目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「老眼に治療法」はあるの?初期症状や症状を緩和させる治療法も解説!【医師監修】

「老眼に治療法」はあるの?初期症状や症状を緩和させる治療法も解説!【医師監修】

 公開日:2025/09/15
「老眼に治療法」はあるの?初期症状や症状を緩和させる治療法も解説!【医師監修】

40代後半以降になると、多くの方が近くの文字がぼやけて見えにくくなったり、目の疲れを感じたりするようになります。特にスマートフォンやタブレットの長時間使用により、老眼のような症状を自覚する若年者も増えており、老眼対策や治療への関心が高まっています。本記事では老眼の特徴や対処法について詳しく解説します。

栗原 大智

監修医師
栗原 大智(医師)

プロフィールをもっと見る
2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。

老眼の基礎知識

老眼の基礎知識

老眼とはどのような状態ですか?

老眼とは加齢に伴い、水晶体(眼のレンズ)が硬くなってピント調節力が衰え、近くのものにピントが合いにくくなる状態です。若い頃はピント調節する毛様体筋の働きで水晶体の厚さが変化してピントを合わせられますが、年齢とともに水晶体の弾性が失われ硬くなるため、近見が困難になります。この現象は病気ではなく自然な老化現象で、俗に老眼と呼ばれます。

老眼の老眼の初期症状を教えてください

初期には手元の細かい文字が以前よりも読みづらく感じる、文字を目から離して読まないと見えない、といった症状が現れます。例えば、新聞や辞書の小さな文字が見えにくくなったり、照明が暗いと読みにくくなったりします。また、近くから遠くへ目線を移すとピントが合うまで時間がかかる、遠くを見た後に近くを見るときに一瞬ぼやける、といったことも起こります。これらに伴い、目の疲れや肩こり・頭痛を訴える方も多く、眼精疲労の症状として感じられます。

老眼が進行するとどうなりますか?

老眼は加齢にしたがって徐々に進行し、一般に40歳代から自覚が始まり45歳前後で老眼鏡が必要になる方が多いとされています。以後は近くを見るのがますます難しくなり、より度数の強い老眼鏡が必要になります。進行は続きますが、60歳頃までにはほぼ進行しきるため、それ以降はそれ以上の悪化は緩やかになります。老眼を放置すると目の疲れや肩こりがひどくなり、日常生活にも支障が出やすくなるため、早めに対策を取ることが大切です。

老眼の治療法

老眼の治療法

老眼を完治させる治療法はありますか?

残念ながら、老眼は加齢による生理現象なので完全に治す方法はありません。白髪やしわと同じような老化現象であり、根本的に治す治療法は現時点で存在しないとされています。現在できる対策は老眼鏡やコンタクトレンズによる矯正のみで、必要に応じて視力補正を行い生活の質を維持します。

老眼の進行を遅らせる目薬や内服薬はありますか?

老眼の進行を薬で抑える有効な治療薬は現状ありません。欧米ではピロカルピン点眼薬が老眼治療として注目されていますが、日本ではまだ承認されておらず使用できません。内服薬も効果が証明されたものはありません。加齢による水晶体の硬化を薬でもとに戻すことは現実的ではないため、これらは根本的な解決策にはなりません。

老眼の症状を緩和させる治療法を教えてください

症状の緩和には、まず眼科で視力検査を受けて自分に合った老眼鏡や遠近両用眼鏡を適切に作ることが基本です。また、眼精疲労を和らげるために、人工涙液の点眼や温かいタオルで目元を温めるなどのケアが有効です。温かいタオルで目の周りの血行をよくしたり、市販の目薬で眼の筋肉をリラックスさせることで、疲れ目による症状が軽減する可能性があります。40度前後で温めたタオルやホットアイマスクなどを用いて、1回5分間温めるとよいでしょう。これを温罨法といいますが、これは目の疲れだけでなく、ドライアイも改善することがあるためおすすめです。ただし、これらはあくまでも一時的な緩和策であり、老眼自体の進行を止めるものではないことに注意が必要です。

老眼の見えにくさを矯正する方法

老眼の見えにくさを矯正する方法

老眼の見えにくさを矯正する方法を教えてください

最も一般的なのはメガネによる矯正です。近くを見る専用の老眼鏡を使うことで手元の文字がはっきり見えるようになります。また、遠く用と近く用の両方に対応できる遠近両用眼鏡を使う方法や、片眼を遠く用、片眼を近く用に合わせるモノビジョンコンタクトレンズもあります。これらにより老眼による見えづらさを日常生活レベルで十分補えます。さらに、白内障などで水晶体を交換する手術を受ける場合には、近方・中間・遠方の複数の焦点に合う多焦点眼内レンズを用いることで老眼の矯正も同時に可能とされています。

眼内レンズで老眼を矯正することはできますか?

はい、近年の眼内レンズには多焦点(または拡張焦点/EDOF)レンズと呼ばれるタイプがあり、白内障手術時にこれを挿入すると、遠くと近くの両方にピントが合うようになります。多焦点眼内レンズでは光を複数の焦点に振り分け、遠方と近方、あるいは遠方・中間・近方の三点など二つ以上の距離に焦点を合わせられる設計がされています。実際、こうしたレンズを用いた手術後は約8~9割の方が術後にメガネなしで生活できており、近見視力も得られると報告されています。さらに、最近では老眼を改善するIPCL(Implantable Phakic Contact Lens) という、眼内コンタクトレンズが登場しています。この治療により白内障手術をしなくても、手元が見えるようになるとされています。ただし、すべての方に適応するわけではなく、夜間運転時に光をまぶしく感じたり、メガネが必要になったりすることもあるため、眼科医とよく相談して検討する必要があります。

自宅でできる老眼対策の効果

自宅でできる老眼対策の効果

サプリや特定の食べ物は老眼の改善に効果がありますか?

現時点でサプリメントや食品で老眼が直接改善する確かなエビデンスはありません。もちろん、ビタミンA・ビタミンC・ビタミンEやルテイン、アスタキサンチンなど、目によいとされる栄養素を含んだサプリや緑黄色野菜は眼の健康維持に役立ちます。これら栄養素が不足しているのであれば、今の食事に取り入れることをおすすめします。しかし、これら栄養素が加齢により硬くなった水晶体の弾性を回復するものではありません。たしかに、若いうちからバランスよく栄養を摂ることは眼精疲労の軽減には効果がある可能性は否定できませんが、老眼の進行を劇的に遅らせるわけではないことに注意しましょう。

睡眠と老眼の関係を教えてください

良質な睡眠は目の疲労回復に欠かせません。睡眠時間が不足すると毛様体筋の調節力が低下し、近見視力が落ちてしまうことがあります。さらに、睡眠不足があるとドライアイの症状が悪化することがあり、それも眼精疲労の症状を悪化させてしまうことがあります。眼の周りの筋肉や神経をしっかり休ませるためにも、適度な睡眠時間を確保し、寝不足にならないよう心がけることが大切です。

老眼対策のマッサージには効果がありますか?

目の周辺をマッサージしたり、ツボを刺激したりすることは血行を促進して眼精疲労をやわらげる効果が期待できます。特に症状が軽い初期の段階では、こめかみや目の周りのツボ押しで目の疲れが楽になることがあります。ただし、老眼の進行を緩やかにすると誤解されている方もいますが、科学的な証拠は十分ではありません。したがって、マッサージはあくまで疲れ目対策として行い、老眼そのものの改善や根治を期待するものではないことに注意しましょう。

編集部まとめ

編集部まとめ

 老眼は誰にでも起こる自然な目の老化現象で、特別な病気ではありません。加齢によって水晶体の柔軟性が失われるため避けられないものですが、適切に対処すれば日常生活への影響を最小限に抑えられます。まずは眼科でしっかり視力検査を受け、自分に合った老眼鏡やコンタクトレンズを作ることが重要です。また、規則正しい生活や目の休息、眼精疲労ケア(点眼や温罨法、マッサージなど)を心がければ、目の負担を減らして快適に過ごせます。現在は老眼を根本的に治す方法はないものの、早めに対処して適切な矯正具を用いれば、視生活をストレスなく保つことが可能です。必要以上に心配せず、前向きに対策を取り入れてください。

この記事の監修医師