「ドライアイ」はどんな「目薬」を選んだらいいの?使用する際の注意点も解説!
公開日:2025/09/09

ドライアイは、目の不快感やかすみ、痛みなど日常生活にさまざまな支障をきたすことがある症状です。市販の目薬で対処される方も多いですが、使用方法を誤るとかえって症状が悪化することもあります。本記事では、ドライアイに対する目薬の使い方や注意点、眼科の受診の目安などについて解説します。

監修医師:
栗原 大智(医師)
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2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。
目次 -INDEX-
ドライアイの基礎知識
ドライアイは病気ですか?
はい、ドライアイは目の病気です。涙の量が不足したり、涙が目の表面にとどまりにくくなることで目の表面が乾きやすくなる状態で、眼球表面を保護する涙の安定性が低下することによって起こる疾患と定義されています。ドライアイ自体が失明につながるような重篤な病気ではないものの、慢性的な目の不快感によって長期間にわたり生活の質を低下させることがあります。日本では2,200万人ものドライアイ患者さんがいるともいわれ、現代病の一つとして増加傾向にあります。現代ではとても身近でありながら、放っておくと見え方に異常をきたすこともあります。
ドライアイの原因を教えてください
ドライアイにはさまざまな原因があります。主な原因として、以下のようなものが挙げられます。
- 加齢
- 女性
- 長時間のパソコンやスマートフォン作業や読書
- エアコンの使用
- 睡眠不足
- コンタクトレンズの使用
- 薬の副作用(抗ヒスタミン薬や降圧利尿剤など)
- マイボーム腺機能低下
- 結膜弛緩(けつまくしかん)
- 全身疾患(シェーグレン症候群や関節リウマチなど)
ドライアイになるとどのような症状が現れますか?
ドライアイの代表的な症状として、目がゴロゴロする、目が乾くといった症状が挙げられます。そのほかにもドライアイではさまざま症状が現れます。
- 目が疲れやすい、まぶたが重く感じる
- 目がヒリヒリとしみる、痛みを感じる
- 目がかゆい
- 物がぼやけて見えるときがある
- 光がまぶしく感じやすい
- 涙が勝手に出てくる
ドライアイを改善する目薬との付き合い方
ドライアイで市販の目薬を使っても問題はありませんか?
市販の人工涙液タイプの目薬は、ドライアイ症状が軽い場合に自宅で手軽に対処できる手段の一つです。ただし、ドライアイ向けに作られた目薬を正しく使用することが大前提で、使い方や選び方を間違えると、かえって症状が悪化する恐れがあります。また、市販の目薬ですぐに改善する軽症のドライアイもありますが、2週間ほど適切に使用しても症状が改善しないこともあります。その場合は、薬剤師に相談して別の点眼薬に変更してみるか、あるいは眼科医の診察を検討しましょう。市販の目薬はあくまで一時的な症状緩和が目的であり、ドライアイの根本原因を治すものではありません。いつまでもよくならない場合や症状が強い場合は、自己判断を続けず眼科を受診することが基本です。
市販のドライアイの目薬の効果を教えてください
ドライアイ向けの市販目薬の多くは、涙のような働きをします。目の表面に涙のような潤いを一時的に補給し、乾燥による不快感やかすみを和らげる効果があります。そのため、人工涙液タイプの目薬を点眼すると、しばらくの間は「目が潤った」「少し楽になった」と感じられるでしょう。しかし、市販目薬の効果持続時間はとても短いため、市販のドライアイ目薬は一時しのぎには有効ですが、涙の分泌を根本的に増やしたり、ドライアイそのものを治す効果はありません。
ドライアイの市販目薬を使いすぎるとどうなりますか?
点眼のしすぎには要注意です。防腐剤が入った目薬を過度に頻回に使用すると、防腐剤の成分が目の表面(角膜や結膜)にダメージを与えたり、涙の成分バランスを乱してしまうことがあります。また、頻繁に点眼しすぎると、せっかく目の表面にあった涙までも洗い流してしまい、結果的に涙が不足して逆に目が乾く原因にもなりえます。
ほかにも市販のドライアイ目薬を使用する際の注意点はありますか?
はい、以下のポイントに気を付けるとよいでしょう。
まず防腐剤無添加の目薬を選ぶことが大切です。
そして正しい点眼方法を守るようにします。目薬を差す前には石けんで手を洗いましょう。上を向いて下まぶたを軽く引き、容器の先が目やまつ毛に触れないように1滴だけ落とします。その後すぐパチパチ瞬きをせず、目をそっと閉じて1~2分程度まぶたの上から押さえると薬液が眼球全体に行き渡ります。1回に1滴で十分です。
コンタクトレンズ使用者は、コンタクトレンズ装着中に使える目薬かどうか、必ず確認しましょう。
目薬の容器の先端は絶対に他人と共有しないでください。また一度開封したボトルタイプの目薬は防腐剤が入っていても日にちが経つほど雑菌繁殖のリスクが高まります。製品にもよりますが、開封後は1ヶ月程度を目安に使い切るのが望ましいです。使用期限切れの古い目薬は使用せず、新しいものに交換しましょう。高温になる場所に放置すると成分が劣化することもあるため、直射日光の当たらない涼しい場所に保管してください。
以上のことを守ることで、より安全に市販のドライアイ目薬を使うことができるようになります。
ドライアイで眼科を受診すべきサインと治療法
ドライアイで眼科を受診した方がよいケースはありますか
ドライアイのような症状があっても、なかなか受診せずに様子を見ている方もいらっしゃると思います。しかし、放っておいても改善しない場合も少なくないため、以下のような場合は眼科受診を検討しましょう。
- 市販の人工涙液を使っても症状が改善しない
- 症状が強い、悪化している
- 高齢でほかの目の病気のリスクがある
- コンタクトレンズを使っているのがつらい
ドライアイで眼科を受診した際の検査内容を教えてください
眼科ではまず問診で症状の様子を詳しく聞かれます。そのうえで、医師はドライアイかどうかを調べるための検査をいくつか行います。いずれの検査も痛みはほとんどなく短時間で終わりますので、リラックスして受けてください。これらの検査結果を総合して、ドライアイかどうか、その重症度や原因を眼科医が判断し、一人ひとりに適した治療方針が立てられます。主な検査は次のとおりです。
シルマー試験(涙の量の検査)
涙の分泌量を測る検査です。
BUT(涙液層破壊時間)検査
涙の質(涙の安定性)を調べる検査です。
フルオレセイン染色検査(角結膜上皮検査)
蛍光色素(フルオレセイン)を点眼した状態でスリットランプ顕微鏡という器械で目の表面を観察します。
眼科ではどのような方法でドライアイを治療しますか?
眼科で行われるドライアイの治療は、大きく分けて点眼治療と涙の排出を防ぐ治療、そして原因への対処になります。眼科での治療を受けることで、市販薬では物足りなかったけど処方薬に変えたら楽になったというケースは多くあります。ドライアイは完治まで短期間で治し切るというより、うまく付き合いながら症状を和らげていく疾患です。眼科ではさまざまなアプローチであなたの目の状態に合った対策を提案してくれます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
点眼薬による治療
ドライアイ治療の基本はまず点眼薬の処方です。市販薬との違いは、医療用の点眼薬にはより高濃度の有効成分が含まれていたり、防腐剤無添加で長期使用に向く製剤があることです。
涙点プラグなど涙の排出を防ぐ治療
分泌される涙の絶対量が少ない場合や、点眼治療だけでは改善が不十分な場合、涙の流出路を塞いで涙を目にとどめる治療が行われます。
原因への対処とセルフケア
ドライアイは生活環境の影響も大きいため、医師から生活上のアドバイスを受けることも治療の一環です。パソコン作業中は意識的に休憩をとりまばたきの回数を増やす、エアコンの風が直接目に当たらないよう工夫するなどです。また、必要に応じてコンタクトレンズをメガネに切り替える、ドライアイが改善するまでレンズの装用時間を減らすといった対応もすすめられるでしょう。こうした日常的なケアと医師による治療を組み合わせることで、ドライアイの症状は次第にコントロールしやすくなっていきます。
編集部まとめ
ドライアイは現代人に増えている目の不調で、慢性的な疲れやかすみで日常生活の質(QOL)が低下してしまうこともあります。市販の目薬は手軽で症状を一時的に和らげることがありますが、目薬だけでドライアイを根治することは難しく、効果も一時的なものです。むしろ使い方を誤ったり、頼りすぎたりすると涙のバランスを崩し症状が悪化する恐れもあります。「ドライアイかな?」と思ったら、まずは正しい方法で目薬や生活改善によるセルフケアを行い、それでもよくならない場合は早めに眼科を受診して適切な治療を受けましょう。
参考文献




