ドライアイは目の乾燥や異物感、かすみなど、日常生活にさまざまな不快症状をもたらす目の病気です。涙が目の表面に均等に広がり安定する性質が失われ、目に不快感や見えにくさを生じる状態がドライアイと定義されています。日本では2,200万人ものドライアイ患者さんがいるともいわれ、現代病の一つとして増加傾向にあります。
初期段階では症状が軽く気付きにくいこともありますが、進行すると視力低下や生活の質(QOL)に影響を及ぼすこともあります。本記事では、ドライアイの初期症状から進行期の症状までをわかりやすく解説し、ご自身で確認できるチェック方法や受診の目安についてもご紹介します。
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2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。
ドライアイの概要
ドライアイはどのような病気ですか?
ドライアイは目の表面を覆う涙の状態に異常が生じた結果、目が乾燥してしまう疾患です。通常、涙は目の表面に薄い膜(涙液膜)をつくり角膜を保護していますが、この膜が不安定になって崩れやすくなり、目に不快感 や見えにくさ を引き起こす状態を指します。目が乾くという症状だけではなく、目がかすむ 、まぶしい 、目が疲れる・痛む 、ゴロゴロする 、赤く充血する 、涙が出る 、目やにが出る などさまざまな症状を伴うのが特徴です。慢性の目の不快感を招きますが、適切な治療で改善が期待できる病気です。
ドライアイの原因を教えてください
ドライアイの原因は一つではなく、涙の量が不足することや質の異常、涙の蒸発が増えることなど、さまざまな要因が関与します。主な原因・リスク要因として、以下のようなものが挙げられます。
加齢
女性
長時間のパソコンやスマートフォン作業や読書
エアコンの使用
睡眠不足
コンタクトレンズの使用
薬の副作用(抗ヒスタミン薬や降圧利尿剤など)
マイボーム腺機能低下
結膜弛緩(けつまくしかん)
全身疾患(シェーグレン症候群や関節リウマチなど)
このように、ドライアイにはさまざま原因があり、これらが複数組み合わさることで、ドライアイの症状が出やすくなります。
ドライアイはどのような人がなりやすいですか?
ドライアイは誰にでも起こりえますが、特に以下のような条件に当てはまる方は注意が必要です。
中高年や女性の方
コンタクトレンズを使用している方
パソコンやスマートフォンを長時間使う方
エアコンの効いた場所に長くいる方
夜更かしや睡眠不足がちな方
飛行機での移動や出張が多い方
花粉症などアレルギーのある方
このような条件に該当する方は、ゴロゴロ感や見えにくさなどのドライアイの症状が現れやすくなります。
ドライアイの初期症状
ドライアイには前兆はありますか?
はっきりとした前兆がない場合も多いですが、初期段階には「なんとなく目が乾く」「なんとなく目に不快感がある」といった曖昧な症状が現れることがあります。こうした軽い違和感はただの疲れ目と勘違いされやすく、自分ではドライアイだと気付きにくいものです。そのため、症状が進行してから受診される方も少なくありません。
日中に目の乾きや軽いゴロゴロ感があっても、目を休めれば治ると放置しがちですが、これらがドライアイのサインの場合もあります。
ドライアイの初期症状を教えてください
ドライアイの初期には、軽度ながら日常で感じる目の不調がいくつかあります。典型的な初期症状は次のとおりです。
目が疲れやすい、まぶたが重く感じる
目がゴロゴロする、乾いた感じがする
目がヒリヒリとしみる、痛みを感じる
目がかゆい
物がぼやけて見えるときがある
光がまぶしく感じやすい
涙が勝手に出てくる
初期症状はこのように漠然とした不快感であることが多く、年のせいや疲れ目のせいと見過ごされがちです。しかし、放置すると症状が悪化する恐れがあるため、気になる症状が続く場合は早めに対処しましょう。
ドライアイの初期症状と間違えやすい病気はありますか?
ドライアイの初期症状はほかの目の不調とも似ているため、いくつか勘違いされやすい疾患があります。代表的なのがアレルギー性結膜炎 です。花粉症では目のかゆみ・充血・涙目といった症状が現れますが、これらはドライアイでもよく見られる症状です。そのため花粉症の時期はドライアイが隠れていても気付きにくいことがあります。
また、眼精疲労 (疲れ目 )もドライアイと間違われやすい状態です。長時間のパソコン作業後に目が重くかすむ場合、単なる疲労と思いがちですが、実際にはドライアイが原因であることも少なくありません。
このように、ドライアイなのにほかの原因だと思ってしまう ケースは多いです。目が乾くという自覚がなくても、目の不快感やかゆみ・疲れが続く場合はドライアイを疑い、早めに専門医に相談することが大切です。
進行したドライアイの症状
ドライアイが進行すると目にどのような症状が現れますか?
ドライアイが重症化すると、異物感や痛みが増し 、まぶたを開けるのもつらい ほどになることがあります。常に目が赤く充血 して光に対して過敏になり、日中も強いまぶしさを感じるようになります。視界のかすみ も慢性化し、瞬きや休憩では改善しないぼやけが続いたり、場合によっては視力低下 が生じることもあります。
進行したドライアイでは、涙の膜が極度に不安定になり角膜表面のダメージが大きくなります。その結果、角膜に傷ができてしまい、激しい痛み を感じるようになります。また、涙の量が著しく減ることで朝まぶたが張り付いて開けられない 、大量の目やに が出るなどの症状が現れることもあります。
進行したドライアイが目に与える影響を教えてください
重度のドライアイになると、目の健康への影響や合併症も深刻になります。角膜や結膜へのダメージが蓄積し、前述の角膜上皮剥離がさらに進行すると、黒目の表面にただれができる角膜びらん や角膜潰瘍 を引き起こす恐れがあります。こうした状態を放置すると、角膜が濁って視力低下につながったり、最悪の場合失明 のリスクもゼロではありません。
また、角膜に傷があると目の防御機能が低下するため、外からの病原体に感染しやすくなります。その結果、細菌やウイルスによる結膜炎 や角膜感染症(角膜炎)を発症しやすくなり、特にコンタクトレンズ使用者では重度の感染症リスクが高まります。
ドライアイで目以外にも症状が現れることはありますか?
ドライアイによる目の不調が引き金となって起こる症状 もあります。例えば、ドライアイが原因で肩こりや極度の疲労を感じ、それが頭痛 につながることがあります。さらに症状が重い場合、吐き気や全身の倦怠感、気分の落ち込みといった全身的・精神的な不調を引き起こすこともあります。このように、ドライアイは単に目が乾くだけの問題ではなく、関連してさまざまな症状が現れる可能性があります。
ドライアイのセルフチェックと受診の目安
ドライアイのセルフチェック方法を教えてください
ご自身で「ドライアイかも?」と思ったときに試せるセルフチェックがあります。日本ドライアイ研究会では、以下のような症状にいくつ当てはまるかを確認する方法を推奨しています。次の項目のうち
5つ以上 に該当する場合、ドライアイの可能性が高いとされています。
目が疲れる
目が重たい感じがする
目がゴロゴロする
目が乾いた感じがする
目に不快感がある
目がヒリヒリ痛い
目が赤くなりやすい
目がかゆい
朝、目が開けにくい
光をまぶしく感じやすい
白っぽい目やにが出る
なんとなく見えづらい
ときどきかすんで見える
最近少し視力が低下したようだ
チェック項目が5つ以上当てはまった場合は、ドライアイの疑い があります。このセルフチェックはあくまで目安ですが、一つの参考になるでしょう。なお、上記の症状はドライアイ以外の目の病気(例えば結膜炎や緑内障初期など)の可能性もあります。セルフチェックの結果だけで自己判断せず、気になる場合は眼科で専門の診断を受けるようにしてください。
どのような症状が現れたら受診すべきですか?
ドライアイは市販の人工涙液などで様子を見ることもできますが、以下のような場合は早めに眼科を受診することをおすすめします。
症状が強い場合
症状が長引く場合
日常生活に支障が出ている場合
セルフチェックで複数項目に該当した場合
眼科では涙の量や角膜の状態を調べ、ドライアイの程度やタイプ(涙液減少型か蒸発亢進型かなど)を診断してくれます。症状に応じた点眼治療やケア方法の指導を受けることで、日常生活の不快感を和らげることができます。症状が強ければ迷わず眼科を受診しましょう 。早期に対処することで、重症化や合併症を防ぐことができます。
編集部まとめ
ドライアイは現代では珍しくない身近な目のトラブルであり、加齢や生活習慣などさまざまな要因で起こります。初期症状は「なんとなく目が疲れる」「少し乾くかな?」程度で見逃されがちですが、決して油断できません。放置すれば視力の一時的低下や慢性的な目の痛みにつながり、日常生活の質を下げてしまいます。今回ご紹介したセルフチェックの項目に思い当たる節がある方は、ぜひ一度ご自身の目の状態を眼科で確認してみてください。
栗原 大智 医師
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2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。