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「乗り物酔いしやすい人の特徴」はご存知ですか?主な症状についても解説!

 公開日:2025/07/03
「乗り物酔いしやすい人の特徴」はご存知ですか?主な症状についても解説!

乗り物酔いは、車や船、飛行機などで感じる不快な症状の総称で、多くの方が経験します。旅行や移動の楽しさを半減させてしまうこともありますが、メカニズムを理解し適切な対策をとることで症状を予防・緩和できます。乗り物酔い(動揺病)は、車や船、飛行機などに乗ったときに起こる一連の不快な症状で、典型的には顔面蒼白、吐き気、頭痛、めまい、冷や汗、だるさなどが現れます。これは、内耳(半規管や前庭)が受け取った揺れや加速などの刺激情報と目から入る視覚情報がかみ合わなくなることなどが原因です。こうした混乱した信号が脳に送られ、自律神経系を乱すことで吐き気や嘔吐を引き起こします。この記事では、乗り物酔いの原因や症状、酔いやすい方の特徴、具体的な予防法や対処法について詳しく解説します。

高宮 新之介

監修医師
高宮 新之介(医師)

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昭和大学卒業。大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術を経験し、外科専門医を取得。昭和大学大学院 生理学講座 生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事し学位を取得。昭和大学横浜市北部病院の呼吸器センターで勤務しつつ、週1回地域のクリニックで訪問診療や一般内科診療を行っている。診療科目は一般外科、呼吸器外科、胸部外科、腫瘍外科、緩和ケア科、総合内科、呼吸器内科。日本外科学会専門医。医学博士。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)修了。ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)。BLS(Basic Life Support)。

乗り物酔いのメカニズムと症状

乗り物酔いのメカニズムと症状

乗り物酔いはどのようなメカニズムで発生するのですか?

乗り物酔いは主に、内耳の平衡感覚器官と視覚情報の不一致により発生します。内耳の平衡感覚機能(半規管・前庭)が特に重要な役割を果たします。例えば、車の発進・停止やカーブ、上下動などで半規管が強い刺激を受けると、その情報が脳に送られます。しかし、目から見る風景と内耳からの動きの情報が食い違うと脳が混乱し、過剰な興奮信号が自律神経に送られます。その結果、眠くなるあくび、冷や汗、顔面蒼白、手足の冷えなどの初期症状が現れ、重症化すると吐き気や嘔吐が起こります。
また、乗り物酔いは乗り物だけでなく、揺れを伴う環境(エレベーターや揺れるベッド、空の航行など)でも起こることがあります。重症の場合は脱水症状になることもあり、症状を見逃さないよう注意が必要です。

乗り物酔いの代表的な症状を教えてください

代表的な症状には、吐き気、めまい、頭痛、顔面蒼白、冷や汗、だるさなどがあります。初期症状としては、あくびが頻繁に出たり、生唾が増えたりすることもあります。重症になると嘔吐することもあり、これが不安や恐怖心につながり、症状をさらに悪化させる場合もあります。

乗り物酔いしやすい人の特徴

乗り物酔いしやすい人の特徴

乗り物酔いしやすい人に特徴はありますか?

乗り物酔いには個人差がありますが、特に小児や思春期の子どもが酔いやすい傾向にあります。また、女性は男性より酔いやすいことが知られており、特にホルモンの影響を受けやすい妊娠中や月経期は酔いやすさが増します。成人全体では男性13.4%、女性25.2%が「乗り物に酔いやすい」と回答しています。また、片頭痛持ちや内耳疾患を持つ方も酔いやすいとされています。

乗り物酔いしやすい人の割合を教えてください

小学生や中学生では約3~4割が乗り物酔いを経験すると報告されています。成人では20~30%程度、高齢者になると酔いやすさは減少し、約10%になると言われています。

乗り物酔いのしやすさに男女差や年齢差はありますか?

男女差では、女性が男性の約2倍酔いやすいとされます。年齢では、小学校高学年から中学生でピークを迎え、その後成人になるにつれて症状は徐々に軽減されますが、完全に消失するわけではありません。

ポイントまとめ

  • 年齢
    小学生~高校生にかけてピークになります。3歳未満はほとんど起こりません。
  • 性別
    女性の方が男性より多いです(男女比は約1:2)。
  • 体質
    片頭痛持ち、内耳の機能が弱い方、妊娠中・低血圧の方なども酔いやすい傾向があります。

乗り物酔いの予防法と克服法

乗り物酔いの予防法と克服法

乗り物酔いしやすい人が事前にできる予防法はありますか?

予防法としては、前日に十分な睡眠をとり、当日は軽めの食事を摂ることが効果的です。空腹や満腹も酔いやすいので、乗る2~3時間前に腹八分目の軽食をとるのがよいでしょう。乗り物内では揺れの少ない場所に座り、窓を少し開けて換気をよくしましょう。遠くの景色を見ることで視覚情報と内耳の情報が一致しやすくなります。また、スマートフォンや本など近距離での作業は控えることも大切です。薬局で市販されている酔い止め薬(抗ヒスタミン剤やスコポラミンを含む)を、乗車の30~60分前にあらかじめ服用しておくと予防効果が高まります。

乗り物酔いしやすい人が乗り物酔いを克服する方法を教えてください

乗り物酔いは慣れが重要です。徐々に乗り物に慣れる訓練を繰り返すことで、脳が揺れや動きに順応し、症状が出にくくなります。特に子どもの場合は、楽しい経験とセットで乗り物を体験させることで、精神的な抵抗感を減らすことが有効です。

乗り物酔いしやすい人は病院で治療を受けることはできますか?

専門の治療法は特にありませんが、耳鼻咽喉科やめまい外来では原因疾患がないか検査を受けることができます。重症の場合はめまいリハビリや、自律神経調節を目的とした治療を提案されることもあります。必要に応じて抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミンなど)や抗コリン薬(スコポラミンパッチなど)を処方されることもありますが、基本は上述した予防策を生活に取り入れることが重要です。症状が重い場合は一度相談してみることをおすすめします。

乗り物酔いになったときの対処法

乗り物酔いになったときの対処法

乗り物酔いの薬の効果と副作用を教えてください

酔い止め薬の主な成分は第一世代抗ヒスタミン薬(例:ジフェンヒドラミン、メクリジン、クロルフェニラミン)や抗コリン薬(スコポラミン臭化水素酸塩)です。これらは内耳前庭や吐き気中枢への過剰な刺激を抑制し、吐き気やめまいを和らげます。また、ビタミンB6やカフェイン、胃粘膜麻酔成分を含む薬も市販されており、それぞれ神経伝達の安定、鎮痛、胃の不快感緩和に役立ちます。ただし副作用として、抗ヒスタミン薬は強い眠気を、スコポラミンなど抗コリン薬は口渇や排尿困難を引き起こすことがあります。服用の際は説明書をよく読み、十分休息できる状態で使いましょう。

乗り物酔いの症状を緩和させる服薬以外の方法はありますか?

症状が現れたら、まず新鮮な空気を取り入れ、ゆったりと深呼吸をしましょう。できれば横になり、衣服を緩め、リラックスした姿勢をとります。また、冷たいタオルで額を冷やすと症状が緩和されることがあります。ツボ押し(内関)やショウガを摂取するなどの民間療法も効果的なことがありますので、試してみてください。場所は、手のひら側の手首のしわから肘方向に指3本分進んだ、2本のスジ(腱)の間にあるくぼみです。遠くを見る、新鮮な空気を吸う、音楽や話し声に気を紛らわせるのも有効です。

対処まとめ
まずは深呼吸と横になるなどで気持ちを落ち着けましょう。座席では前方を向き、窓を少し開けて換気します。医薬品を使う場合は、係員や同行者に伝え、指示にしたがってください。吐き気が激しいときは無理に読書やスマートフォンの使用は避けて、目を閉じて回復を待ちます。

編集部まとめ

編集部まとめ

乗り物酔いは誰にでも起こる可能性がある不快症状ですが、予防と正しい対処を知っておけば十分軽減できます。まずは前日の睡眠・食事を整え、揺れの少ない席を選び、乗る前に酔い止め薬を服用するなどの予防策を取りましょう。酔いが始まったら深呼吸で落ち着き、体の緊張をほぐして横になったり、目を閉じて遠くを見たりしてみてください。生姜やツボ押しといった民間療法も補助的に有効です。
もしそれでもどうしようもなくなった場合は、むやみに我慢せず早めに休憩を取りましょう。症状が重い場合は、耳鼻科やめまい外来に相談すると、平衡機能検査やリハビリで体質改善のアドバイスをもらえることもあります。今回ご紹介した情報を参考に、乗り物酔いを恐れず旅行や通勤を楽しんでくださいね。

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