが生じやすい行動はありますか?
乗り物内で本を読む、スマートフォンを見るなど近距離の一点を見続ける行為は、視覚と平衡感覚のズレを引き起こしやすくなります。また、後ろ向きに座る、頻繁に頭を動かす、密閉された空間で換気が悪い状態にいるなども酔いを誘発します。遠くの景色を眺め、できるだけ頭を動かさないように安定した姿勢を保つと酔いにくくなります。
乗り物酔いの対策
乗り物酔いの予防法はありますか?
あります。予防法としては、前日の十分な睡眠、軽めの食事、乗り物内の換気、揺れの少ない座席の選択(車なら前方、船なら中央部)、遠くを見ることが効果的です。また、市販の酔い止め薬を乗車30分前に服用することも強力な予防法です。
薬物療法は、単回または頻繁でない移動など、習慣化が難しい状況で有用です。症状発現後ではなく、曝露前に服用すると特に効果的であることを知っておく必要があります。
乗り物酔い治療薬は、抗ムスカリン薬(例:スコポラミン)、H1抗ヒスタミン薬(例:ジメンヒドリナート)、交感神経刺激薬(例:アンフェタミン)に分類されます。
効果的な乗り物酔い治療薬はすべて、血液脳関門を通過し、中枢作用機序を有します。
乗り物酔いを起こしにくくする方法を教えてください
乗り物酔いの耐性を高めるためには、日常的に短時間でも乗り物に乗って揺れに慣れることが効果的です。また、手首の内側にあるツボ(内関)を押すリストバンドを使ったり、生姜やペパーミントなどを摂取すると症状が緩和されることがあります。ただし、これらは個人差があるため、あくまで補助的な方法と考えましょう。規則正しい生活も重要です。自律神経を整えることで体質改善にもつながります。車やバスの前の座席に座り、できれば乗せてもらうのではなく自分で運転しましょう。飛行機では、翼の上にある座席を選びましょう。
乗り物酔いになったときはどうすればよいですか?
症状が出た場合、可能なら乗り物から降りて新鮮な空気を吸い、安静にすることが特に効果的です。降りられない場合は、頭と身体を固定 し、シートを倒して目を閉じ、深呼吸をして自律神経を落ち着かせましょう。額や首筋の冷却も有効なときがあります。吐き気が強い場合は無理に我慢せず吐くことで症状が軽減します。その後、水分補給をしっかり行い、十分な休息をとることが重要です。
編集部まとめ
乗り物酔いは、耳で感じる揺れと目で見る景色が一致しないために起こる “身体の混乱” です。誰でもなる可能性がありますが、準備とちょっとしたコツで大幅に減らせます。次の旅行やドライブに向けて、今回ご紹介したポイントをぜひ試してみてください。快適な移動時間を楽しめますように。



